外伝・第二話~ヴィーチェ=エルトリンデ編『偽りの《守護者》①』~
お待たせしました。
外伝・第二話、ヴィーチェ編であります。
今回は会話はありませんが、次の布石と理解していただければ幸いです。
妾はヴィーチェ=エルトリンデ。
数ある有翼種族の中でも、平和を愛し争いを好まない穏健派とも中立派とも呼ばれる『トゥール族』の一人じゃ。
一族の特徴としては多数が平均以下の戦闘能力を有するが稀に突出した能力の持ち主が現れる場合がある為、他の有翼種族と比べれば総合戦力は下から数えた方が早い。
つまりは『弱い』側…という事である。
更に言うならば、種族の傾向的に魔力の使い手…『魔術師』系統が多く、気の使い手『戦士』系統は魔術師100人に対して1人産まれるかどうかだ。
…つまりは大器晩成・器用貧乏・努力家・天才肌といった言葉が使われやすい人間達と違い『才能』そのものが発現しにくく『技能』や《上位存在者》による『恩恵』の修得や獲得も確率は低い。
まぁその分…我等は人族より長命な為、鍛練や修行に費やす時間はたっぷりあるわけじゃが。
妾達の族長は我等に比べて短命ではあるが才能豊富な人族との関わりをきっかけに長命であるがゆえに閉鎖的である有翼種族達に、人族が持つ努力の可能性を示す為にまずはトゥール族に学ばせるべくある人族の村との期間限定と持ちかけて見事、交渉を成功させた。
そして、人族と共存をする可能性を探るため。
その信頼の証に族長代理として実の娘であるミューレを代表に、その護衛として種族最強たる戦士に与えられる称号《守護者》の先代たるアズマール=リッケルト。
そしてその伴侶にして種族最強の魔術の使い手に与えられる称号《白い翼の魔女》の先代たるエリス=リッケルト。
……意味がわかるかの?
つまりは数ある有翼種族の中でも『弱い』部類のトゥール族には有翼種族全体の中でも魔力と気に関して《最強の二者》が揃っていたのである。
そして、当代の族長…つまりミューレの母は実の娘の身を護る為に一族最強の二人をそのまま護衛に就かせたのである。
他にも一族の中でも数少ない魔術師達も同様に護衛にまわしていた。
魔術師として既に才を開かせていた当時の妾も歳が近かったのもありミューレの友人兼護衛として一緒に人族の村へと赴いていた。
当時のウルリカには、よく恨み言を言われた事があったが今となっては良き思い出じゃ……あ、卵をぶつけられた時はマジで焼いてやろうかと思ったのぅ。
まぁそれはさておいて…………人族との共存も順調だったが、それも…あの事件が起こるまでの話じゃった。
…先代の《守護者》アズマール=リッケルト率いるトゥール族の戦闘部隊は…その数の半分以上を過去の事件による襲撃によって行われた一方的な殺戮で命を奪われたが妾は決して無駄死にではないと思っておる。
あの惨劇での生存者は僅か3名。
族長の娘であるミューレ=トゥール。
先代《白い翼の魔女》のエリス=リッケルト。
3人目は…魔術師としての道を歩みだしたばかりのひよっこ…ヴィーチェ=エルトリンデ。
……まぁ、妾じゃな。
ミューレとエリス様が護られるのは理解できるが何故、妾が生き残ってしまったのか?事件の後はよく塞ぎ混んだものじゃ……
じゃが……そんな妾をミューレとウルリカは励ましてくれた。
族長とエリス様は知る限りの魔術の知識を御教授下さり、時折やってくる旅人からは「今時の魔術師は詠唱時間も自分で稼げなきゃ超一流には届かないぞ」の一言から体術の師として無理矢理弟子入りし、両立できるようひたすら修行に励み続けた。
……才能が無い、と言われた時は無詠唱の火球を同時に十七発叩き込んだら、土下座されたのも良き思い出じゃ。
魔術も武術も両立させてアズマール様の分もウルリカとミューレを護る!
それが生き残った妾が出来る唯一の贖罪なのじゃから……
そんな決意を抱きつつ研鑽を積んだ妾は……
ある日、族長より各有翼種族の長達による会合に赴く族長とエリス様の護衛の一人として着いていくことになった。
それこそが妾にとって運命の分岐点とも言うべき場所とも知らずに……




