11-26 【大型輸送機メガブースター完成!】リフター、フライヤー、メガブースターの最強ラインナップ展開へ
11-26 【大型輸送機メガブースター完成!】リフター、フライヤー、メガブースターの最強ラインナップ展開へ
「わはは、変形するのかい。これは面白いものを作ったものだね」
豪快に笑い声を響かせているのは、渡辺譲司――気さくに「ナベさん」と呼ばれる男である。
まさかクローディアたちが、飛行ユニットの枠を超えて人型へと変形する機体を提出してくるとは予想していなかったのだろう。その表情には、純粋な驚きと面白がり色が混じっていた。
「ナベさんなら、この浪漫を分かってくれると思っていたよ。ゆりは頑なに否定するからさぁ」
ナベさんの好意的な反応を心地よく受け止め、クローディア(マリ)は得意げに相好を崩す。
「当たり前でしょう! 依頼されたのは、リフターやフライヤーよりも大型の輸送をこなせる機体の開発よ。なぜそこに変形機構が加わるのかしら。実用的な必要性があるとは思えないわ。まして、最初の主題である『安全で確実な物資輸送』さえも、変形機構のせいで逆にやりにくくなっているじゃない」
いまだに、開発者としての合理性を無視した変形機構に対する拒否反応を示し続けるゆりだった。
「そこはそれ、変形しなければ通常のメガブースターとして何の問題もなく運用できるんだから心配いらないさ」
クローディアは涼しい顔でそう言い放つと、自信満々に親指を立ててみせる。
「はぁ……。まあ、いいわ。ナベさん、話がすっかり脱線してしまい申し訳ありません。そういう訳で、メガブースターは用途に合わせて2種類をご用意しております」
ゆりはクローディアのマイペースな態度にやれやれと深く溜息をつき、脱線しかけていた会議の軌道修正を図るべく頭を切り替えた。
「なるほどねぇ。それで、変形する方としない方の2種類ということか。……もっとも、実際の現場で需要があるのは、やっぱり変形しない通常モデルの方だろうね」
渡辺譲司が指摘した懸念は、購入時のイニシャルコストだけにはとどまらなかった。
例えるなら、それは「一般車」と「フォーミュラカー」ほどの決定的な隔たりがある。
一般的な乗用車は、日頃の定期的な点検さえ怠らなければ、幾年もの間タフに走り続けられるよう設計されている。
対してフォーミュラカーはどうだろう。一戦一戦で限界を超えたパフォーマンスを引き出すため、レースが終了するたびに専門スタッフによる大掛かりなオーバーホールが必須となる。
今回のケースに当てはめるなら、変形しないタイプはメンテナンスの手間も最小限に抑えられ、コストパフォーマンスも抜群だ。
しかし、変形機構を盛り込むとなれば話は一変する。可動部位や制御用の部品点数が劇的に増え、複雑怪奇な機構を擁するがゆえに、故障リスクも比例して跳ね上がる。結果として、維持にかかるメンテナンスの手間も費用も天文学的な額に膨れ上がってしまうのだ。
そもそも、シビアな現場でわざわざ人型に変形して戦う必要性など皆無に等しい。一般市場での需要など、最初から見込めるはずもなかった。
仮に買い手がつくとしたら、それはよっぽどの道楽者か、せいぜいメーカーのショールームで客寄せのオブジェとして飾られるのが関の山だろう。
「まぁまぁ、おふたりさん。毎度毎度、素晴らしい成果をありがとう。これなら『輸送』を最大の売り文句にした魅力的な商品を市場へ投入できる。
リフター、フライヤー、そして今回のメガブースター……うん、用途と目的に応じて強力なラインナップが揃うし、これなら十分にヒット商品になるね」
そう言ってニコニコと目を細めながら、渡辺譲司は満足げに大きく頷いた。
「それじゃ、ささやかだけどお菓子の詰め合わせをそっちに送っておいたから、二人で甘いものでも食べてくれ」
気さくな言葉を残し、オンラインのモニターは暗転してウェブ会議は無事に幕を閉じた。
「やれやれ……なんだかんだ言って、結構長いことこの飛行ユニットの計画に携わってきた気がするね」
クローディアは大きく背伸びをすると、ローテーブルの置かれたソファにドカッと深く腰を据えた。
「まぁ、何はともあれ無事に完成して本当に良かったわ。流石に、勝手に変形する仕様にまで改造されていると知ったときはどうなることかと思ったけど……」
ゆりもトゲのある言葉とは裏腹に、どこかホッとしたような苦笑いを浮かべながら、クローディアの対面に腰を下ろす。
そこに、絶妙なタイミングを見計らったかのように、遥が二人分のコーヒーを乗せたトレイを手に歩み寄ってきた。
「マリ、ゆり。温かいコーヒーを淹れました。どうぞ」
「おっ、気が利くね、遥」
「いただくわね、ありがとう」
ふたりはカップを受け取り、遥が丁寧に淹れてくれたコーヒーの温もりを手のひらで感じながら、ゆっくりと口に含む。
激しい議論の続いた開発の日々を乗り越えたあとに訪れた、静かで穏やかな三人だけの時間。
しじまに包まれた休憩スペースには、芳醇で香ばしいコーヒーの香りが優しく漂っていた。
おまけ
変形する方としない方の値段はどれくらいなのかと差額はどんなものだろうか?
作中の描写や、ナベさんの「一般車とフォーミュラカー」の比喩をベースに、変形するタイプとしないタイプの値段やその差額について整理・考察してみました。
1. 各モデルの価格感の目安
変形しないタイプ(通常モデル)
位置づけ: 実用性とコストパフォーマンスを最優先した「一般車」クラス。
価格感: 組織や現場が量産・運用しやすい、適正かつ現実的な価格設定。定期的な点検や消耗品の交換だけで長く使い回せるため、ランニングコストも低く抑えられます。
変形するタイプ(変形機構搭載モデル)
位置づけ: 最先端の複雑な機構を詰め込んだ、特注・少数生産の「フォーミュラカー」クラス。
価格感: 通常モデルの「数倍から数十倍」の値段になるとナベさんが指摘しています。
2. 価格差がこれほどまでに開く理由(差額の内訳)
価格差が文字通り桁違い(数倍から数十倍)になる背景には、単にパーツが増える以上の理由があります。
① 部品点数と機構の爆発的な増加
人型への変形・変形保持を行うための関節、アクチュエータ、ロック機構、制御用コンピューターなどが追加されます。これにより、通常のメガブースターとは比較にならないほど設計やパーツの複雑さが増します。
② メンテナンス(オーバーホール)にかかる手間とコスト
フォーミュラカーの例え通り、複雑な機構を動かすほど故障リスクや摩耗箇所が跳ね上がります。運用時にも大掛かりな整備や専門スタッフによるチェックが毎回必須となるため、購入時のイニシャルコストだけでなく、維持費の差額も年々膨れ上がっていく構造になっています。
③ ニッチな需要による生産コストの跳ね上がり
「現場でわざわざ人型になって戦う必要性がない」ため一般市場での需要はほぼ見込めず、事実上の特注品やマニア向け、あるいはショールームの展示用オブジェとしての色彩が強くなります。大量生産によるコストダウンが利かないため、どうしても本体価格が跳ね上がってしまうのです。




