便利屋一味の装備強化
翌朝、目を覚ますとサスケが戻ってきていた。
サスケからの報告によると、ルークはどうやら『アイスランド』と呼ばれる極寒の地へ向かったらしい。新しい召喚獣を探しに行ったというが、少し心配だ。
俺はリリアの装備を完成させるべく、鍛冶屋のドルクの所へ向かおうと身支度を整えた。
すると、サスケの帰還を確認したエリスとレイナが、揃って神妙な顔つきで話しかけてきた。
「昨日、寝る前にレイナちゃんと色々話し合ったんですけど……これからも涼さんたちと一緒に旅を続けていきたいと考えてます」
「だからね、これから装備がパワーアップするリリアちゃんみたいに、ウチらも強敵と戦えるように修行して強くなってきたいの!」
二人は真っ直ぐな瞳でそう告げた。
サスケに乗せてもらい、前の大陸に一度戻って故郷で修行を積みたいという。
二人の決意は固く、俺に邪魔をするような発言はできなかった。
サスケは一度この大陸まで渡ってきているので、帰りの航路もバッチリ覚えているらしい。エリスの回復魔法とレイナの攻撃魔法が揃っていれば、今回は必ず安全に送り届けられると自信を見せつけた。
俺は今朝の朝食用に揚げた『ホーンラビットの唐揚げ』を弁当代わりに渡し、大空へと飛び立つ三人を見送った。
別れを告げた俺とリリア、そしてカインの三人は、リリアの装備品を完成させるため、ドルクの鍛冶屋を訪れていた。
ドルクの話によると、七武神の黒騎士たちとはどうやらすれ違いだったらしい。奴らもアダマンタイトを持ち込み、新武器を完成させて帰っていったという。
俺たちも負けじと苦労して手に入れたアダマンタイトの原石を見せると、ドルクは職人の目を輝かせ、早速リリアの武器に取り掛かってくれることになった。
「おい涼、こっちへ来い」
ドルクに呼ばれ、店の奥の部屋へと入る。
そこに飾られていたのは――なんと、フルオーダメイドで製作された新品の『ミスリルアーマー』だった!
「完成してたのか!」
俺は歓喜のあまりドルクに抱き着き、その無骨な頭にチュッとキスをした。
「ばっ、馬鹿モノ! 気色悪いことすんじゃねえ!」
ドルクが顔を真っ赤にして怒鳴るが、俺のテンションは最高潮だ。
軽くて魔法耐性も高いミスリルアーマーは、俺の生存率を劇的に上げてくれる事だろう。
「……ふん、お前の分はオマケだ。本命はこっちだぞ」
気を取り直したドルクが、凄まじい熱気を放つ炉の前へと俺たちを促した。
まずはリリアの重装甲だ。激戦でひしゃげた黒銀の鋼鎧を炉で完全に溶かし、アダマンタイトの原石を投入する。
ドルクは融合した新たな合金の塊を、凄まじい気迫で叩き上げていく。ただの修復ではない。一から構造を見直した完全な新造だった。
「そして、こいつがメインディッシュだ」
ひとしきり堪能して満足したのか、ドルクが残りのアダマンタイトの原石を炉に放り込む。
神話級金属がドロドロに溶け出したところへ、リリアの愛剣『ドラゴン・スレイヤー』を差し込んだ。
カンッ、カンッ、カンッ!
火花が散るたびに、大剣の刀身が黒みを帯びた銀色――アダマンタイト特有の鈍い輝きへと変貌していく。
刃の欠けは完全に修復され、刀身全体がより鋭く、かつ分厚く再構築された。神話級の金属と完全に融合した瞬間だった。
圧倒的な密度を持った『アダマンタイトアーマー』と『ドラゴンスレイヤー改』が完成した。
「持ってみろ、嬢ちゃん」
「うん……ッ!」
リリアが真新しいドラゴンスレイヤー改を手に取る。
以前よりも明らかに重量が増しているはずなのに、リリアの手に吸い付くように馴染み、その顔には驚きと歓喜が浮かんでいた。
「凄い……重さは増しているのに、軽く感じる。それに、この装甲……」
リリアは真新しいアダマンタイトアーマーに身を包み、軽くステップを踏む。鈍色の輝きを放つ大剣を構えたその姿は、まさに『鉄壁の重戦士』の名にふさわしい威圧感を放っていた。
「これで、どんな攻撃も弾き返し、どんな装甲も叩き斬れる。……お前さんの相棒にふさわしい、最高の出来だぜ」
ドルクが満足げに笑う。
俺たちは新たな決意を胸に頷き合ったが、その時、カインがふと口を開いた。
「……ドルクさん。俺の『村正』も、黒刀にしてほしい」
カインがぽつりと言い出す。その視線は俺の新しい装備に向けられていた。きっと、憧れの兄さんに、少しでも近づきたいのだろうと悟った。
「でも、ドルクさんはお金を受け取らないし……」
カインが自重気味に目を伏せる。
すると、ドルクは豪快に笑い飛ばした。
「がははっ! お前達は気に入った! 特にその女はな。特別に無償で鍛えてやろう」
「駄目だ。これ以上爺さんに甘えられない。対価はちゃんと払うよ」
俺は即座に断り、マジックポーチからとっておきのアイテムを取り出してカウンターに置いた。
俺が取り出したのは、以前ガーディアンから手に入れた【深淵の魔核】だった。
「……ほう! こいつは凄い! これだけあれば、かなりの海鳴りシリーズ装備が作れるぞ!」
ドルクは目をひん剥いて驚き、職人としての歓喜を爆発させた。
「兄貴……やっぱりただのケチじゃなくて、こういう時の為にちゃんと取っておいてくれたんだな……」
カインは俺の差し出した魔核を見て泣き出した。
「爺さん、これでカインの村正を頼む」
「流石はリーダーの涼だな。これで十分じゃ」
ドルクはニヤリと笑ってカインの刀を受け取ると、再び炉に向かった。
「これまた凄まじい妖刀のようじゃな」
そこからの作業は圧巻だった。単なる鍛冶の域を超えた恐ろしいほどの錬金術を駆使し、瞬く間に鋼の刀身が鍛え上げられ、深淵のように漆黒の輝きを放つ『黒刀』へと仕上げきった。
カインは新しく生まれ変わった黒刀を握りしめ、目を輝かせている。
今の俺たち三人の装備と戦力は、以前とは比べ物にならないほど凶悪で強固なものへと仕上がっていた。
俺たちはドルクに深い感謝を述べ、熱気に包まれた洞窟の鍛冶屋を後にした。
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