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最弱職「便利屋」が攻略AIで挑む異世界冒険記 ―チート勇者とのAI対決を便利屋スキルで出し抜く―  作者: 便利屋 涼
【生存確率28%】からのサバイバル

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癒やし系眼鏡僧侶現る

「キャーーー!!」 


 ――ぼふんっ!

 

 回避する間もなかった。曲がり角から飛び出してきた女の子とまともに衝突し、俺たちはそのまま石畳の上へと転がった。


 ドタタッ!


 むにっ。


 柔らかく、温かい感触が俺の顔面を包み込む。

 それはまるで、巨大な生マシュマロに顔を埋めたような弾力だった。


「痛っ……あれ? 痛くない?」


 恐る恐る顔を上げると、そこには至近距離で上目使いの、超絶美少女のアップがあった。

 緩くウェーブした亜麻色の髪に、少し垂れ気味の大きな瞳。

 その瞳が、今は驚きと羞恥で潤んでいる。


(おお~……まさか異世界で、出会い頭の衝突プラス、ラッキーハプニングのS級コンボが来るとは)


「ああっ、ごめんなさい! 私、急いでいたもので……!」


 慌てて身を離した彼女は、豊満な胸元を隠すようにしながら深々と頭を下げた。

 その拍子に、ゆったりとした僧侶服の隙間から、目の毒すぎるほどの谷間が覗く。


「あれ……? 眼鏡、眼鏡はどこ……?」


 彼女は視界が定まらないのか、手探りで地面を探し始めた。

 俺の足元に、縁が折れた眼鏡が落ちていた。


「ああ、これ。落ちてたけど、少し壊れちゃったみたいだね。良かったら俺が――」


 俺は腰のベルトからビニールテープを取り出し、応急処置をしてあげようと手を伸ばした。

 だが、その手を遮るように、いかつい鎧を着た付き人らしき男が割り込んできた。


「コラコラ! この方をどなたと心得る。不届き者が、気安く触れるな!」


 男は俺の手から眼鏡とテープをひったくるように奪い取ると、雑な手つきでツルを繋ぎ合わせ、彼女の顔に押し付けた。


「さあさあお嬢様、もう行きましょう。出発の時間はとうに過ぎておりますぞ」


「あ、はい……。本当にごめんなさい、見知らぬお方。出発が迫っているもので、失礼いたします!」


「いっいや、こちらこそ……お気をつけて」


「ほら、邪魔だ。どいたどいた!」


 男は俺を追い払うように手を振り、彼女の手を引いて足早に去っていった。

 雑踏の向こうへ消えていく、あの大きな眼鏡と、豊かな曲線美。

 俺の頬には、まだ微かにさっきの柔らかい感触が残っていた。


(……好き……)


 俺は呆然と立ち尽くし、無意識にスマホを取り出していた。


「ノア、読み取り忘れた。さっきの娘の素性を教えてくれ」


《……涼さん。二つ目の貴重なアドバイスを、そんな個人的な欲求のために使うつもりですか?》


(あれ……? おかしいな。ノアの返答が、いつもと違うぞ?)


「ああ、いいから頼む。気になるんだ」


《……二十二歳。僧侶。ベルクレア大聖堂の所属ですが、もうすぐこの街を離れます。今から追いかけても、もう間に合わないでしょう。詳しいことは、先ほどのシーフ……カインにでも聞けば分かるはずです。それでは、また》


(何その雑なアドバイス……。やっぱり何かおかしい)


(しかし、今は宿を探さなきゃな。ノアの言う通り、アドバイスを温存しておくべきだったか……)


 俺は未練を断ち切るように頭を振り、一軒の宿屋を見つけた。

 入り口の看板には『一泊・金貨一枚』の文字。なかなかの高級宿だ。


 俺はフロントで作業をしている、マネージャーらしき初老の男に声をかけた。


「ロビーの柱時計、壊れてるみたいですね。少しずつ遅れてるでしょう。俺が直しますから、なんとか半額で泊めてくれませんか?」


「おや、お兄さん。若い割には交渉上手だねぇ。ちょうど職人を呼ぼうか困っていたところなんだ。直せたら銀貨五枚で泊めてあげるよ」


「ありがとうございます! 早速、修理作業に入ります!」


 俺は手慣れた手つきで柱時計の蓋を開け、内部の歯車に詰まった埃を取り除き、わずかな歪みを調整していく。

 その作業中、マネージャーが周囲を気にしながらこっそりと耳打ちしてきた。


「ここだけの話、最近の商業バザーの影響で観光客が激増しててね。インバウンド需要ってやつで、うちも値上げはしたが、ぼったくり宿が急増してるんだ。特にお兄さんみたいな方は気をつけなよ」


(この世界にも、ちゃんと優しい人はいるんだな……)


「直りました!」


「ほう、どれどれ……。うん、正確な音だ。助かったよ、ありがとね。これ、二階の奥の部屋の鍵だ。ゆっくり休んでいきな」


「こちらこそ、ありがとうございます」


 案内された部屋は、想像通り簡素なものだった。

 清潔なベッドと机があるだけで、当然ながらテレビはない。


 一階の食堂で、香草の効いた温かいシチューで腹を満たし、部屋のベッドに横になる。


(……そういえば、さっきのシチューの肉、妙に弾力があったけど何の肉だったんだろう)


 前日の野原で寝るのと比べれば、ベッドは天国のような柔らかさだった。


「明日はノアにアドバイスを貰って、本格的な冒険の準備だな……」


(昼間のあの子……また、どこかで会えないかな)


 異世界の夜は更けていく。俺は心地よい疲れに身を任せ、眠りについた。

 

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