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負け確ボンバー 丸吞みシーサペント大量発生事件3

  イチ達は魔導漁船ガンバリーニャ号に乗り込んだ。

この船はマナを動力に推力を得るという魔導機関船であり、操舵室の床から出ているドーム状のマナ装置に魔法使いがマナを伝える事でスクリューが回転する仕組みではあるが、現代では魔導機関は殆ど使われていない。

魔導機関が廃れた理由は単純で、非効率的であるからというのはもはや常識と言える。

元々は烏賊釣りの為の漁船だったようだが、シーサーペントを狙う為に改造されたようで船首に捕鯨砲が追加されている。

船室もあり、寝泊まりもできるが居住性はあまり考慮されていない。

小型と中型の間のような船で、イチ達7人が甲板を自由に動く分には問題ない大きさをしている。

イチは事前のブリーフィングで各自の役割を決めていた。

まず、タオ・メイメイが捕鯨砲の砲手を務める。

これはパーティの中でイチの次に射撃能力が高く、かつ魔法こそ使えないものの魔力が高く、魔導式ウィンチにエネルギーを伝えられるからであった。

イチとエルビアニカはタオ・メイメイがシーサーペントに捕鯨砲を撃ち込んだ後に魔導ウィンチで海面に引っ張り出したシーサーペントにライフル銃を撃ち絶命するまで体力を奪う役割。

イルハは見張りと護衛を担う。これも膂力に優れた俊敏かつ目の良いイルハは適任であった。

ヘルヒャンとミュルガルデはキャビン(操舵輪などがある部屋)の中で魔導船の操舵を担当。

魔力のあるミュルガルデは必要に応じてマナタンクにマナを伝えて船を加速させる事ができるし、ヘルヒャンはこの手の乗り物の操縦に長けている。

穴のない布陣であった。


 「よーっし!魔導漁船ガンバリーニャ号、出港するぜ!」


 ヘルヒャンが意気揚々と伝声管(甲板に声を伝える為の装置)に己の声を響かせると、甲板の上のシーナやイルハ、エルビアニカらから歓声があがった。


 _____さて、今年はどうなるかな。


 イチは加速していくガンバリーニャ号の甲板で、潮風に髪を靡かせながら太陽で輝く水平線を見つめ目を細めていた。





 「皆さま東側をご覧ください! あれはパルテルラットのパーティでしょうか、早速大物を仕留めたようです!」


 海岸一帯にペリュミンの魔法で声が響く。

東側の海ではパルテルラットのパーティが魔導漁船に備えられた捕鯨砲で一匹のシーサーペントを撃ち貫き、甲板上に引き上げようとウィンチを巻いていた。

パルテルラットは赤い髪を輝かせ指揮をとりながらバルザック8式拳銃で強烈な轟音と反動と共に大口径弾をシーサーペントに連射し海獣の体力を奪っている。

獲ったシーサーペントは中々の巨体で、充分な成果が期待できそうだった。


 「流石、去年の優勝者です。勘所を理解している動きですね」


 とは解説のアルバートの言。


 が、一方で成果は芳しくない者達もいる。


 イチのパーティもその一組であった。


 「どうも良くないねぇ。さっぱりボウズだよこりゃ」


 エルビアニカは魔導漁船ガンバリーニャの甲板で掌の中でサイコロを転がした。

1の目と2の目が出ていた。


 「むぅ……」


 イチも首を傾げた。

既にシーサーペントを誘き寄せる為に船から海中に豚の肉を吊るしている。

それなのに今年はどういうわけか小型のシーサーペントすら寄ってくる気配がない。


 「他のパーティも芳しくなさそうですよ」


 イルハは見張り台から他の船を見回してみたが、どうやら他のパーティもシーサペントと戦っている様子がなく、例年と比べると明らかに不漁であった。


 「あ! でもでも沖のほうの船は戦ってますよ。私たちも沖に行きましょうよ! このままじゃ負け確ボンバーですよ!」


 「負け確ボンバーってなによ」


 やかましく騒いで地団駄を踏むシーナにタオ・メイメイは冷ややかなツッコミを入れている。


 「……むぅ」


 シーナのいう事ももっともであるが、イチは気が進まなかった。

と言うのも、既に沖では優勝候補のパーティが進出しており、彼らの船の性能はイチ達が借りている船より速力、小回り共に上回っているために今から追いついても不利である。

実のところイチは本心から優勝を狙っているわけではなかった。

もともと慎重な性格をしているというのもあり、危険を侵すよりはあわよくば5位に食い込めれば……くらいの事を考えている。

そういう理由で答えあぐねている時であった。


 「大きい!」


 見張り台のイルハが叫んだ。


 「左です、左!大物です!」


 思わず皆甲板の左に寄り、イルハが指差す方を見た。

確かにその方向の大きなシーサーペントの魚影が見える。

影だけで判断するなら十分優勝圏内を狙えそうだ。


 「ヘルヒャン! 追いかけてくれ!」


 イチが驚いている間にエルビアニカが操舵室のヘルヒャンに大声で伝えた。

ヘルヒャンは「あーよ!」と答えると舵を切った。

船に左向きのエネルギーが加わり、甲板が反動で揺れた。


 「不安かい?」


 甲板に打ちつけられた波に一瞬顔を守ったイチにエルビアニカが話かける。


 「よくないよ。中途半端は。前に出ると決めたらその気にならないとツキも逃げてくもんさね」


 エルビアニカはそう言ってイチの尻を平手で軽く叩いて配置に走った。


 「_____そうだな。エルビアニカの言う通りだ」


 エルビアニカに気合いを入れられたイチは気を切り替える事にした。


 「よし、総員、配置に着いてくれ。それと、アレを試してみよう。みんな、私の後ろに気をつけてくれよ」


 イチは全員にそう伝えるとヘルヒャンが用意した新しい武器を取りに走ったのである。


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