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RiO  作者: 山野佐月
8/11

『リオ、出発する』その③

 


 緑茶が爆発した。

 上から!緑茶が落ちてきて!爆発した!


「シ……【シェヘラザード】!」


 私は自分の体を修復すると同時に、辺りにロケットパンチを数発ぶっ飛ばす(さっきから変な文章だ)。


 シェヘラザードの拳は天井にぶつかると蔓になり、緑茶を運んできたラジコンだかドローンだかを捕まえるネットに変わる!


「マユ!」

「り……リオ様」


 そのうちに、マユを治療する。

 彼女は辛そうな顔をしている。


「すみません……私が弱いばっかりに……!」

「私がお前に『強さ』をいつ求めた!マユ!お前はメイドだ!家事ができればそれでいい!」


「しかし何か役に……!」

「じゃあ、さっきの穴から外に出て、玄関を見張っていてくれ!……私が、爆弾を運んでくる奴を逃してしまった時のために!」


「……わ、分かりました……!殺します!」

「殺さんでいい!」


 顔色が悪かった……トラウマでもあるのか?


 でも正直、マユの強さに関係なく、この状況、2人では戦いにくい……空調以上に、お互いの出す音が邪魔になって相手を見つけられなくなるのだ。


 マユは駆けて行った。

 そして、飛行物体は私の蔓にかからなかった。


 私はまた構える。

 どっちだ?どっちから来る……?どこからでも来い……次に爆発するのはそっちの方だ飛行物体!


「…………」


 その時だった。

 大胆にも……それは、私の前に姿を現した。

『小鳥』のような大きさの、ドローン。


「……何てこった」


 では一つ想像してほしい……小鳥が、みりんや、飲むヨーグルトを持ち上げて運べるだろうか?

 無理だろう……普通に考えれば。


 でもあのドローンは実際に『麺つゆ』を持ってきたのだから、もう考えても仕方ない。


「……来いっ!」


 ドローンは麺つゆを放り投げた────

 ───ロケットパンチで殴り飛ばす。


『ドローン』の方を。 (麺つゆは胸に当たってちょっと痛かったが、爆発しなかった)


 ドローンを捕獲、そして叩き割ると、中には油が……分かりやすい罠でした、看破してめでたし……などと言っている場合ではない。


 私はスーパー内の監視カメラの一つに、ドローンの残骸を放り投げた。すると爆発し、カメラも破壊される。


 さて行くか……今、視界を奪われた、ドローンの操縦者の元に……つまり、監視カメラの管制室に。

 犯人は恐らくそこにいる。

 

 私たちに見つからず、食品棚に物を置くのは、ドローンのカメラ一つでは不可能だろうから。


 ……しかし、私はスーパーを出て思った。

 管制室ってどこだ?……どっちだ?

 分からない……



 その時だった。

「て、てめえ!今度こそ!」


 銃を手にした、どこかで見た男が現れた……



「お、さっきのやつじゃん!」

「へ⁉︎」


 さっき最後に喋ってた男、戦いに緊張感が無かったからか、拘束が甘く、脱出できたらしい。

 ぶん殴って案内させよう。


「待て待て待て!……お前いいのか!」

「何がよ」

「俺らに謝罪しなくていいのかってんだよ!……今、全ての部署へ連絡した……ひひっ、正野まさのさんはオメエを許さねえぞ!」

「誰?聞いたことないけど……」


「てめえ知らねえのか!ここら一帯を統治してるヤクザの王だよ!園村そのむら正野まさのさんだ!」

「……王?」


「ああ!あの人こそが王者さ!……あの人に敵とみなされて、生き残った奴はいねえ!」

「随分物騒な王様だな」


「そうとも……それでいて血なまぐさい!」

「いいから案内しろ!ぶち殺すぞ」


「だーまーれーー!!!今すぐ土下座して俺に詫びんかいーー!!そうすりゃ勘違いでしたで済ませてやる!!正野さんも敵にせずに済むぞーー!!!!」

「……」


 また彼は銃を向けていた。

 今度こそ安全装置が外れている。


「……はぁ」

「どおおおおおおおしたぁああああ!!今度こそ、タマはちゃんと飛ぶんだぞ!!!泣いて詫びろ!!!」


「……お前は私が、安全装置があったからデコに銃口を当てさせたとでも思っているのか?」

「……は?」


 私はまた近づいて、額に銃口を当てた。

 決死の覚悟で来た彼も、さすがに困惑する。


「は⁉︎……てててててめえ何してやがる……!」

「引き金を引けよ」

「ひ、引いたら死ぬぞ!分かってんのか⁉︎」


「死なない。」

「え……」

「私は今、お前を敵にしているが……しかし、お前も将来は、私が統治する民の1人だ。そして私は王だ」


「ほ、本当に頭がおかしいのか……!!!」

「そんな……どれだけ経っても『民草の1人』に過ぎないお前に、私は殺されないよ」


 我ながら頭がおかしいが、しかし変な確信がある。

 私はここで死なない。絶対に。

 なんなら、彼が引き金を引いても、みりんが飛んできて後頭部で爆発しても死なない。


 その確信がある。


「も、もう一度言うからな……」

「引き金を引けば死ぬって?」

「!」

「それは信用してるよ……お前は拘束を解いた後、念入りに準備しただろうからな……『弾丸はちゃんと入っているのか?』『安全装置は解除したか?』『埃が詰まってないか?』『撃鉄は引いたか?』……」


「……⁉︎」

「銃はたしかに正常に働くだろう。だが私は死なない……君が引き金を引いても、何らかの理由で助かるだろう。白馬の王子様が駆けつけてくれるかもな」


「……じゃ、じゃあ引いてやるよ」

「おう」

「本当に良いんだな⁉︎」

「そうだ……証明してやる。そのマサノとかいう……『街を支配したぐらいでイキってるみみっちい子供ヤクザ』よりも、私の方が王者に相応しいとな!」


「!!!!……こ、殺してやる!」


 彼は引き金を引────────

 ────彼の意識はそこで途切れた。


「全く馬鹿なんじゃないのか?……それとも女だから舐められたのか?……何にしろ、こんな『至近距離』まで敵を近づけさせるだなんて……」


 この距離なら、彼が引き金を引くより早く、彼の銃を『蔓の腕』で叩き落とせる……

 ……そして、本物の腕で顔面を殴ることも。


「奇跡に頼るまでもない」


 さて、管制室を探そう。

 案内役は気絶してしまったし、どうやって見つけ出すか……我ながら誇らしい、世界一の頭脳を使って推理してみよう……


 そもそも監視カメラというのは何の為にあるのか?……もちろん、そこで何が起きているかを知るためだ。


 危機が起きた時、状況を理解できれば、被害を防げる。……だから、見た上で指示をしなくてはならない人物の使う管制室は、少しでも安全な場所にあるはずだ。


 このモールの監視カメラは二種類。

 それぞれのエリアにもともとあったらしいカメラと、後から取り付けられたカメラ……


 恐らくドローンを飛ばすために増設したのだろう。それなりの技術力はあるようだ……


 さて、しかしモール中にある監視カメラなら、その管制室は『最上階』以外には考えられない……。



 ということはない。


 何故なら、彼らは恐らく一階に住んでいるからだ。後からつけられた監視カメラは、管制室を一階に作った可能性が高い。


 だって、この薄暗いモールで、わざわざ4階にまで上がって行くなんて、不気味だろう。ありえない。


 まあ暗いと言っても天窓はあるが……そもそも4階に行こうという気にはならないだろう。推測だが……


 それに食料の見張りもある。


「……」


 私は駆け出した。

 ……では、どこに管制室は作られたのか?……元からテレビのある場所がいいだろう。


 ……いや、そうとも限らないか。

 元から『コンセント』があった方が良い。


「……私なら……」


 私は、コンピュータ売り場に来た。

 推測が正しければ、ここに、爆弾を運んできた犯人がいるはずだ……


 と、その時だった。

 周りの照明の蛍光灯が、一気についた!


「ぐっ⁉︎」


 今までずっと暗い中を走ってきたので、目が明るさに慣れていない……これが戦略だとしたら、少々頭が切れる奴を敵にしたようだな……!


 私の目が少し慣れてくると、前方から、いくつものドローンが飛んでくるのが見えた。


「……」

 その全てがサラダ油を持っている。

 爆発すれば確実に火災になるだろう。


「……やれやれ!なんてことをするんだ……」


 だがこれで……『敵』の、


 いや!『お前』の位置は分かったぞ……!

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