↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RiO  作者: 山野佐月
PR
2/11

『天坂理音という人間』その②

 


「い……いやだよ!」


 彼女は強く拒絶した。

「!」

「何のことか分からないし、私は……私だって、幸せになりたいよ!……変なこと言わないで、お父さん!」



「…………!……『違った』のか……?」


 父親の言ったことの意味を知るのは、その随分あとになる……ともかく、この会話が原因で、なんとなく、父親と心の距離を置いてしまった彼女は、


 帰ってすぐに勉強机に座るようになり、

 かつてのように勉強を始めた……


 すると、半年が経った頃、

 宿題や自主勉強をしても『30分』しか時間を使わなくなったので、父親の本棚から拝借してきた色んなジャンルの『本』を読むようになった。


 さらに半年が経った頃、

 宿題と、量を増やした自主勉強、それに一冊200ページほどの本を読んでも30分しか経たなくなったので、

 彼女は生活リズムを変えた。


 さらに半年が経ったら、

 学校から家に帰る前に近所の図書館に行き、宿題、自主勉強を終え、3冊の本を読んでから帰るようにした。

 因みに図書館で、5冊ほどを借りて……


 さらに半年が経った。

 彼女は、父親との関係が少しだけ悪化してから2年間の間で、とんでもない頭脳を手にしていた。

 その頃には1日に10冊の本を読んでいた。


 この時点でまだ10歳……

 ここから更にあと6年の研鑽、そして異常性を積んで、彼女は世界一の頭脳を持つことになる。


 そして高校に入学……

 勉強はもはややりがいを感じないが、青春を楽しんでいた彼女だった。

 そして夜には様々な分野の開発に取り組む。

 そんな生活を送っていた……


「で……できた!吃音……これで治る……多分……」


 はてさて、ここまで彼女の過去を追ってきたが、現在に至ったのだ、そろそろナレーションも必要が無くなる頃であろう。


 ……と、思っている人もいるかもしれないが、それはもうすこし後。今の彼女にはまだ、ナレーションが必要なのだ。なにせ、今の彼女は……


「……また証明されてしまった……やっぱり私って……ううん、そんなはずない。『素質』なんて……」


 Sadist(いじめる)なんて。

 Devote(捧げる)なんて。

 そんなことは自分には関係ないと……これほど異常な頭脳を持った彼女でさえも、証明できなかった。


 逆に、素質が証明されていく……

 彼女はこの吃音の治療法……正確には治療薬の研究のなめに、自分で人体実験を繰り返していたりしたのだ。


 まさにサディスト。そしてディヴォート。

 彼女は認めたくない…………


「……まあいいや」

 やはり、5年前の父親の発言が引っかかっているから、こういった研究のことはあまり話したくない。


 しかし彼女は、頑張ったことを黙っているのもそれはそれで嫌なので、毎回それとなーく伝えているのだ。


 お父さん、あれあれこれこれがね、

 と言うと、

 まさか研究が上手くいったのか?

 と返ってくる。

 そこで声を出さずに静かに肯定すると、

 父親は静かに微笑んで、目線で褒めてくる。


 目線に何の意味があるのか。

 それは考えたくない……


「おお、またこれで多くの人を救えるなぁ」

「うん……」


 9月11日の、23時45分。

 相変わらず自室で小説を書いている父親に、報告をしにいった。

 今ではそこを、書き部屋と彼女は呼んでいる。

 大量の本と、少し高価な机……それだけの部屋。


 その日の父親は珍しく喋った。


「ガン治療の研究も進んでいると言っていたな。お前は自慢の娘だ……本当に」

「どうしたの?……お父さん。ははは」

「……物書きには時々、未来が見えることがある?」

「え?」


 父親は変なことを言い出した。

 急に立ち上がって、彼女を強く見つめて。


「……な、何……?」

「現実の世界は……小説の題材になる。それは何故か……理由は沢山あるが、私は伏線があるからだと思う……物書きだけが、異変に気づける……未来予知だ」

「……⁉︎」


 父親が訳の分からないことを、また言い出した。彼女にとってそれは恐怖であった。


「リオ……理音。お前は自由だ。ずっとずっと、閉じ込められていたけれど……」

「閉じ込める……?まさか、お母さんとの離婚の話⁉︎……私は、別に、お父さんもお母さんも、何を……恨んでもないし、ずっと自由だったよ!」


「違う……お前はもう、ディヴォートからも、サディストからも解放されるんだ……」

「‼︎」


 彼女が一番気にしているワードに、

 彼女はすくむ。そして父親に肩を掴まれる。


「……すまない。私の頭はおかしくなってしまったのかな……変なことを言っているのは自分でも分かっているんだ……でも、これだけは分かってくれ」

「な、なに?」

「私はお前に幸せになってほしい」

「……!」


 その言葉を聞いて、彼女はうなづき、

 父親は何もなかったかのように作業に戻った。


「……あまり夜更かししちゃダメだよ?」

「夜明けだ」

「?」

「あと少しで夜明けが訪れる……」

「お父さん何言ってるの。まだ真夜中だよ」

「そうだな。……『まだ』……」

「……」

「お前は幸せになれる」

「……そうかもね。……おやすみ」

「おやすみ」


 そして……9/12 00:00:00……

 大事件が起きたことを彼女は知らない。


『幸せになってほしい』。

 その言葉が頭の中で循環して……何やら様子がおかしかったけれど、幸せな気分になって、眠っていたからだ。


 そして翌朝。

 7時に起床して、顔を洗い、うがいをして、ラジオ体操をして目が覚めたところで、その静けさに気付いた。


「……お父さん?」


 最初は。

 最初は、彼女は父親がどこかへ行ったのかと思った……ゴミ出しとか、もしくは平日だけど町内清掃があるのかと思った…………


 だがしかし、事はそう単純でないということに気付いた。色んな異変が起きていたのだ。


 テレビをつけた。

 だけど、何も映らない……何故?

 国営放送すらも……このテレビが壊れたのか?


 住宅地とはいえ、外から音が聞こえない。

 道路を通る車が無いのか?


 外に出てみたが、やけに静かだ。

 その辺の家に近づけば、家庭の音が聞こえてくるはずなのに……みんなで寝坊したのか?


 彼女の頭に疑問が現れまくる……

 だがしかし、彼女の頭脳を持ってしても、謎は解けない。一体何が起こったのか⁉︎


 まさかゾンピパニックが起きたのか⁉︎

 そう、彼女は思った。

 冗談ではない……それぐらい、彼女でさえも、全く説明できず、奇妙な現象だった。


 だがしかし、説明は出来なくても、何が起こったのかは予想できた。

 この賢い、秀才な彼女だけでない。

 この町の、県の、全国の、全世界の子供たちはその現象を理解していた……何故、こんなにも静かなのか?





 大人がいなくなったんだ!!!!!!





 ──────

 昨日の父親の発言など、どこかへ吹っ飛んでしまった彼女は、とりあえず学校へ向かった。


 およそ600メートルの通学路。

 歩いている間、彼女は頭をフル回転させて謎の解明に取り組んだが……結論は出なかった。


 それでも候補に上がった予想は次の四つ……


 ・町全体でドッキリをしている

(うちの父親がそんなのに参加するわけがない)


 ・実は地震があってみんな逃げた

(見る限り町はどうともない)


 ・ウイルスや放射能があって逃げた

(起こしてくれるはず)


 ・私がよっぽど起きなくて父は諦めた

(なら私の体はこんなに元気なはずがない……)


 全部違うだろうなと、彼女は理解した。

 そして……彼女が学校の校門に来た時、何やら大勢の人間が集まっていた……どうやら、門が開いておらず、中に入れないようだった。


 彼女は質問責めにあった。

 やはり『異変』は皆感じ取っていたようで、既に集まっていた生徒たちの中で出た結論は……


『大人はみんな異世界に転生した』


 であった。

 彼女はそれに対してどう答えたのか……?



「割とそうかもしれない……」



 その一言に、世界一の頭脳が焦っていることが見受けられるその一言に、生徒たちは絶望に打ちひしがれた。


 テレビもラジオも通じない。

 状況が全く分からない。


 さて、しかし彼女には、

 世界一の頭脳を持つ身として、ここにいる大人数に対してリーダーシップを発揮して、今後の指示を下す必要があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。