第5章『父娘、救出・後編』第1話~暗躍する者~
〔???〕
「貴様!これはどういうことだ!?話が違うではないか!!」
とある一室…灯りを最小限にしている為か室内は薄暗く目の前の相手の顔すらうっすらと見える程度の中、しわがれた声の持ち主がやや距離を空けた先にいる相手に怒鳴り声をあげていた。
「……今さら何を言っている?俺は最初に伝えた筈だ。『この国が欲しいなら俺がその為の手段と力をくれてやる』とな」
対して、漆黒の騎士鎧に身を包んだ男は冷静に相手を見据えて淡々と言葉を紡ぐ
「既に計画は始まっている。それに貴様が邪魔だと言うから《剛剣王》に《水聖天》、《戦鬼》…王国四強の内の三人を片付けてやっただろう?」
「ぐっ……それは……」
(この男は一体、何者なんだ…あのマーベリック父娘を抑えるだけでも一軍以上の戦力が必要だと言うのに…加えて個人戦力では我が国で剣聖に次ぐ実力者のリカルドまで倒すなど……人間業とは思えん。)
「それにガルディア王を気にしているのなら…四~五日ぐらいで崩御するだろうから何の心配も要らんぞ」
「なっ…貴様、陛下に何を…!?」
黒騎士の言葉に男は一瞬、言葉を失うも直ぐに事も無げに告げた黒騎士に詰め寄る
「……まぁ、実を言うと…ここまで来れば貴様も用済みなのだがな……最後に一役演じて貰うとしようか?……【果てなき夢幻・刻むは楔・縛るは魂…」
「っ……!?ま、魔術だと!?」
(こいつ…剣でマーベリックとリカルドを降す実力があるのに、更に魔術まで使えるのか!?)
詠唱を始めると同時に禍々しい魔力が黒騎士から浮かび上がり、更に足元に浮かぶ魔法陣が徐々に広がりやがて室内を埋め尽くしてしまう
「…夜よりも深き闇よ・闇よりも暗き海となり・覆いし彼の者の・意志を喰らい尽くし・我が人形と成せ】」
「あ……あぁ…なんだ…何なのだコレは…?貴様は一体…な、何者なんだ…」
徐々に闇に包まれる男に対し、黒騎士は事も無げに言い放つ
「…冥土の土産だ…我が真名を魂に刻んで逝け、ガルディア宰相アルセムよ。
俺はゼフ…ゼファルツェア=ノースランドだ」
「……ゼファル…ツェア?バカな…その名は…滅んだ筈の…魔王の一人……だ…ぐ…ぅ……あぁぁ……ぁ…ぅ………………」
闇に呑まれた宰相が再び姿を現すがその眼に生気は無く、文字通り人形のように佇んでいた。
「…滅んだ筈、か…。愚かな人族め…貴様等は知らぬのだ…我等魔族とて争いを好まぬ輩も存在するというのに我等に行った所業…絶対に許さん……ガルディア王国に関しては『人形』に任せるが…残るは聖都レスターク、学術都市サンクタス…か」




