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第5章『父娘、救出・後編』幕間~迫る悪意~

第5章はこれにて終了!



加筆修正後……誤字に気付いたので修正しました。(汗)

「ヴォルフもラピスも…そんな眼で見ないでほしいなぁ…言っておくけど、コレ…《内氣活性法》っていう口伝の奥義で、爺さんが知り合いと長年かけて突き詰めて完成させたっていう逸話だからね?

制御がとても難しくて危険だから誰にも教えないように言われてるんだ。だからダメだよ、ヴォルフ?」



ガシャァァン!



父様に続いて私の足枷(付けられていたのを気づきませんでした…)を壊したラース様はそう言いながら鉄格子を拳打で軽く破壊すると私と父様を手招きして歩き出しました。



「…昔、師に言われた事がある。

人を越えた領域(・・)に至るには中身(・・)をまず鍛え上げろ、と……」


「はぁ!?その人、無茶苦茶な事を言ってるなぁ…

いいかい?僕の爺さんは妖精族(エルフ)半魔族(ハーフブラッド)混血(ハーフ)なんだけど、そのせいなのか《魔力回路(パス)》や《気脈(ライン)》とかがそれぞれの種族よりも頑丈だったみたいでね?

前の戦争の時、追い込まれた時にダメもとで試して偶然(たまたま)窮地を脱したんだって。

んで、その後は知り合いとひたすら訓練して完全制御ができた…と。だから、僕と妹に教えるのも凄く迷ったんだってさ。

まぁ、僕だって手解きを受けてから3年でようやくここまでの形になってきたんだから…どのみち今教えても使い物にはならないんだよ」


「…そうか、残念だ」



すぐに私達はラース様の後ろに続き、地下牢より脱出する為に歩みを進めましたが…


「ラース様のお祖父様……となると《八神将》の御一人である《魔拳》ガルム様ですか………。

確かにあの方なら化け物じみた芸当でも納得が……」



「ラピス、ちょっと静かに…。ヴォルフ…この匂い……」



「あぁ…血の匂いだな。《黒騎士》の奴、まさか……」



周囲を警戒しつつ地下より脱した私達は扉を抜けた瞬間に思わず立ち止まり辺りを見回すと、そこには飛び散る鮮血と……



「酷い……どうやったらここまで…」

「違う…これは《黒騎士(ヤツ)》の仕業ではないな。兵士や騎士が()ごとバラバラに引きちぎられている…

単純だが圧倒的な力業だ。

よほど怨みがある者か理性の欠片もない化け物か、のどちらかによる凶行だな」


「僕らも地下牢に放り込まれていなかったら同じようになってただろうね…真意はどうあれ《黒騎士》に礼を言うべきかな?」



警戒する父様と軽口を開くラース様は周囲に意識を向け、気配を調べているようですが…扉を抜けてすぐの血の匂いに死体の…あれ?



「父様…どうやら私達が捕らえられてから思ったよりも時間は過ぎてないようです」


「……死体の腐敗具合か?」


「あ、ホントだ。ラピス、よく気がついたね?

だとすれば…尚更(なおさら)周りに注意しないといけないな」



父様達の警戒が私の一言を聞いてから更に強まり、不意を打たれぬよう戦闘体勢を整え始めました。

無論、私もです。




「ええ、先程の《黒騎士》とは別の敵が城内に…いえ、まだ近くにいるということです」



私の言葉にラース様と父様が静かに頷き合う



「それも厄介(・・)なヤツが、な…コチラは未だ《(プラーナ)封じの結界》の影響下にあるから、俺は大した戦力にはならん。せめて武器があれば…」


「ヴォルフ、兵や騎士たちの剣を使うと良い。壊さないよう加減して使えば大丈夫だろ?」



ラース様が父様に絶命した騎士達の傍らに落ちている剣を二本拾い上げて投げ渡し……二本?



「どうせ一本は投擲か予備で使うだろうから二本持っておきなよ」

「確かにな…並の魔物相手でも身体強化と戦技無しでどこまでやれるかわからんしな……俺はサポートに徹するとしよう」



ブン!



「………」

「………」



ブオン!ブオン!



「……ま、まぁ僕も多少は戦えるくらいだから今回はラピスが主役になるかな?」

(どの口で言うんだろ?

並の魔物なら身体強化しなくても一刀両断しちゃうでしょ、キミは)



「先程は《黒騎士》に真っ先に倒されてしまいましたからね…。

名誉挽回の機会として頑張ります」

(久々に父様達と共闘、頑張らなきゃ!)


「うむ。だが、無理はするな」

「はい父様!…【扉よ開け・我が《力》と《契約の証》を此処に】!」



詠唱を終えると同時に刹那の光が瞬くと私の手には使いなれた《(ロッド)》が納まり、傍らには頭1つ分くらいの水球が私自身の左右に1つずつゆらゆらと浮いていた。






[ガルディア城内・???]



「…《水聖天》のラピス、か。

あの歳で《聖天(アークマスター)》の階位(クラス)とは驚きだが…。

神器(アーティファクト)》持ち、という情報は無かった。

…実力が既に最高クラスの魔術師でありながら《神器保持者(アーティファクト・ホルダー)》でもあるのに今まで隠していた…が、今の状況でその奥の手を出した判断は正しい。

ヴォルフとラース、二人を守れるのはお前だけだからな……。

チッ…反応が動いた、か……マーベリック達の気配に気付いたか《化物(アルセム)》め」




[ガルディア城内・地下牢近くの通路]



「これは……父様、ラース様!凄まじい邪気が近づいてきます!」

「ッ、ヴォルフ!」

「わかってる。ラピス、先手を仕掛けたらすぐに


「破ッ!二人ともお先!」


…ラースがぶち抜いた壁の穴を通って城門まで退くぞ!」



ラース様に続いて父様も壁穴をくぐり抜けて走り出す



「はい!」



杖を掲げて先端の宝石に宿る刻印術式を解放、私の魔力を増幅する簡易連結魔方陣(チェインブースター)を起動させる



「【魔力(マナ)よ・一滴(ひとしずく)を生み出し・塊と成り・溢るる流水を放て】」


魔力を用いて無より水を産み出す生活魔法の基礎【(ウォーター)】を発動、続けて攻撃魔法【水弾(アクアバレット)】に派生。

(大きさと威力は術者に比例する為、私の【水弾(アクアバレット)】は一発が人間の頭部より大きくなってしまう)

そして【水弾(アクアバレット)】を【水流弾(ウェーブバレット)】に上位派生させる


更に…極めつけとして


「《術式停止(ストップ)》!《水流弾(ターゲット)》を《自動複製(オートコピー)》、設定限度は最大の一万回で連続起動(スタート)!」



次々と大きめの水塊が生まれるなか、これまた次々と塊が水流を激しく生み出していくのは普通なら恐怖を感じさせるのは間違いない。

例えるなら子供ぐらいの背丈の相手に至近距離で一般的な浴槽目一杯まで入れた水を逐一浴びせるようなイメージです…痛そうですね。


ただ、今回はまだ敵が距離的に遠いけど通路(ここ)は幸い真っ直ぐな道。なので、片っ端から水を勢いよく生み出して時間を稼いでいく。

本当は近付いてからの方が効果的に距離を稼げるが、今回は先手を打ち、時間を稼ぎつつ私達の姿を視認される前に一先ず《結界》の範囲外に出るのが優先なので、これで良しとしましょう。



「さ、私も逃げるとしましょうか!」

(まずは城門まで撤退、広い所でなら遠慮なく大技が使えますからね!)



壁穴を颯爽と潜ると次の穴へ向かっていきます。

二人に早く追い付かねばならないので、ちょっとずるをしましょう!



「【魔力(マナ)よ集いて・疾風の衣と転じよ・汝は我が翼なり】!【飛翔術式展開(フライ)】!」



魔力の風に包まれ、一気に加速するとあっという間に低空飛行状態になり、次々と穴を潜り抜けその場を後にする



……



…………



………………



「………」




スタッ、とラピスが去った後に着地する音が響く



「……見事。ただ、惜しむべくは」



「オォォォォォォッッ!!」



ラピスが生み出した激流の波に動きを阻害されつつも、確実に前に進み続ける人為(ひとな)らざる《化物》は遠ざかる獲物(ラピスたち)に向かっていたが目の前に現れた最も近い獲物(ユーリ・レプリカ)に敵意を向け直していた……。



「相手が人外である事を知っていれば城門で迎撃など考えず、脱出を迷わず選んだかも…というところかな?」




「オォォォォォアァァァッッ!!!

シネッ!ジャマスルヤツハスベテシネェェェッッ!」



「……ふぅ、能力が制限された《分身体(わたし)》がどこまで戦えるかわからないけど…」



迫る悪意に対し強い意志を金色の瞳に宿した銀髪の少女は怯む姿を欠片も見せず、(プラーナ)が使えない結界の影響力であっても戦う姿勢を見せる。




「……仮初めの身なれど、《契約者(コントラクター)》として命じます。

我が《身体(うつわ)》に刻まれし《鋼》よ!神をも打ち据える力の片鱗を示せ!」



少女(ユーリ)の身体に浮かび上がる古代語の紋様、そして周りの空間が軋み始めるとゆっくりと現れ始めるは短剣・長剣・斧・槍・斧槍・刀・籠手・弓・双剣など九種の武器がそれぞれ合図を待つように少女の周囲に揺らめいていく



「《神威解放》・《九天華月(ナインソード・ワルツ)》……行くぞ《化物》!あと少しの時間、稼がせてもらおうか!」


「シネッ!シネェ!コノクニハ!ワタシノモノダァァァァ!!!」


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