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外伝・第一話~ミューレ=トゥール編『賢者との出会い①』~

本編の外伝(エクストラストーリー)として、執筆しました第1弾ミューレ編です。

本当は第4話終了してから投稿する予定でしたが、いかんせん…執筆が納得いかず長引いてしまいました(汗)

結果として第5話開始直後と、なってしまいました。ややこしくて申し訳ありません。


今後は各話の合間に1~2話ずつ書いていきたいと思ってますので、宜しくお願い致します!


ミューレ=トゥール…トゥール族を含む数ある有翼種族(つばさあるもの)の中でも、たった一人しか存在しない『漆黒』の翼を生やす少女。

心優しく、戦いよりも料理や洗濯など家事を好む傾向にあり周囲も幼少より見てきたミューレを好ましく思い次期族長候補として扱っている。


……そんなミューレだが、幼少の頃…少数の同族(つばさあるもの)と共に当時友好的だった、ある人族の村に住んでいた時期があった……村人に快く受け入れられたトゥール族の面々は人族に対し魔術を用いて村に恩恵を与え、時には魔物から人々を守り共存への道を歩もうとしていた。

そして村人は収穫した食料や昔ながらの知識の提供をするなどして互いを助け合う日々を過ごしていた……。

そんな穏やかな生活は、もうすぐ三年目を迎えようとしたある日の夜……突然、同族達(つばさあるもの)が村人達に襲われるという不可解な出来事が起こり安息の終わりを迎えた……。



襲撃された晩、いつも通り既に就寝していたトゥール族は突然の出来事(しゅうげき)に為す術無く、次々と命を奪われていき……族長の娘として護衛に付いていた同族達(つばさあるもの)も次々と殺され…一人…また一人と倒れていった。

ミューレ自身も慌ただしい状況のなか、誰かに手を引かれ家を抜け出し逃げていた。

そして、気が付けば村外れの崖まで追い詰められたミューレの側に残っていたのは後に《守護者(ガーディアン)》となる親友(ウルリカ)の両親ともう一人の少女。

ミューレと歳が近い同族の中でも魔術の才を既に開花させていたヴィーチェ=エルトリンデの三名がミューレに残された護衛だった。


やがてウルリカの父親が妻や子供達(ミューレとヴィーチェ)を庇うように前に立ち、村人に大声で何事か叫ぶが返ってきたのは矢の雨と投擲された無数の(くわ)や手斧だった…。


魔術による障壁を展開しようとする父親だが一瞬早く、その身体を雷火(・・)の一撃が貫いていくのをミューレは見逃さなかった……。


「……おじ…さん……?」

(今の……村の人達が集まっている場所とは()う方向から……?)



そして次の瞬間…絶命間際にウルリカの父親は特異技能である《神兵(エインヘリアル)》を発動させて、僅かな(いのち)の篝火を他者(つまとこどもたち)を護る…その一念に費やし、降り注ぐ全ての攻撃を己の身体(・・)全てを盾として使()い…家族を護りきると…そのまま力尽きていった。



ミューレの記憶に微かに残っているのは幾つかの断片的な欠片(かけら)


一族屈指の男が血を流し倒れたのを見たヴィーチェは大声で叫び、妻は夫の最期を無駄にしない為に二人の子供を逃がす事を最優先として無事に成功するか解らない転送魔術を行使する覚悟を決めて詠唱を始める…。



家族(つま)を護る為、家族(いちぞく)を護る為に(いのち)を散らせた同族(ゆうしゃ)の行為をその瞳に焼き付けたミューレは……

沸き上がる激情(いかりとかなしみ)に呑まれ、聴こえてくる内側(もうひとり)の声と言葉を交わし始める……




(どうして……?どうしてなの…!)


(…『どうして』?…何が解らないの?)


静かに響く凛とした声は若い女性を思わせ


(みんな…いなくなっちゃった…死んじゃった……大事な人達みんな…ウルちゃんのお父さんも…死んじゃった…)



(……生まれた頃から一緒で…今まで近くに居た人達が居なくなるのは…悲しいね、辛いよね…。

それに、アズマール=リッケルト…《守護者(ガーディアン)》である彼は自らに課せられた役目とは関係無く、己の(ウルリカ)(ミューレ)を分け隔てなく可愛がっていたね……君にとっても父親のような存在だった……)


何故(・・)かずっと前から見ていたかのような物言いではあるが、ミューレには深く気にする余裕は無かった。


(うん……。私ね?前に“お父さん”って、思わず呼んじゃった時があるの……でも…凄く喜んでくれたよ…?みんな…みんな、喜んでくれた……なのに、“お父さん”…死んじゃった…ミュー達…何も出来なかったよ……)


(…………)



(ねぇ……お姉さん?)


(…なぁに?)



(ミュー達……何かしたのかな?)

(…っ!)



(何か……村のみんなを怒らせるような事、しちゃったのかなぁ……?だからミュー達は……だから……)


(……いいや、それは違う。君達は何もしていない。それだけは疑ってはいけないよ?

君達、トゥール族は何も恨まれる事はしていない。その事だけは信じてあげなきゃ。

……それに関しては他の誰でもない、この()が保証するよ)



心の底から響き渡る『声』は少しずつミューレの心を落ち着かせていく…

ただ…このままではウルリカの母とヴィーチェ、自分を含めた三人は殺されるのではないかと頭は冷静な判断をし始めていた…。


(ミューレ…君はどうしたい?救いの手を差し伸べるには、既に私は出遅れてしまった……だけど…私は、今更だけども…君を、君達を助けたいと思う。)

(…?)



(どうか私に、君の『願い』を叶えさせてはくれないかな?)


(……『願い』?)



(ああ、生憎と死者を蘇生させるにはいかないが…そうだね。例えば、あの村人(・・)達を皆殺しにするのも出来るよ?復讐したいのなら手伝う、ということだね…どうする?)


(ダメ……)

(……ん?)



(ダメだよ)

(ん?ダメとは?)



(ふくしゅーは…ふのれんさ?を産み出すって……“お父さん”が言ってた…から。だから…ダメなの)



目の前にいたらキョトン、という言葉が似合う間の長さが静寂をもたらすがやがて女性の声は何かに納得するかのように唸る


(なるほど……彼女(リュミエール)が見出だした一人なだけはあるね。《資格》は十分、うん…合格だ)

(……しかく?)



(…心配は要らないよミューレ。君達三人は私が助けると決めた。そして、あの村人達も殺さない……それで良いかな?)

(……どうやって?)



(ふふ……私は『夜より暗い闇が(そら)を覆う世界』から来た『王たる賢者』……)


(………………)


(数千の魔術を修め、術書に記し…星の扉を…)


(…よくわかんない)



(…………)

(…………)



(……………そっか…少し、難しかったかなぁ?)

(ごめんなさい…)



(いやいや…気にしないで?大丈夫、お姉さん大丈夫だから、ね?)



(……うん)

(……えっと、つまりね?お姉さんは)



(…わたし、ミューレ。ミューレ=エヴァンス=トゥール…お姉さんは?)


(…私はメルキュール。《夜天(よぞらをすべし)の王》メルキュール=ファティマ、だよ…宜しくね…いずれ結ぶ未来の《契約者(コントラクター)》様?)

ミューレのミドルネーム“エヴァンス”については、人物紹介の脱字では無いのでご安心してください。

故意に外してあります!


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