孤独に感度3000倍に耐えて喘ぎまくるイチ! 感度3000倍なんて怖くない!6
遺跡の通路にひとり残され、イチはうずくまっている。
この遺跡は恐らくヘンナーが設置したマナライトが適度な間隔で設置しており、薄く闇を照らしていた。
____な、なんてこった。まさか、ひ、ひとりにされてしまうなんて!
今回の件はイチとしても既に反省点ばかりである。
思い返せばいっその事ヘルヒャンとイルハには先に戻ってもらっても良かったのだ。
変な羞恥心と余計な気づかいがこのような状況を生み出した。
このまま何のトラブルもなくスウィートバウムに帰れれば良いが、行動の遅れは予期しないトラブルを生む。
それを思うと今しなければならないのはすぐにでもイルハとヘルヒャンに追いついて事情を説明し、先にスウィートバウムにヘンナーを連行させる事だろうとイチは狂いそうな頭で考えた。
この身体の異常がいつまで続くかはわからないが、もしこの場から数日動けないとしてもイルハ達にヘンナーを連行した後で迎えに来てもらえば良い。
もっとも最悪、副作用が予期しない方に悪化して更に重大な症状が出る恐れもあるが何にせよイルハとヘルヒャンがをここに留めても事態は好転しない。
そう結論し、なんとかイルハ達に追いつこうと足腰に力を込めるイチだったが。
「んはぁッ____!____やっ、あっ____ん、くぅぅぅぅぅう!!!」
腰を浮かした途端に凄まじい刺激が背骨を中心に全神経に駆け巡り、イチは溜まらず床に伏してしまった。
「____あっ、あっ、あっ!____ふああああああっっっ!はっ、あっ、ふっ、うあああああああ!!!」
まるで春先の野良猫のように切ないが激しい叫び声をあげるイチ。
床の上で胎児のように丸まり、己の両腕を抱いて自分を守るようにして震えている。
「____ふうぅぅん、ふっ、ふっ、うぅぅぅぅぅん……」
イチはたまらず革手袋に包まれた己の親指を思い切り前歯で噛んだ。
そうしなければこの狂わんばかりの妙な衝動に負けてしまいそうだった。
____耐えろ、耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ!!!
イチは痛いくらいに己の指を噛むのだが、破壊的な疼きはとてもではないがその程度では耐えられない。
この時イチが身体に感じていた異常を頭から追っていくと、まず顔中が火照り汗ばみ、口は異様なまでに唾液が分泌され甘い吐息を漏らしている。
うなじの産毛は逆立ち、荒い呼吸に合わせて上下する肩に合わせて筋肉の筋が伸び縮みしている。
胸には痛みさえ感じるようなはち切れそうな膨張感と、耐えがたい痒みのような痺れを感じ、今すぐにでも衣服の中に手を突っ込んでどうにかしたい。
背中は常に不規則な粘りつくような電流が駆け巡り、腹は臍の下を中心に筋肉がドクドクと痙攣している。
更にその下の股間にも描写不能の疼きを感じ、それはもはや焦唇乾舌の口が水を求めてパクパクとするかのような切なさである。
そしてそんな渇きとは裏腹に、ショートパンツの中は汗とそれ以外で冷たさを感じるほどに湿っていた。
太腿からつま先にかけても別の生き物のように震え、足の指は地球から宇宙に吸い込まれぬよう必死にブーツの中で踏ん張っていた。
「あっ、あっ、うっ、ふっ、くっ……………ううううううううう!」
イチは声を抑えようと親指を噛みちぎる勢いで歯に力を込めたが、穴の空いた風船のような情けない声が抑えられない。
____だめだ。だめだ。耐えろ。耐えなきゃ。絶対ダメだ。絶対、耐えなきゃダメだ!
イチの強靭な理性は必死に衝動を抑えようと奮戦しているが、人間は理性と本能が戦う生き物である。
彼女の本能は怒涛の軍勢となって、「服の中に手をつっこめ」「こすれ」「ひっかけ」と鬨の声をあげながら理性の城壁を崩しにかかるのだ。
「あっ……うっ……、うううううううううううう!!!____あああああああああっ!!!」
既にイチは限界に近かった。
彼女の神経を支配する妙な昂りは普通の人間に耐えられる性質のものではない。
何しろ感度3000倍なのだ。
遺跡の中の僅かな空気の揺らぎが素肌を撫でるだけで狂いそうになってしまう。
____こんな時、こんな時、リャ、リャンならッ____どう、しただろう……。
イチは思わず全てを諦めてしまいそうな衝動の中、彼女の師匠であるリャン・ハックマンの言葉を思い出していた。
記憶の中のリャンが葉巻を吸いながら言う____、「あん?妙な毒を喰らった時の対処だ?私がそんな毒を喰らうわけがねーだろ。はっ倒すぞ!」と。
____だ、だめだ!まったく参考にならない!!!
因みにリャン・ハックマンの事で付け加えると、彼女は妙な毒を受け異常な疼きを感じていても普段と変わらず行動できる異常者だったのでやはり参考にはできないだろう。
「はっ、あうっ、んっ、あっ……………んああああああああああ!!!」
____こ、こんなに、こんなんなら、もう、いっそ………。
イチは遂に衝動に負けはじめ、自己正当化をし始めた。
つまるところいっそ衝動に身を任せてしまったほうが回復が早いではないだろうかという考えだが、その考えになんの根拠もない。
むしろ理性では一度服の中に指を突っ込んだらもうお終いだという事はわかっていたのだが、その理性が衝動に負けて狂ってしまっている。
____す、少しだけ、少し触るだけ…………。
遂にイチが感度3000倍の衝動に陥落し、己を慰めようと親指を噛み締めていた口を開いた瞬間、
「きゃああああああああ!」
イルハの悲鳴が聞こえたかと思えば、ヘルヒャンの「てめえ!」という怒号、そしてパン、パンという乾いた銃声が一瞬遅れて聞こえてきた。
二人に何かあったらしい。
____イルハ!ヘルヒャン!
二人の叫びが蜜唇天達(※1)の沼に自ら足を踏み入れようとしていたイチの正気を一瞬取り戻した。
しかし、仲間の元に走ろうと身体を起こした瞬間。
「____くああああああああああああああっっっっっ!!!」
イチは身体を弓形に反らしたかと思うと、再び床に沈んでしまった。
3000倍の感度は彼女の身体を支配し、自由な身動きを許さない。
もはや身体を動かすだけでイチは軽く限界に達してしまっている。
____イルハとヘルヒャンに何かあったに違いない!違いッ____ないのに、か、身体が……!
イチは身体を震わせ喘いだ。
その身体の震えは何も妙な刺激のためだけではない。
仲間の危機に駆けつけなければならないのに、身体を自由に動かせない自分が悔しいのだろう。
____ちくしょう、ちくしょう____こんッッッ、なッ、情けない……!
もしヘンナーが奇策を用いてイルハとヘルヒャンを襲ったのなら、イチが動けなければ3人はヘンナーに逆に捕らえられ、恐らくは人体実験の材料にされて一生を終えるだろう。
その未来がわかっているのに、イチの身体は甘く抜け出せない刺激に支配されて力が入らない。
力が入らないのならばこの場でうずくまっているしかない。
そうなればやがてヘンナーが戻って来て、いよいよイチを無力化するだろう。
イチは歯を食いしばった。そして獣のような息を吐いた。
悔しさと無力感に震えているのだろうか?
残念な事だがイチの冒険はこんな情けない形で終わってしまうのだろうか。
違う。
その程度の人物であればこの小説に取り上げるに値しない。
イチはバルティゴの歴史の片隅ではあるが、その名を残すべき不屈の冒険者なのだ。
____身体の………こんなッ、疼き…………衝動なんてッ………こうすればッッッッ!
イチは腰のガンベルトにいつもぶら下げているナイフを取り出し、その柄を強く握った。
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(※1)蜜唇天達
バルティゴ連邦から西の洛陽海を越えた先の大日国で生まれた言葉。
酷く淫らで何度も限界を迎える様を表す。
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小説も、読者様と物語のコミュニケーションですからね。
1話完結なのでイチ達のこんな姿が見たいなどの要望などもあれば是非!




