10,夢の続き
レンさんの[移動]で城門前に飛びます。
目の前の林には特別変な感じは――
「緊張しすぎだ。よく見ろ、あのあたりに嫌な感じがしないか?」
聞き取られないようにでしょうが、耳元で言うのはダメです!余計に緊張します。
「……む。私にもわかりました。でどうしますか?」
「まずは下準備で、っと背中に[痕跡]を残しておく」
背中の服の部分があたたかいです。
「これは一体なんですか?」
「万が一のための保険だ。巫女の力を使う準備をしておいてくれ。では行くぞ」
彼が歩き出す。私は後ろに続きます。
あれ、この感じどこかで見たような。
「おい、大男。いるんだろう?待ち伏せだろうがもう一度やられたいようだな」
「本当にいちいち態度がでかいやつだな。こんなやつにコケにされたんだ、騎士団の奴らの心情もわかるってもんだな」
「その話はもう終わったことだろう、今更情でもわいたのか?自分で黒い魔力に変えておいて」
私の見られなかったところでそんなことがあったんですね。それにしても挑発してますね。
「ははっ、消された後もこれじゃあ浮かばれないなぁ騎士団さんは」
大男さんの声に紛れてレンさんが指示をくれます。「歌え」
私が歌う。私と目の前にいる青年に白く輝く光が現れる。
「後は周囲の警戒だけでいい。自分を守ることを優先させれくれ」
今度は大男さんに聞こえるように大きくそう言いながら彼が駆け出します。
「不意打ちのつもりか?なめるなよガキが!さっさとお前をヤってその女をいただく!」
レンさんの言葉がこの言葉とかぶりながら。
大男が取り出した球体のものを飲み込み、アクセサリーを握りつぶします。
大男の周りに赤い光が現れた後、その光を食べていく半透明のガイコツのようなものが現れ、大男に重なります。
あれ、この状況は、あのときの。
「お前、どうなっても知らんぞ」
「構わん、もとより盗賊の身、巫女を手に入れこの国での活動許可をもらうことが叶わなくなったのだ。せめて巫女を我が国で売り払ってくれる」
セリフも同じです。嫌です、やっぱり気持ち悪いです、でもそんなに怖くありません。
さすがにたじろぎはしますが。
大男の拳で彼が後ろに下がります。
両腕を前にして防御していますが、そこに私の背中のと同じようなものがあるように思います。
「闘技場ではこれは使えなかったのでな。これが俺様の本来の戦い方だ。かかされた恥の分、その美形をぐしゃぐしゃにしてやる」
「お前、売り払うだとか顔ぐしゃぐしゃだとか趣味悪いぞ。だが、闘技場で制限をかけていたのはそっちだけじゃないぞ」
やっぱり最悪です。さっさとやっちゃってくださいレンさん!
彼が下がった位置から足を振りかぶった体制をとります。
なるほどそういうことだったんですね!
空をけり始めたと思った瞬間には拳についた[痕跡]を頼りに大男さんを蹴り飛ばすために[移動]したってことですね。
「さすがですレンさん!そのままやっちゃえ!」私が口に出します。今回は心を込めて。
「仲間の気配もない。もう一度歌ってくれ、次で決める」
「はい!」心なしかあの時よりも大きく返事しているように感じます。
私が歌うと私たちに再度白い光が現れる。光をまとった彼が大男の近くに飛んで今度は城壁に向かって蹴り飛ばす。
「すごいです、レンさん!」気持ちを込めて名前を呼びます。
あの時見たのはここでの出来事だったんですね。納得です。
「とりあえずあいつを城の兵士に引き渡す。いくぞ」
私のもとに駆け寄り手を伸ばす彼。私はその手に触れて、再度城門前に[移動]します。
~・~・~・~・~
「首と顎を蹴り飛ばしたんだか、生きてはいるはずだ。次は逃がすなよ」
引き渡しの兵にそう告げ、私たちはみうのところに戻ろうとしたときです。
ズゥン……
という音と共に嫌な感じが伝わってきます。
この城の近くの遺跡に魔が取り憑く、それが今ということでしょうね。
そこを祓えたなら、みうを解放できるかもしれない!
「そう焦るな。一度戻るぞ」
手を握っていたからか焦りが伝わっていたようです。恥ずかしい。。。
「ひな様、どこか攻撃をもらってはいませんか?精神攻撃とかは大丈夫ですか?」
みうが駆け寄ってきます。しっぽがついていたらすごく振ってそうな勢いです。
「大丈夫ですよ、私は2度歌っただけ、ですから。それよりも先ほどの気配は感じましたか?」
「はい、気味の悪い感じ、でした。あの呪具を使っていた人以上のものを感じます」
やっぱりきちんと認識できている。早く何とかしないと。
「そこを解放できれば、みうの隷属を解消してもらえるかもしれないのです。行きましょうレンさん」
「まあ待て。かも、でなく絶対だと確約させるぞ。あいつらに」
勇み足の私をおさめるだけでなく、きっちり交渉してからいく、と。さすがです。
「構わん。明日までに遺跡を解放できれば隷属から解放させよう。……そうだな、巫女の部屋の片付けもある。その後この者は明後日まで休暇ということにしよう。そこで決めればよい」
陛下が部屋に入ってきます。聞いていたんですね、会話。
「はい、感謝いたします陛下」
みうが頭を下げる。私も遅れて下げます。レンさんは下げません。堂々としていますね、ちょっと偉そうですけど。
「ではな。よろしく頼む」
扉が閉まると「ふぅ」と息をつくレンさん。
「みうにも一応つけておく。背中を向けてくれ」
「……何なんですか?――わっ、あたたかいです」
「[痕跡]だ。これで気配がたどれるならそこへ[移動]ができる。先ほど実験済みだ」
私の読み、当たっていたようです。
「これも図書館ですか?」
「そうだな。移動の杖がどのように起動しているのか分かったのでその応用だな」
こちらも当たりです!「こんなことまで調べていたんですね」とつい声に出してしまいます。
「そうだ、偉いだろう。さあ準備するぞ」
あれ?もしかしてほめられると嬉しそう?案外わかりやすい人?なのかも。
ってああ!陛下の「レンさんが星から来た」っていう話がまだ途中でした。次に会ったら聞かないと。
この章はもう少し続きます




