今日はもう寝よ。宿屋さがすぞ
「のぼせちまった」
「あ~、気持ち悪い!」
「頭がクラクラする」
長湯でのぼせた俺達はヨロヨロと危なっかしい足取りで、風呂屋を後にする。
で、それからどうしたかと言うと。
「これからどうする?」
「今日はもう寝よう」
「じゃあ宿屋だな」
「それがいい」
「それに、日も沈んでしまいそうだし。もうだな外出はやめた方が良さそうだ」
そんな訳で俺達は宿屋を探す。
◇
「あった」
「けどボロいな」
宿屋は労せずして発見。
宿屋の見てくれは街のイメージと同じ十九世紀ごろの中国風。
なので、ちょっとボロい感じ。
けれども野宿するよりは数割マシ。
だから俺達は宿屋に入る。
「いらっしゃい。何名ですか?」
入って早々に、宿屋の主人が愛想よく出迎えてくれる。
「三人です」
「部屋は相部屋にしますか? それとも別々ですか?」
「相部屋で」
「部屋のランクはどうしますか?」
「一番安い部屋で」
佳君が勝手に部屋を決めてるが。
正直、俺とマサは頭が疲れてろくに考える事ができないので、佳君に任せる。
「では、宿代百マルク頂きます」
「はい、百マルク」
「確かに。では、部屋にご案内致します」
代金を払うと宿屋の主人は俺達を部屋に案内してくれた。
で、部屋に入るが。
「狭いな!」
部屋は畳三畳程しかない狭い部屋。
シングルベッドと勉強机が一つずつあるだけで、飾りっけも皆無。
早々にマサが文句を言うのも頷ける。
「まあ、最低ランクの部屋だからなぁ」
「佳君、なんでもっといい部屋にしなかったの?」
「文句を言わないの。いつこの世界から帰れるか分からないんだよ?」
「確かに……」
佳君の言った事は事間違いなく正論だった。
「だからお金は節約しないと」
「そうだな」
「わあった。がまんする」
俺とマサは佳君に従った。
◇
「しかし今日は疲れたなぁ」
時間は過ぎ、夜も更けてどこからともなく山寺の鐘がゴーンゴーンと聞こえてくる。
「早く寝ようぜ!」
「それが良さそうだ」
今やるべき事が特になかったので、マサの言ったように寝る事にした。
んで、俺達は寝ようとするが。
「狭いいいいいいいい!!」
シングルベッドに三人で寝るのは無理があった。
なお、配置は俺が右で左がマサ、佳君が真ん中となっている。
「キツキツやな!」
マサが愚痴るように、ベッドはキツキツ。
これでは満員電車みたいなもんだ。
また、この事も問題だったが、別の問題もあった。
それは……。
「うーん」
「おわっ!?」
「うーん」
「ギャッ!?」
佳君が寝返りを打つたびに左右で寝る俺とマサがベッドから落とされる事だ……。
「なんで寝返りを打つんだ!」
三人共一旦起き上がると、落っことされたマサが怒り出す。
「だって普段は布団で寝てるから、ベッドに慣れてないんだもん」
「あー、それで……」
修学旅行なんかに行くと、必ず一人か二人は『枕が変わると寝れない』とか『布団だと落ち着いて寝れん!』なんて言う奴がいるが。どうやら佳君もその類いだったようだな。
しかしマサの怒りは収まらない。
佳君にブツブツとイヤミ臭い文句を垂れる。
「だいたい、なんでそんなキ〇肉マンみたいなでかい図体にしたんだ!」
俺とマサはアバターの身長設定を百五十センチ級と、本来の身長より低く設定していたが。
佳君はどういうつもりか身長を百八十七センチと、本来の身長よりもかなり大きく設定していた。
これは本来の身長より三十センチ近く大きい数値だ。
「でかい女なんてどこが良いんだ! 神経疑うぜ」
「なんだと!」
マサの否定的な言葉に佳君はカチンときた。
「大きい女性の何が悪い! 最高じゃないか!」
「ケッ、馬鹿らしい。だいたい現実の女なんて、男より小さいじゃねぇか」
「だからこそ大きな女性は貴重である!」
事実、女性の平均身長は男性の平均身長を下回っている。
「てか、なんででかい女が好きなんだよ?」
「それは新たなる命を生み出すことのできる方が、大きいのが都合がいいからだ」
「そういう理由で好きだったの!?」
「効率的過ぎだぞ!!」
好みの異性を効率デ決める佳君の考えは良くも悪くも独特。
但し、個人的には理解に苦しむが。
「だいたい佳君はだな!」
「それ言ったらマサ君だって!」
その後も佳君とマサは揉めに揉めた。
俺は呆れて黙っていたが、その間も二人は互いに罵り合い。三時間あまり口論が絶えなかった。
結局俺達が寝たのは、深夜になってからだった……。




