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異世界を俺なりに楽しむ  作者: パーティーチキンカレー
エルフの村と辺境都市ファシア
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閑話 領主と執事


 一樹が領主邸から去ったあと、書斎にて領主ディブロスと執事ダンハは今後の話し合いをしていた。


「厄介事の種は芽吹かず去ったか。…いや、置いていったが正解か?」


「フォッフォッフォ。一樹様は厄介事にはなりませんよ。寧ろ、厄介事を集めてしまう側かと思われます。」


 ダンハは本人が厄介事の中心であることは否定したが、結局厄介らしい。ということは必然的に辺境都市ファシア全体が巻き込まれる、ということだ。ディブロスは頭を抱える。


「はぁ…一難去ってまた一難ということか。」


「その通りかと。しかし、先の一難を解決されたこともまた事実。無下にもできますまい。旦那様、一樹様に渡した報酬のスキルブックはあれで宜しかったのですか?」


 ダンハはにこやかな顔をしている。だが、ディブロスとは長い付き合い口調の端々に棘があり怒っていることがわかった。


「爺よ…そんなに怒るな。私も意外だったのだよ。交渉とは低い位置から高く、高い位置から低くもっていき、互いに妥当なラインで合意するのがセオリーだ。まさか初めに提示したものに合意するとは思わなかったのだよ。」


 ディブロスはダンハに言いながら肩を落とす。

 それを見てダンハは再度苦情を述べようとする。


「しかしーー」


「だが、合意したことは事実。そこをいちいち説明し、交渉を学ばす程の関係ではない。それに小さな子供でもないだろうしな。」


 それを遮って、ディブロスは反論した。さすがにダンハもこれ以上強くでれない。


「ダンハよ。大変だろうが、然り気無く注意はしてやれ。一樹殿は商売にも手を出すつもりだろう。あれでは歴然の商人達のいいカモだ。さすがにただ食われていく様子を見ているだけというのは出来ない。一樹殿の持つスキルと知恵は、商人を肥え太らせるためではなく、ここファシアを、いや国全体に発展させるために使って欲しいものだ。」


 ダンハは静かに頷き肯定する。


 話は変わり、どことなく重い空気が書斎に漂った。


「さて次だ。一樹殿が持っていた盗賊共の遺留品だが、裏にいる奴らの証拠はあったか?」


「はい。遺留品の中に貴族の名前入りの計画書、その名を示す家紋入りのハンカチと短刀がありました。おそらく、ご子息を殺害した後、逃走するとき門兵に見せ、安全に通過するために与えられたのでしょう。貴族の関係者が急いでいると言えば止められませんから、短刀ならば余計に。」


 ディブロスは報告に聞き怒りに震えた。

 家紋付きの物とは、家紋が示す貴族との関係性を表す物である。


 主に、ハンカチ<マント<短刀


 今回、短刀があったということは本気でファシア家を潰そうと考えたやつがいたということだ。

 ディブロスが怒るのも無理はない。家族に被害がでる可能性が終わっていないのだから。


「どこの者だ……」


 冷静に、それでいて迅速に動くため耳を傾ける。


「短刀はヘルメルト子爵、ハンカチはシャルナート男爵とキド男爵です。ヨークシャー侯爵との繋がりがあり、先日ウィル坊っちゃんと接触したのもこの家の者です。」


 それを聞いたディブロスは、メモしようと持っていた羽ペンをへし折った。


「ブタ侯爵め!!薬師ギルドからの献上金だけでは飽きたらず、ダンジョンすら欲するか!どれだけ醜く肥えれば気がすむのだ!!」


 ディブロスはへし折ったペンの欠片をドアに向かって投げた。大きく肩が上下する。


「ふぅ…ウィルは向こう側か?」


「いいえ。スパイとして入り込もうとしていたようです。奴らが裏で何かをやらかしていたことは分かっていたのですが、証拠が見つからず、その事で相談を受けておりました。そして、何かを実行するのはもう少し後かと思い、遠出する依頼を受けておりましたら今回の事件が。申し訳ありません。」


 ダンハは深々と頭を下げた。


「頭を上げろ。爺。今回のことは執事筆頭ではなく、冒険者としてだろ。リゲルが亡くなったのは悲しいが、その代わりに大きな縁を得た。それを上手く使わなければならない。」


 いまだに頭を上げないダンハに、ディブロスは叱咤する。


「父として嘆くのは暫く後だ。まずは貴族として、領主として徹底的にこの都市の膿を潰す!徹底的にだ!!その為にも爺には執事筆頭に戻ってもらうぞ。下げた頭を上げられぬのなら行動で示せ!守りの時間は終わりだ!攻めるぞ!付いてこれるよな?」


 ディブロスは、ニヤリと笑う。

 覚悟を決めたダンハは頭を上げた。そこには好好爺の顔付きは無くなっていた。子供が見たら泣いてしまいそうな恐ろしい顔だ。


「かしこまりました。現時点をもって執事筆頭に復帰させていただきます。旦那様、わざわざ付いていかずとも追い抜かしても宜しいでしょうか?」


 ダンハは軽い挑発をかける。所詮言葉遊びだ。少し空気が弛緩する。

 が、すぐに空気が引き締まり動き始める。


「かまわん。一分一秒でも早くファシアの平和を取り戻す。裏も表もだ。」


「かしこまりました。ランドはいるか!!」


 ダンハは大声をあげて人を呼ぶ。

 するとすぐに扉がノックされ、許可すると、執事服を着た一人の男が入ってきた。


「お呼びでしょうか?ご領主様。ダンハ様。」


 お辞儀をし、入ってきた男にダンハは声をかける。


「旦那様の名により、只今をもって執事筆頭に復帰します。貴方の執事筆頭代行の任を解きます。只今より【影】となり任務に戻りなさい。」


「かしこまりました。」


 ダンハに新たな任を渡されたランドは部屋を出ようとする。しかし、そこにダンハは言う。


「ランドよ、たかが執事、所詮代行だったと甘えるなよ?貴様が筆頭であるときに領が荒れ、名も知らぬ一般人に助けられたのだ。旦那様が許されても次はないぞ。」


 ダンハの後ろに炎が見える。それほどの言葉と殺気を放っていた。

 ランドは一礼しその場から消えた。


「部下に厳しすぎないか?」


 さっきまでの重い空気は霧散しディブロスは言う。しかし、ダンハは首を横に振る。


「ランドも責任を感じておりました。本来ならば首を切られても可笑しく有りませんが、お優しい旦那様のことです、なにも罰を与えなかったのでは?」


「ん?あぁ。それを考える時間もなかったからな。ダンジョンとリゲルの死、家宝の消失、エルフ村の救援、問題が多すぎた。討伐隊などを考えていたら次は問題が解決された。頭が真っ白で未だに夢だと思っているよ。」


 冗談を言う余裕はできたようだ。


「ランドもきっと同じでしょう。私が事件が起きる可能性が低かったので報告しませんでした。其のせいで突然事件が起き、対処出来る前に終ってしまった。仕えていた方が亡くなった実感も薄い。ならば、ケツを叩いてがむしゃらに、なんでもいいから走らせる。そうすれば、悩む時間もなく進み続けるでしょう。」


「確かにな。男なんてそんなもんだよな。」


「そうですね……。」


 穏やかな空気が流れる。

 が、また空気を引き締めた。


「本題に戻るぞ。先ほど出た3家はどのくらいで潰せる?」


「そうですね……証拠の洗いだしに3日、館の占領捕縛に1日、事情聴取(拷問)に1日で完了します。その後、家として継続できるなら刑罰の問題や引き続きなどが山積みとなります。」


 ディブロスは頭を抱える。先ほどの膿がどうのといったことを少し後悔している。


「めんどくさいことが多すぎる……とりあえず、5日でなんとかなるなら、子爵の館を一樹に渡せるな。善良であれば執事とメイドもそのまま付ければ良かろう。」


「それでよろしいかと。一樹殿の性格を考えると、依頼期間ギリギリの7日目に戻ってくるかと思われます。」


「ギリギリか……私兵と影を使ってかまわん。都市の隅々まで徹底して洗い流せ!」


「かしこまりました。」


 こうして、一樹の知らないところで話は動いていった。

 





 今年最後の投稿になります。読んで頂きありがとうございました。

 ストックがないので新年すぐには投稿できませんが、頑張りますので応援宜しくお願いします。

 それでは、良いお年を。

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