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9,謁見と式典

 ~・~・~・~・~


 「……ここは?」

 みうを背にかばった体制で尋ねます。

 「陛下と私のような一部の者しか出入りできない特別な場所です。陛下はこの上です」


 預言者さんは隣に目線を移し、てのひらを指し示しています。その上には椅子の肘置きが見えます。

 あの上に陛下が……私も直接会ったことはありません。ましてやこの状況です、どれだけ用心しても足りないでしょう。

 

 私は正面に目を向けます。そこには大きな魔法球が壁にはめ込まれていて、光を放っています。

 「この魔法球は何ですか?」

 「闘技場を移すと同時にあなた方へと映像を送っていたものです。逆にあなたを移したこともあったでしょう?その時は会場に映像を映していたのですよ」

 「ということは、ここは闘技場の上部、ということですね」

 知りたかった答えが得られました。


 「ご明察です。……観察はこの辺りにしてもらって、そろそろ陛下にご挨拶を」

 「……そうですね。お願いします」


 

 私達は陛下の椅子の前で頭を下げる。

 「陛下、連れてまいりました」

 そう言って預言者さんは壁際に下がります。

 

 「うむ、二人ともおもてを上げよ。……まずは巫女習得おめでとう」

 まずは私に形式ばった言葉を投げます。


 「そしてお主、巫女の身代わりの役目を生きて勤め上げたのだ。次も励むように」

 「はい、もったいないお言葉です」

 この言葉、みうの感情の色が消えているのが分かります。


 ちょっと待って、聞いてた話と違う。

 「陛下、預言者殿からこの宮仕えの少女の処遇を考えていただけると聞きここに参った次第です」

 「ふむ、してそなたの希望は?」

 

 ここで言わないでどうするの私!

 「私はこの子を、みうを連れていきたいと考えています」

 

 「そのものが役に立つのか?ここでならまた身代わりとして使えるのだか」


 また身代わり、ですって?絶対にさせない、させるものですか。

 「…………どうか聞き届けてはもらえませんか」

 みうの身に着けた力のことは話せない。この人たちに何をされるか想像もできませんので。


 「ふむ……。もうじきこの城の近くの遺跡に魔が取り憑く。それを祓えたなら、そのものを解放しよう」

 それがレンさんの言っていたダンジョン、ですか。

 「陛下、言ってしまってよかったのですか?」

 「構わぬ、じきにわかることだ。お主とレンならそう時間もかかるまい」


 ん?ちょっと待って?

 「それも予言ですか?今行われている試合もレンさんが勝つことが既に分かっていると、そういうことですか?」

 私はつい問うてしまいます。


 「そういうことだ。試合の観戦はあの者の監視に他ならない。あの者には我々にもわからぬことが多くてな」

 確かにわからないことだらけですね。今のところはかっこいい魔王(仮)ですけど。


 「……思い至ってはない、ようだな巫女よ。ここまで話したのだ、明かしてもよいだろう」

 何なんですか?本当に魔王を呼び寄せたとかですか?


 

 「あの者はこの私が魔術を使って呼んだのだよ。星からな」

 「どういうことですか?呼んだ?星?」

 何を言って――

 

 ――ドンッ

 


 この部屋に何かがぶつかったような衝撃が走ります。

 「魔法球が」 預言者さんが声を上げます。

 確かに魔法球の外側に何か大きなものがはりついています。


 「全くとんでもない奴よ。巫女よ、続きはまたいずれだ。話をしているうちに試合が終わってしまったのでな」

 陛下の言葉により、はりついたのがあの大男だとわかりました。

 会場の歓声も聞こえてきます。

 

 レンさんが勝ったんですね!


 ~・~・~・~・~


 陛下たちと4人で闘技場付近に[移動]し、私たちはレンさんのもとに急いで向かいます。

 「レンさん!ご無事ですか?」


 「ああ、問題ない。ひなもみうも無事で何より」

 「こちらは大丈夫です。ん?ひな、って呼びました?」

 「ここで怪しい動きをしている者はもういないと思うんでな。いいだろう」

 「……レンさんは騎士団を疑っていたんですね。私気づいていませんでした」

 「まあ、ちょっとな。それより」

 私との会話を切り上げ、後ろからやってきた陛下にレンさんが訪ねます。

 

 「あいつはどうしたんだ?」

 「心配ない、魔術拘束できるものに向かわせた。色々聞きださなければならないのでな」

 陛下が答えます。本当に大丈夫なのでしょうか。

 

 「それよりも。皆が見ておるのだ、急ぎ式典を行おう」

 「……了解、まかせるぞ」

 何か考えた後、適当に返事をするレンさん。相手は陛下ですよ。


 ~・~・~・~・~


 式典の後、私たちは案内された部屋で待機しています。

 なんでも呪具の使用の影響か、遺跡に魔が集いだしており、じきに取り憑くのだという。

 

 私たちの任はすぐにはじまる、ということになりそうです。本来ならお城に近いのですぐに騎士団が先遣隊を派遣するのが通常のようですが、ただいま騎士団は団長不在かつほぼ壊滅状態になっているので仕方がないのですが。

 

 私とみうが魔法球で見ていたところより後のことは、レンさんによると「団長たちと魔法師長の4人を取り込んだ大男は俺の手によって華麗に飛ばされた」とのこと。簡単に言ってますね、ちょっとピンチに見えたのは油断させるための演技、てこと?


 「私すっかり騙されましたよレンさん。さすがは魔王ですね」

 みうが言います。イメージは魔王固定のようです。

 「おう、魔王かどうかは知らないけどな」なんて軽口をたたきあっています。

 仲良きです。


 そんな時です。部屋がノックされ、あわただしく兵が入ってくる。

 「失礼します。尋問中の他国の大男が逃走しました。捕獲の協力をお願いします」

 え、逃げられたんですか?


 「はぁ……で、どの辺にいる?」とあきれながらも対処に動くレンさん。やさしい。

 「城門を出た、との報告です。私達一般兵では相手にならず。出来れば殺さずにとらえてほしい、とのことです」


 「また無茶を言う。次に呪具を使われたらこちらが責任はとれんぞ。……ひな行こうか、初陣というやつだ」

 レンさんノリノリですね。全く負ける気がしていないようです。


 「みうはここにいて。行きましょうレンさん!」

視点がみうなのでレン様の戦闘描写は申し訳ないです。

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