飛竜の鬼嫁
俺達は飛竜のメスと対峙した。オスの方は悶絶している。
「アカン、あいつ速いでぇえええ。『金玉瞬間移動』の座標が指定できへん」
どうやら、飛び回る飛竜♀に、金玉大爆発を喰らわせるための瞬間移動ができないみたいだ。
「亭主の金玉で攻撃するなんて……鬼畜」
「うっさいわ。ほならストック使おか?」
急下降して爪を振って来る飛竜の攻撃をかわしながら、セィソはストックしているタマタマを出した。
「危ないっ」
ガキンっ
俺はショベルで、セィソに襲い掛かる飛竜の爪を受ける。
「スコップって盾にもなるんやなぁ」
「ショベルな、スコップじゃなくて。そして、ショベルはこういう使い方もできるんだぞ。みてろっ『頭皮激光円匙反射ッ』」
ジュジュっ
俺は頭皮の光を、スコップの凹面で反射させ、飛竜の翼を焼く。
「自分でもスコップ、ゆうてるやん」
「……それ、突っ込まない」
飛竜は、翼が痛むのか、俺達から距離をとり高度をあげた。
「ほな、ウチもいったるわ。うぉりゃぁあああああ」
セィソは、力いっぱい、ストックしていたキンタマを投げた。
「ナイスキャッチ」
投げられたキンタマは上空の飛竜まで届かず、戻ってきた。
「あかんやん。届かへんやん」
俺は悶絶している飛竜♂に近づきながら……
「まぁいいんじゃないか、上空にいるんだし、コッチを片付ければ」
「うわぁアンタ勇者やろ。やること、えっぐ」
すると、亭主思いの飛竜♀が急降下してくる。
「よし、かかってこい」
「ちょっ、ダイジョブなん?」
「こんなんでも勇者だからな。『頭皮発脂』」
俺は頭皮からヌメヌメの脂を大量に発生させた。
つるん♪
攻撃してきた飛竜♀の爪は滑ってしまい、ヌメヌメ脂まみれの頭皮と飛竜♀の腹が激突する。
腹に盛大な頭突きと脂を喰らった、飛竜♀がゲボォっと地面に転がった。
「よし『頭皮発汗』これでよし」
俺は頭皮から大量の汗を出した。飛竜♀は、まだ転がっている。
「知ってる?脂って、燃えるんだよ『頭皮激光円匙反射ッ』」
俺は、脂まみれになった飛竜♀に集光で火をつけた。
グォオオオオオオオオオ
火に強い飛竜といえども、全身を炎に包まれては助かりようがない。
「おのれ……ニンゲン。我ら竜族を葬るとは。せめてワテの亡骸を亭主と供に……」
そんなメッセージが俺の頭の中に伝わった後、飛竜♀は力尽きた。
「あちゃー、飛竜丸焼きにしたら、素材取られへんやん。まぁええか。肉ウマイし。素材は♂のほうで確保するわな」
飛竜♀さん、俺のツレがすいません。一応、穴掘って素材の残りと一緒に埋めておきます。
情のカケラもなく飛竜♂の方は解体をして、高く売れそうな部位だけ持ち帰る。飛竜♂タマタマは『金玉乾燥』で乾燥さえたのだが、けっこうデカイ。でもかなりの威力がありそうだ。少し荷物になっても持ち運ぶべきだろう。
そうして、俺達は飛竜♀の焼肉を堪能する。持ち運ぶのに限界はあるが、今日、明日の食料にさせてもらおう。
「うまいわぁ~竜肉。これ、めっちゃ精つくんやでぇええ。今夜も頑張ってなぁ」
「そ、そうか、頑張るよ」
コレ……若い子に、搾り取られるオジサンの図だろうな。
「ところで、あんたのハゲ頭やけど、いろいろ出せるんやなぁ」
「そうだなぁ、基本的にハゲ頭から出るのって、『光』『脂』『汗』なんだよ」
「……3大ハゲ出力やん。って、下半身のカメも同じなんか?」
「いや、カメ頭の方は、『光』『水or湯』『アルコール』『油』『樹脂』なんだけどねぇ」
「なんでそうなったんか、ようわからんなぁ、一応は光の勇者なんやろけど」
昔は『空気』も出せたのだが、そのスキルは聖女に譲渡したんだよな。彼女を治療したスキルと交換だったけどさ。
そうして、食事を終えた俺達は宿泊予定の洞窟まで足を進めた。
ノーダメージ&ソロでワイバーン♀を倒せるくらいに、このスコップ勇者は強いんですけどね?
でも他の女性陣が強すぎて、霞んでる感じです。
そして、3大ハゲ出力『光』『脂』『汗』、そこに『毛』はないのです。