第4章『父娘、救出・前編』第20話~それぞれの切り札②~
皆様、明けましておめでとう御座います!
(仕事で)大変遅くなってしまいましたが、その分長めの文章でお届けします!
〔ユーリ視点〕
「くくっ…あはは!ユーリさんと組むのは今回が初めてだけど、そんな冗談を言う人だとは思わなかったよ!」
ウルリカとの戦いを終えたラースを勧誘するユーリに何の冗談かと言わんばかりに大声で笑う相手に対しユーリはクスリと微かに笑う
「はー…なかなか面白い人だね、ユーリさんは…って、その微笑みは何かな?
「ふふ……面白いのは君の方だと思いますよ?」
「…………」
ユーリの言葉にラースの魔力が微かにざわめくのを『視た』ユーリは確信を得たように笑みを浮かべる。
「……何が言いたいのかな?」
「ガルディア王国宰相一派が抱える元Aランク冒険者『ラース=リカルド』は召喚術はおろか、魔術全般を不得手とする体術専門の男。彼の実力であればあの少女が相手であっても易々と遅れを取ることは無い。そして……」
「……………」
話の合間にゆっくりと立ち上がった少年が黒いローブを煩わしそうにユーリの次の言葉と同時に脱ぎ捨てると自身に付与していた幻…つまり幻影魔法を解除してユーリと向き合う
「魔術を使えるのは双子の妹で現Bランク冒険者の魔術師である『リース=クアッド』…違いますか?」
「本物か偽物かだけでなく、私が誰なのかまでお見通しとは…恐れ入りました、ですの。
上手く誤魔化せていたとは思っていたのですが…やはり、搦め手は苦手ですわ」
悠然とユーリの前に薄く赤みがかった長髪を風に靡かせ紺碧の眼に力強い意思を感じさせる少女が真紅のローブと魔術師特有の防護を付与を施された冒険者用の軽装服を纏い不敵な笑みを浮かべていた。
ユーリの持つ情報を信じるなら年齢は16に届いたばかりの筈である。
『他者の姿を投影し自身の姿に上書きし、周囲を欺く魔法』それは幻影魔法の中でも難易度が高く、Bランクの魔術師が易々と使いこなせる魔法ではないのだが…ギルドから与えられた等級以上の実力が彼女にはあるのだろう、とユーリは正体を知った時から感じてはいたのだが……
(歳の割には……大きい)
ユーリの視線が一瞬だけ彼女の持つ膨らみを補足し、次に自分自身へ視線を向ける
(…………無念)
しかし、その間は1秒も経たせず直ぐに会話を再開させた為リースには気づかれなかった。
「苦手?この国の中で私が知る限り、貴女の正体に気付いているのは二人だけですよ?大したものだと思いますけどね」
「………貴女…どこまでご存知ですの?」
魔術師の鋭い視線が射抜くもユーリは何処吹く風とニッコリと年相応の笑顔を向ける。まるで『今はその時ではない』と言わんばかりの清々しい笑顔である。
「今は時間がありません。が、1つだけ言える事があるとすれば…」
「…何ですの?」
怪訝そうにユーリを半眼で睨むリースにユーリは視線を受け流すように《転移門》のある方へ視線を向ける
「ガルディア王国に秘密利に囚われているのはマーベリック父娘だけではない…という話です。」
「……根拠がありませんし兄が易々と捕まるとも思えません……ですが、あらゆる手段を用いても連絡が急に着かなくなったのは事実ですわ………それに今思えば、城内には私の使い魔が侵入出来なかった場所が複数ありました…。
まさかとは思いますが………もしも、急に連絡が途絶えた理由が王国の思惑によるものなら…私は即刻、兄を救出しなくてはなりません。例え…遺体になっていたとしても、私にとっては大切な家族ですから」
(リースとラース…かつてガルディアの楯と謳われた祖父ガルムに匹敵する強大な魔力と気をそれぞれ片方ずつ宿す異例の存在ではあるが…それゆえに離婚した父母の家に引き取られた…と、情報にはあったがやはり兄妹仲は良好。故に兄の身柄と引き換えに宰相に手を貸していた…何とも気分の悪いやり方ですね)
「私の見立てではマーベリック父娘共々、ラースも生存していると思っていますが時間に余裕がないとも予想しています。…だからこそ私は君を勧誘したのだけども。
それで、改めて聞くけど私と一緒に来る気はありませんか?」
「………そうですわね。いい加減、軍から出されるあやふやな情報に苛立っているのも確かですわ。最初から兄をネタに私を使い潰す積もりだったのでしょうから救出と報復を一度にこなせるなら私にとっては最良の一手になりますわね」
仮の姿から本来の姿に戻った少女は城に向かう為に《転移門》へと足を向け始める
「契約成立…ですね。あ、向こうでは剣聖殿が君達の隊長と戦っていますが…攻めあぐねているようなので是非とも手伝ってあげて下さい。
城に突入するなら王国の英雄の名声と力は絶対に必要になりますから」
「…元隊長、ですわ。
…でも、あの剣聖リンネが手こずるほどの強さだったかしら?」
ユーリの言葉に首を傾げるリースだが
「真っ向勝負で剣聖を継いだ者と渡り合える技量や実力なんて、ガルディアになんて存在しませんよ。だからこその小細工を用いていると考えるべきでは?」
(まぁ…近隣諸国では各国の騎士団長達ぐらいでしょうね、剣聖とある程度まともに戦えるのは…)
「………なるほど、その通りですわね。では、私の存在がその小細工を打破する鍵であると…示す事で貴女に私が本当に雇われた証しと致しましょう。
【契約者の名の元に・顕れ出でよ・疾風の王・地を這う獣を統べるは・七色の一・蒼き刻印の王・我、願い奉る・我は御身の助力を求める者也】!」
リースが少し長めの詠唱を終えると同時に手を前に突き出すと大地に一瞬で浮かび上がった召喚陣から一匹の蒼い毛並みの狼が現れる……通常よりかなりデカイが間違いなく狼であった。
「これは……」
(驚いた…この蒼狼の魔力の濃密さは…魔獣ではなく聖獣?)
ガルル……
(久しいな…我が友ガルムの孫娘よ、状況は理解している……我の力が必要となったか?)
「お久し振りで御座います。蒼の王ヴィルサス様…どうか、我が兄ラースを助ける為、お力添えを願いたく……」
ガルルルル……
(我が友ガルムの孫ならば助力を惜しむつもりは無い。騎乗を許す、乗るが良い。急ぐのだろう?)
「ヴィルサス様…ありがとうございます、ですの。……ところで、ユーリさんは?一緒に行きますか?」
「いえ、私は『分身体』ですから。直接出向く必要はありません。『本体』も近いうちに向かいますので、まずはリンネと合流して《転移門》の確保をお願いします。」
「わかりましたわ。では、先に向かわせていただきます…ヴィルサス様、宜しくお願い致しますわ」
グルル…
(しっかり掴まっていろ、ガルムの孫娘よ…行くぞ)
リースを背に乗せた蒼い巨狼は巨体に似合わない速度で駆け出していく
「聖獣ヴィルサス…予想外な助っ人ですが、これなら《転移門》は大丈夫でしょう……さて」
「《雷散弾》!」
バチバチバチッ!!
突然、放電を伴った散弾が雨のようにユーリに降り注ぐが予期していたかのように大きく回避し振り替えると、《魔女》の二つ名を持つヴィーチェ=エルトリンデがその場に姿を現していた。
「……危ないですね…当たったらどうするんですか?」
「いや、当てる気じゃったからのぅ…むしろ規模が小さいとはいえ、速度重視のこの魔法を避けるとはやるのう?流石は《英雄殺し》殿じゃ」
「……《翼の魔女》ヴィーチェ=エルトリンデ……全ての騎士を不殺にここまで来ましたか……やりますね」
「妾の足止めをしたいなら魔法が通じないゴーレムを100体用意することじゃ」
不敵に微笑むヴィーチェとユーリだが…………




