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イチ、完全に石化 スウィートバウム少女石化事件16

  卑劣に身体を弄ばれ、先程まで苦痛に満ちていたイチの表情はだらしなく弛緩し、「ハァハァ」と切なく喘ぐような吐息を漏らしている。


 「いい表情になったと思うが、どうだ?」


 バジリールは己の仕事の出来栄えをパーカスに確認するよう促し、パーカスは興奮しているようで、熱の篭った声色で「素晴らしい」とだけ返した。

イチは屈辱的な姿勢で固められたまま、項垂れて浅い吐息を繰り返している。

時折、どういうわけか「えっ」や「あお」と意味不明の音を口から出した。

そしてこの意味不明の音こそ、不屈の冒険者であるイチの最後の切り札なのだ。


 「結構。後は顔で仕上げか?」


 「どうぞ」


 パーカスは満足していた。

最後の仕事としては最高のフィナーレである。

この時パーカスはイチを売り物にはせず観賞用として自分のものにするか迷っていた。


 バジリールもまた深い快感に包まれていた。

彼はいつからか他者を石化する興奮に深い悦びを感じる異常者になっていたからである。


 しかしイチは絶望していなかった。

己の身体が徐々に冷たい石に変わっていき、まるで手足を失ったような恐怖に叩きのめされ、尊厳を男達の手により傷つけられていく中で反撃の機会を狙っていた。


 しかしどうやって?


 彼女の手足は完全に石と化し無力化され、辛うじて自由に動かせるのは口だけではないか。

魔法も何も使えない彼女に何の抵抗ができるというのか?

せいぜい最後に罵詈雑言の言葉でも投げつける事しかできないではないか?


 しかし、口から出されるものは何も言葉だけではない。


 「さて、口が動くのはこれで最後だ。何か言い残す言葉はあるか?」


 バジリールのこれは他者の生命を握った者の傲慢である。


 「________げしゅ(下種)野郎」


 イチは項垂れ、蕩かされた表情のまま最後の悪態を吐いた。

しかし舌がもつれたのかその言葉は力のない間抜けな響きとなって消えた。


 「ふふふ、はははははは! ふはははははははは!! いいだろう!」


 バジリールは哄笑を響かせるとイチの顎を両手で包み、最後に表情を確認しようと彼女の顎を上に向かせた。

バジリールは無様に蕩け力を失ったイチの顔を期待していたのだろう。

しかしその瞬間、イチの頬が一瞬膨らみ、その形の良い口が笛を吹くような形で窄んだ。

バジリールはイチの表情が自分の思い通りになっていなかった事に顔を顰めたが、その刹那、


 プッ、という小さく空気が弾ける音がしたかと思えば、バジリールの右目に短いが太く鋭い針が突き刺さり彼は「アッ!」っと短い悲鳴を出した退けぞった。


 「貴様!」


 バジリールは片目の視力を失い狼狽しながらもすぐさま報復を行おうとバランスを崩した上体を立て直したが、自分の身体の異常をにわかに感じ始めた。


 「ぐああああああああああああああ!!! 毒だと!!!」


 バジリールは一瞬遅れてやってきた顔面を破裂させるような凄まじい痛みに叫んだ。


 「____ゲロクソバカガイの毒だ________血清がなければ、________30分ともたんぜ」


 イチはギリギリの意識の中で僅かに口を歪め笑った。

ゲロクソバカガイとは海に生息する猛毒を持つ貝で、その神経毒を食らった者はイチの言葉通り有効な血清を打たなければ早ければ20分ほどで全身の身体を麻痺させ呼吸を奪い、30分とたたず死に至らしめる。

一部の捕食者を除き、多くの生物から見向きもされず蛇蝎よりも嫌われているその生態からゲロクソバカなどという名前が付けられたほどに嫌われている貝であった。

イチはそのゲロクソバカガイの毒を塗った毒針を煙草状の吹き矢に仕込み、口の中の上顎に特殊な糊で貼り付け、舌でその糊を剥がす事でバジリールに吹きつけたのである。

バジリールはトカゲ人族でその皮膚が硬いウロコで覆われていたため、なかなかチャンスを見いだせずいたが、最後に訪れた一瞬のチャンスを逃すイチではなかった。

また口の中の糊が上手く剥がせず、時間を要したが、バジリールがイチの身体を弄んでいた時間を利用する事ができた。

イチは己の身体が石に変わった苦痛と恐怖、そして屈辱の中でも決して闘う意思を失わなかったのである。

バジリールとパーカスの敗因は、己の悪趣味に耽りイチという冒険者の不屈の闘争心に最後まで気がつかなかった事にあると言えよう。


 「バジリール殿!」


 パーカスはバジリールの異常に立ち上がったが狼狽し何も出来ない。

しかしバジリールは急速に広がる毒の痛みを己の怒りで抑え込み、激情のままイチに手をかざした。


 「このネズミの糞にも劣る小便臭い糞女が!! 石になって後悔し続けろ!! ________永遠に!!」


 「あっ________」と言う僅かな悲鳴をあげてイチの身体は一瞬にして冷たく灰色をした石に変わり果てた。


 イチは確かに最後の抵抗に成功し、それは見事なものであった。

しかしイチの危機は何も変わらず、それどころか完全なる石化という最悪の瞬間を彼女に与える事になったのである。

今、イチの冒険は終わってしまおうとしていた……。


皆さまの感想やレビュー、評価が作品の方針に良い影響を与えます。


小説も、読者様と物語のコミュニケーションですからね。


1話完結なのでイチ達のこんな姿が見たいなどの要望などもあれば是非!

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