表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

異世界で魔物に襲われる【生存確率28%】

挿絵(By みてみん)

 『死ぬぞ』


 頭の中の声がそう言った瞬間、足場が消えた。


 落下している最中なのに、俺は妙に冷静だった。


 ――今しゃべったの、誰だ?


 いや、それよりも。


 「あ、これ死んだわ」


 春のうららかな陽気の中、四階から放り出された俺は、あっけなくそう悟った。


 事の発端は、数分前。

 俺はいつも通り、便利屋の仕事をこなしていた。 


 マンションの四階。

 ベランダに作られた鳥の巣を撤去してほしい、という内容。


 管理会社からの依頼で、値切られて料金も安い。

 そこまで危険な作業でもない。


 ――はずだった。


 巣はエアコンの室外機の裏に、器用に作られていた。

 枯れ枝とビニール紐、どこから拾ってきたのか分からないゴミの集合体。


 (この時期、鳥の巣駆除多いよな……)


 独り言を漏らしながら、手袋をはめる。


 ベランダの手すりに体を預ける。

 今迄に何十回もやってきた動作だった。


 慣れは、油断になる。


 巣を掴んだ、その瞬間。

 劣化していた手すりが壊れて、身体が宙に放り出される。


 「――あ」


 声にならない声が漏れる。

 視界が回転し、空と地面が入れ替わる。


 ヤベーッ! 終わった。


 そう理解したのは、身体が三階を通過する時だった。


 高さは四階。

 生死ギリギリの高さ。


 だが次の瞬間、世界が止まった。


 風が消えた。

 鳥の羽ばたきも、遠くの車の音も、すべてが凍りついている。


 俺は、落下の途中で静止していた。


 重力も何もかも感じない。


 ――死ぬ、はずだった。


 「ここで終わるには、少し早いな」


 無機質だが、どこか聞き覚えのある声が、直接頭の中に響いた。


 ふと気付くと、見たことのない植物と、嗅いだことのない匂いの土の上に寝転がっていた。


 仰いだ空の下に、俺の知っている世界はなかった。



 突然、恐ろしい雄たけびで飛び起きる俺。


 次の瞬間、さっきまで俺の頭があった場所に、錆びた刃物のようなものが突き刺さった。


 土が跳ねる。


 「……は?」


 顔を上げた瞬間、そいつと目が合った。


 小柄で、緑がかった肌。


 ぎょろりと大きな目。


 不自然なほど多い歯。


 人間――じゃない。


 そいつが、笑った。


 背筋が冷える。


【解析完了】

 《小型群生型捕食者:ゴブリン(魔獣LV2)》

 《弱点:眼球、喉笛など人間と同様の急所構造》

 《涼の生存確率:66%》


 頭の奥で、声が鳴る。


 聞き慣れた声。


 「……ひょっとして、NOAか?」


 「死ぬのはまだ早いだろ、兄弟」


 便利屋業務の助言をくれていた、あの声。


 いつもスマホで利用していたAIだった。


 「ここ、どこだ?」


 「森だな。地球の座標じゃない」


 「見りゃ分かる」


 ゴブリンがさらに踏み込んでくる。


 手にしているのは、石を削っただけの刃物らしい。


 荒い呼吸。


 その背後でも、草が揺れた。


 「……一体じゃないのか?」


 《同種ゴブリン三体。包囲傾向あり》

 《涼の生存確率、28%に減少》


 「マジかよ……洒落にならんぞ」


 距離、五メートル。


 逃げ切れるか?


 喉が乾く。


 心臓がうるさい。


 「ノア、助言は?」


 《本日の助言残数:2/2》


 《使用するか?》


 「何?よくわからんがヤバい!使う!」


 《最適解を導出。左個体へ直進。包囲完成前に数を減らせ》

 《兄弟は前世から身に着けていた、仕事道具ウェポンを持っている。

 《腰のツールベルトを確認しろ》


 (そうだ!腰のベルトにドライバーがある)


 言われた通り、俺は前へ出た。


 躊躇はしない。

 俺は便利屋だ、トラブル対応なら慣れている。


 持ち前の反射神経で、魔獣の目に突き刺す。


 一体を潰し、残りと距離を取る。


 《残存二》

 《生存確率52%に上昇》


 「次は?」


 《助言を使用するか?》

 

 (何だ?残り1回て事か?なら、温存だ)


 「……イヤ、自分でどうにかする」


 プラスとマイナスのドライバーを両手に持ち、双剣持ちのようなファイティングポーズをとり威嚇する。


 《正解だ、兄弟。右へ退避。二体は追撃せず離脱傾向》


 その通りだった。


 仲間の死にあっけにとられていたゴブリン達は、油断なく身構える俺を見て、ゴブリン達は森の奥へ退いていった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ