第十一話:焦りと安らぎ
身体の奥底に澱のように沈む、あの重苦しい気配を感じていた。
この世界に来てからずっと自分を苛み続ける「魔素」の重み。それがまた体内で飽和しつつあるのを本能が察している。それだけではなく、理由のない胸のざわつきと、肌が粟立つような焦燥感が、百舌子の心を酷く苛立たせていた。
(……また、ユリナさんにお願いするしか……)
そう考えるだけで、胸の奥がぎゅっと切なく締め付けられる。
何度目かになる唇の触れ合い。少しずつ、その行為を受け入れることには慣れてきたつもりだった。けれど、いざその瞬間を前にすると、どうしても心拍数が跳ね上がってしまう。
隣のベッドにいるリィンはまだ、寝息を立てて深い眠りの中にいる。
「……あの、ユリナさん。その、……また、お願い、していい?」
未だにそんなふうに、子供っぽい確認をしてしまうことが、百舌子はたまらなく恥ずかしかった。
そんな百舌子の躊躇いを見て、ユリナは少し微笑んだ。
「モズコ?こちらを向いてください」
その優しく、けれどどこか拒絶を許さない響きを含んだ声に、百舌子は抗うことができなかった。
恐る恐る顔を向けると、目前に迫るユリナの深い星空のように輝く瞳に吸い込まれそうになる。たまらなくなって百舌子が咄嗟に目を逸らそうとした。
ユリナはふわりと優しく微笑み、百舌子の逃げ場を塞ぐようにそっと唇を寄せた。
「ん、っ……あ……」
触れ合った瞬間、脳裏を突き抜けるような痺れる熱が、全身の輪郭を駆け巡っていく。いつもなら熱を吸い取られるだけのはずなのに、今日の身体は酷く異常だった。粘膜の触れ合う感覚が、衣服の擦れる胸元の感覚が、恐ろしいほど過敏に、そして鮮明に伝わってくる。
ユリナの甘い吐息と共に、湿った舌先が百舌子の唇を愛おしげになぞり、二人の境界線を優しく溶かしていく。その心地よさと、身体の奥から湧き上がる切ないほどの疼きに誘われるまま、百舌子は自らユリナの首筋に手を回し、そのひんやりとした舌先へとしがみつくように、貪欲に自らの舌を絡ませてしまった。
「ふあ、ん……っ、んむ……」
自分でも驚くほど、熱を帯びた甘い声が鼻から漏れる。頭の芯がじんわりと痺れ、本当に何も考えられなくなっていく。百舌子の中に眠る毒、張り詰めていた緊張や不安、そして理由のない苛立ちが、その至福の熱の中で激しく融解していくのを感じていた。
(なんだか、熱くて、おかしく、なりそう……っ)
百舌子は息を吸うのも忘れて、シーツを掴む指先に自然と力が込もった。
熱い吐息を交わし合い、身体の奥底に溜まっていた重苦しさがゆっくり溶けていく。心地よさに思考が白く染まり、そのまま奥底に沈んでしまう。そう思った——その時、ユリナの耳がピクリと動き、二人の唇が離れた。
「んっ……ユリナさん、まだ……」
ユリナが何かの気配を察したように耳をしきりに動かしている。
目を泳がせているユリナの白い肌が、みるみるうちに林檎のように赤く染まっていく。
ユリナの肩越しに視線をやると、隣のベッドで眠っていたはずのリィンが、いつの間にか身体を起こしてこちらをじっと見つめていた。
「あっ……リィンちゃん、いつから起きて……」
気まずさに百舌子たちが固まる中、リィンは特に気にした様子もなく、淡々と「おはよう」とだけ残し、ベッドから抜け出して部屋を出て行った。
「お、おはよう……」
我に返った二人の消え入るような返事は、虚空に消えていった。
顔から火が出るかのように急速に、百舌子の頬が赤くなっていった。
お互いに息が乱れ、部屋には耐え難いほどの気まずい時間が流れる。二人は目を逸らし、顔を赤くしながら衣服を整えた。
「……あ、あの……ありがとう、ユリナさん。少し、楽になったから」
百舌子は消え入りそうな声を、なんとか口に出した。恥ずかしくて顔も見られないのに、もう一度なんてお願いできるはずがなかった。
「……いえ、お役に立てたのなら……よかったです」
魔素の重みは無くなり、楽になっているはずなのに、身体の奥底からゆっくりと押し広げられるような違和感と、収まりきらないイライラがまだ低く居座っていた。
(……何にも、できない。私はいつも、誰かに頼ってばかりだ……)
旅の足音を感じる中で、お荷物でしかない自分に、無性に苛立ってしまう。何かできることを、自分だけの力で役に立てる方法を探さなければ、この胸の焦燥感は消えそうになかった。
教会の扉を遠慮がちに開けて入ってきたのは、宮廷魔術師のミレイユだった。
「……どおも、こんにちは……。あ、これね、一応魔竜討伐の褒賞金。持って来たから、受け取ってね……」
ぼそぼそとした呟くような口調でありながら、その視線は百舌子たちを完全に通り越し、部屋の隅にいるリィンへと熱烈に注がれている。
「……ホントはボクが来る必要なかったんだけどね。最後にもう一度、リィンちゃんに会いたくて……」
それを聞いたリィンは顔を上げ、無表情のまま百舌子の背に隠れるようにくっついた。
「……あはは、あの……最後にって、もう王都に帰られるんですか?」
「うん、調査が終わったからね。……あと少ししたら戻る予定。はぁ……また仕事に追われる日々だよ……あ、これ討伐証明書ね」
手続きを終えた後、百舌子は意を決して、リィンの元に行こうとするミレイユを呼び止めた。
「あの……ミレイユさん。私たちも、もう少しでこの街を出るんです。だから、よければ私に、魔術を教えてくれませんか?」
「えっそうなの?それで、魔術ね。 うん、まあ……。基礎の基礎くらいなら、教えられないこともないけど……」
百舌子が魔力を操作できず、体内の魔力がどういう感覚で、どうやって外へ出すのかわからないことを伝えた。
「え?魔術が使えないの?……それって本当?そんなの初めて聞いたよ」
ミレイユの重苦しい前髪から覗いた瞳が、百舌子の視線と初めて合った。
「……ちょっと身体見ていい?」
そう確認しつつ、ミレイユは百舌子の身体をまじまじと見つめる。そして、状況を理解するにつれて、彼女の目がゆっくりと丸くなっていった。
「興味深いね……。通常の人と比べて魔素の流出量が目に見えて少ない……。魔素だけじゃなく休眠魔素が溜まり続けてるってことだよね?これ、大丈夫なの?」
予期せぬ問いかけに、心臓が大きく跳ねた。
百舌子とユリナは吸い寄せられるように顔を見合わせたが、言葉は出ない。ただ、先ほど交わした触れ合いが脳裏に蘇り、燃え広がるように頬が熱くなっていく。
「魔素の流れが阻害されてるわけではなさそうだけど……うーん、とりあえず一度魔術を使ってみてくれない?」
ミレイユは懐から小さな紙を取り出し、いとも簡単そうに魔術陣を描いた。それを百舌子に向かって突き出した。
「光を灯すだけの簡単な魔術だよ。やってみて……」
受け取った紙に手を当て、意識を集中する。しかし、身体が力むばかりで、魔術陣には何ひとつ反応がない。刻印を使った時のようなあの熱は感じられても、それを指先に流すことができない。
「やっぱり、ダメみたいです……どう動かせばいいのか……」
失敗を繰り返すたびに、百舌子は自身の不甲斐なさを嫌というほど突きつけられてきた。でも、何度その場面に直面しようとも、今度こそ変わりたいと心から願ってしまう。
「……刻印は使えるんだよね。魔力の感覚はわかる?外からボクの魔力を少し流してみるから、その感覚を意識してみて」
背中に触れたミレイユの少し冷たい指先から、温かな何かが流れ込んでくるのがわかる。
(……これが、魔力……?)
温かい波動が百舌子の血流に乗って全身に広がっていく。外から内に流れるその力の熱の感覚を百舌子は知っている。百舌子が願い、刻印が光ったあの時、無意識であっても自分から放っていた熱の感覚を百舌子は覚えていた。
「魔力の感覚は分かった気がします。……でも、これで、どうすればいいのかまだわからないです……」
「できることからやってみよっか。ボクに刻印を使ってみるとかさ。刻印はその人の願いの形を宿すもの。君の願いはどういうものだったのか。実際、その刻印には興味があるんだ」
ミレイユのその言葉は、百舌子の耳には毒のように響いた。
あの時の私の願いは、なんだったのだろうか。彼女を助けたい、そう思ったのはたしかだ。でも、私は友達が欲しかった。それだけだったはずなのに。
そんな簡単に……言わないでほしい。この力の恐ろしさも、私の苦しみも知らないくせに。自分が彼女たちの普通の生き方を奪ってしまったあの日から、この力は私にとって消えない罪の証だ。口には出せない、確かな憤り。けれどそれは、何も知らないミレイユに対する、醜い八つ当たりでしかなかった。
「……あ、ごめんね。またボクの悪癖が出ちゃってたかも……反省するよ……」
言葉に困っている百舌子を見てか、ミレイユは恥じるように肩をすぼめた。
その時、不意に視界が真っ白に染まった。ミレイユの申し訳なさそうな視線や、冷え切った教会の空気も、ユリナの羽毛の壁の向こうへと遮断される。
嫌悪感が自分の表情に出ていただろうか、と百舌子は心配になった。
「無理をすることはありません、モズコ。嫌なら、断ってもいいのですよ」
翼の内側から、ユリナの静かで、けれど柔らかい声が降ってきた。
ユリナは、不器用そうに翼を少しだけ窄め、百舌子の震える肩にそっと寄せた。
「でも、あなたの力が『祈り』であると、私は知っています」
祈り。そんなきれいな言葉で包んでしまっていいのだろうか。あの夜の自分の願いは、もっとずっと、醜くて身勝手なものだった。
でも、ユリナの声にはためらいがなかった。ユリナの言葉からは深い信頼を感じ取ることができた。それに答えるため、百舌子は一歩、前に踏み出すことにした。
「やってみたい……けど、本当にいいんですか……?もしかしたら不便な姿になるかもしれないのに……」
そんな百舌子の言葉にミレイユはニマッとした笑みを浮かべた。
「独断だけどね。……というか、ボクの研究欲というか、興味が勝っちゃっただけ。心配しないで、何かあってもボクの自己責任だから。君も自分の力をよく知るチャンスだと思って気軽にやってくれていいよ」
いつになく饒舌に、どこか狂気じみた執着を覗かせて笑うミレイユの言葉に背中を押され、百舌子は覚悟を決める。
エリスが言っていた再構成に使える亡骸がない状況で使ったら、どうなるかわからない。
百舌子はミレイユの目の前に立ち、手を掲げる。そして緊張しながら刻印に意識を集中させた。胸元に熱が収束していくのがわかる。これが刻印を使う感覚。
胸の刻印から放たれた眩い光が部屋を包み込んだ。
しかし、その光はすぐに消えてなくなった。
「あれ?これで終わり?暖かい気持ちにはなったけど……」
ミレイユは自分の姿を見回しているが、特に変わった様子はない。
失敗?いや、発動した確かな手応えはあった。やはり素材がないと何も起きないのかもしれない。
「……素材、がないから……かな」
素材がないと何もできない。これでは力を持っていないのと同じだ。
「素材?リィンちゃんに混ざってる魔竜みたいに?動物ならなんでもいいの?魔獣じゃないとダメとか?」
少なくともユリナの耳と尻尾、リィンの角と脚は魔獣のものではないはずだ。
「動物ならおそらく……」
「うーん、すぐ用意できるかな……よし、ちょっと待っててもらってもいいかな」
ミレイユは何か思いついたように、いつになく素早い動きで部屋を飛び出していった。
しばらくして、ミレイユがいくつかの荷物を抱えて戻ってきた。
「ちょっと無理言って解体前の兎を買ってきたよ」
そう言って荷物が机の上に広げられる。
「この竜の杖も使えないかなって……、リィンちゃんとお揃いに……えへ」
唐突に視線を向けられたリィンは驚く様子もなく、ぷいっと他所を向いてしまった。
ミレイユの竜に対する執着とリィンの相変わらずのそっけない対応に、百舌子は心の中で苦笑いを浮かべるしかなかった。でも、彼女のその突き抜けた異質さのおかげで、胸の罪悪感が少しだけ和らぐのを感じていた。
「……じゃあやってみて」
机の側に座ったミレイユに向かい合い、百舌子は刻印を起動した。眩い光が部屋に広がり視界を真っ白に染めていく。その中で、確かな景色を見た。兎の亡骸が解け光の糸となってミレイユへと吸い込まれていく。
今回はこれまでと違って落ち着いている。百舌子は明確な意思を持って、丁寧に編み込むように力を操作した。
光が収まった後、ミレイユの頭頂部には白くふわふわとした兎の耳が、腰元からは丸い尻尾が生えていた。
(変化は少なくできたけど……これで良かったのかな)
ミレイユは変化に気づいていないようで、くるくると自身の体を見回していた。
「……ん?また失敗?」
その姿が可愛らしくて、百舌子が思わずミレイユの耳に触れた。
「うわ、くすぐったい。なにぃ、み、耳?全然違和感なくて気が付かなかったよ……あ、でも、周囲の音がよく聞こえる、かも」
ミレイユは目を閉じて、ぴょこぴょこと耳を動かしている。
「竜の杖は……残ってるね。骨だから?それとも加工されてるとダメなのかな」
体に不調はないだろうか、気分は悪くないだろうか。そんな心配ばかりが百舌子の心を埋める。
「どうしたの、大丈夫かい。もしかして魔素を使い過ぎたとか?この力は魔素の消費も多そうだからさ」
確かに少しだるくて体が重い気がする。魔素を使えば体は軽くなるはずなのに。
「すこしだるいような……私は大丈夫です。そ、それよりミレイユさんは平気ですか?」
「もう心配しすぎだよ。キミはもっと自信持っていいと思うよ」
ミレイユは少しリィンに話しかけた後、浮き足立った様子で教会を後にした。百舌子はその背中を呆然と見送った。
(嵐のような人だった。……でも、自信、持っていいのかな。持てるかな……)
ユリナが隣に座り、そっと百舌子の肩を包んだ。
「そうですモズコ。……これから旅の準備を兼ねて、少しこの街を見て回りませんか?」
ユリナの柔らかい提案に、百舌子は驚きつつも、どこか救われたような気持ちで頷いた。
「こうしてゆっくり街を見て歩くのは初めてですね」
通りを歩いていると、漂ってきた花のような甘い香りに、百舌子の足が自然と止まった。
雑貨屋らしく店先には色とりどりの小瓶が並んでいる。
「何か気になるものでもありましたか?」
「うん、ちょっとね……」
百舌子は商品棚に置かれている一つの小瓶を手に取った。
栓を抜くと透き通る清涼感とほのかな甘みのある香りが広がった。
(あ、この香り……落ち着く……好きかも……)
ふわりと鼻をくすぐる香りに、なぜかユリナの顔が浮かんだ。
「髪油、ですか?いい香りですね」
顔を上げると、肩越しに覗き込んでくるユリナが目と鼻の先にいた。
「う、うん! すごくいい匂いだと思う!」
顔がカッと熱くなるのを隠すように、百舌子は声を上擦らせる。そして慌てて小瓶を棚に戻そうとした。
「あの、この髪油を二ついただけますか?」
さらりと店番に言うユリナにモズコは驚かされた。そんな百舌子の顔を見たユリナが笑って言う。
「せっかくお金もあるんだから、少しぐらい自分のために使ってもいいんですよ。気に入ったのでしょう?」
「……うん、そうだね」
百舌子は少し照れながらも、小包を受け取った。
二人は小包を手に、目的もなくゆったりと街を歩く。その時間はこれから旅に出るという不安を、束の間だけ忘れさせてくれる特別なものになった。
夕食を終え、時間をかけてユリナの髪を乾かし、ひと段落ついたところで、二人はランプの灯る薄暗い部屋のベッドに並んで座った。
「いつもありがとうございます」
微笑み返した百舌子の視界の端で、リィンが欠伸をしている。そんな穏やかな時間が続いて欲しいと思ってしまう。
罪悪感から始まった身の回りのお世話が、今ではなんだか少し楽しみになっていた。
「せっかくだから、昼間に買った髪油を使ってみていい?」
百舌子はそう言ってユリナを鏡の前に座るよう促した。
「……え?私にですか?」
驚きつつも鏡の前に座ったユリナの後ろに立ち、髪を梳かしていく。こうやってユリナの髪に触れている瞬間が特別なものに感じていた。
小瓶から少量を手に取り、櫛を使って丁寧に髪へ馴染ませる。櫛を通す度に、透き通るような紫色の髪が、油を含んでしっとりと艶を増していった。
「モズコの髪に使ってあげられないのがもどかしくなりますね」
鏡越しに視線が合い、百舌子はくすりと笑う。
「私はいいの。元々自分のためにと思ってたわけじゃないし」
「えっ……それって私に?」
いつも乾かすだけの髪を、手入れしてあげたいと考えていた。その機会が巡ってきただけだった。
「うーんと、ユリナさんに合いそうな香りだなって思って……すぅー……うん、いい匂い」
無意識のうちに、百舌子はユリナの細い首筋に小さく顔を寄せ、その匂いを深く吸い込んでいた。
途端に、ユリナの身体がビクッと強張った。
「も、モズコ……? あの、さすがに恥ずかしい、ですよ……っ」
ユリナの白い頬が、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。黒い獣耳がぺたんと折れ、長い尻尾が戸惑うように揺れている。
「え? あ……ご、ごめん! つい、本当にいい匂いだったから……っ」
我に返った百舌子は、自分のしたことの恥ずかしさに顔から火が出るほど赤くなった。そして逃げるように、はぐらかそうとして言う。
「リ、リィンちゃんにもやってあげる……」
ふいに呼ばれたリィンは目を丸くして百舌子を見た。そして、ユリナを少し見つめた後、ふいっと視線を外した。
「……私はいい」
リィンの白銀の髪は、艶がありさらさらで一切の濁りがなかった。不死の影響で髪質も維持されているのだと思うと、少し羨ましい。
しかし、断られたことで、百舌子は逃げ場を失ってしまう。ユリナとの間に少し気まずい空気が流れた。
「もう……じゃあ寝ましょうか」
ユリナは少し拗ねたように言うと、ベッドに横になった。
明日はついに出発の時、緊張と不安が押し寄せてくる。それを埋めるようにユリナの尻尾が百舌子の脚に絡む。
百舌子と目が合ったユリナが、目を細めて微笑んだ。
「おやすみなさいモズコ」
「うん、おやすみ……」
ドクドクと五月蝿いほどの心臓の音が、静かな部屋に響いている。隣で眠るユリナの香りに包まれ、体が芯から熱く疼くようで眠れなかった。




