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RiO  作者: 山野佐月
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『リオ、出発する』その⑤




「お、俺に手を出せば、正野さんが……」

「園村正野……ヤクザだろ?」

「そうだ!正野さんが黙ってないぞ!」

「私が黙らせる」

「……!」


 私は少しずつ彼に近づいていく。

 ……彼は腰をついて後ずさりしているが……何か妙だ。彼の今の行動、ただ恐怖しているだけではなく、何か意思を感じた……


「……まだ爆撃があるのか?」

「…………」


 彼が後ずさりして入っていったのは、ゲームセンターだった。特にクレーンの奴とメダルの奴が多い。

 ここに何か秘密が……?


「……て!天坂理音……」

「そうだ。私はリオだ。それがなんだ?」

「お前はよ……心のどこかで、自分は絶対に勝てると思ってるだろ……?」

「……」


 まあその節はあるかもしれない。

 完全に否定はできないな……


「それが命取りになるんだ!……お前、どうしてあの食料品売り場に警備がついてないか知ってるか……?」

「……!」


 そういえばその謎はまだ解けていなかった。

 あの大穴のことも……


「あれは……俺の判断次第で全てを吹き飛ばせるからだ!俺が見間違えれば仲間も確実に死ぬから……仲間も近づかねえ……!」

「!」


 その時だった……彼はいつのまにやら、スイッチを持っていた。勢いよく押すと、天井が開く……


 そして落ちてきたのは10個ほどの手榴弾だった。


「かかったな!このアマ!それは既に発動している!いくらお前でもその数は弾ききれねえだろォオ!!!」


「……『弾く』」


 今、私にある武力は……

 このシェヘラザードの腕……二本。


 じゃあそれでなんとかするしかない。腕を増やしている暇も無いだろう。それにもう考えている暇もない。


 殴る。殴って、手榴弾はあいつにお返ししてやる。

 そして、二本の腕だからと言って、2回しか殴れないわけではない。


『連打』すればいい。

 私は蔓の拳を構えた。


「終わったなぁあああ!そしてこの爆撃はさすがに回復できねえだろおおおおあお!!」

「何を勘違いしているのかは知らないが……回復に限度は無いぞ」


「……へ⁉︎」


 当たり前だ。シェヘラザードはそう作ってある。

 量産して世界中に植えるのがそもそも製作目的なのだ。まあ制限はあるが……空気と日光さえあれば、シェヘラザードはそこから栄養を作って育つ。


「もっとも、私がその爆弾を食らうことは決して無いがな……じゃあな!……必殺……!」

「えっ……ちょっと……待て待て待て待て!!!」


「【アラビアン・グレネード】!!!」


 そして……

 手榴弾は全て彼が受けるものとなった。

 ゲームセンターは、木っ端微塵に吹き飛んだ。


「征ッ服ッ!!!!!!」




 ───


(一応、彼は治療してあげて、)


 玄関先にまでマユを迎えに行った。


「リオ様!」

「片付いたぞ……中々苦戦した」

「お疲れ様でした………」


 マユは目を見開いていた。

 それもそうだ……私の服装はまるっきり変わっている。さっきまで、性格に似合わない清楚な服を着ていたのに、それがチャラくなったのだから……


「……なあマユ。驚くのは分かるが、私的にはまだまだ足りないんだ。この格好………」

「え……露出がですか?」

「言ってない」


 私はマユに、モールの中を見て回らないかと提案した。食料だけではなく、他にも必要なものは沢山ある。


「あああ……こういう感じだ!」

「り、リオ様……」


 短パンジーンズの後ろポケットに、訳もなく安全ピンを刺しまくる……これにはちゃんとした理由があって、私が好きだからだ。


 念願のチェーンも……ああ……

 訳もなくチェーンを付けるのが夢だった。


「リオ様は中二病というかチンピラ精神というか……まあ、もうファッションなんて個人の自由ですけど」

「そうだぞ!!……缶バッジも欲しい!」

「缶バッジ……?……」


 でもその前に布屋さんに行った。

 マユはそこから、黒と白の布のロール一巻きずつと、ミシンを一台拝借していった。


「お……」


 私はその間、その向かいの雑貨屋を見ていた。

 ピアスが……ピアスは付けない。


 しかしその横にあったネックレスがいい感じで……んん?……こっちは……これって……


「チョーカー!真っ黒だ!カッコいい!」

「なんか犬っぽいですよ」


「うるさい!王のファッションに口出しするな!……よし、チョーカーも貰っていこう」


 一応、盗んでるんですからね、と、マユに釘を刺されたが、私に都合の悪いことは聞こえなかった。


「……さて。缶バッジだ缶バッジ」

「それ、何なんですか」

「缶バッジだよ!!ローマ字で名前のR、I、O、ってなるようにそれぞれ缶バッジをシャツに付けるんだよ!」


「……?」


 やはり生まれた時からメイド服の女。

 私の終末ファッションは理解できないか。


「さすがに生まれてきた時は毛布でした」

「あのなぁ……私は世界一の頭脳を持ってるんだ。つまり業界の人間にとっては有名人だぞ?」


「……なるほど。RIOという缶バッジがあれば、本人確認ができる……見過ごされることが無くなるのですね」

「そういうことだ」


『リオ様にしては言い訳が合理的ですね』という声が聞こえる……だがしかし合理的だから。問題ない。


「ん?……これは……あれあれ?」

「どういたしまして」

「それを言うなら『どういたしましたか』だろ……いやこれ、缶バッジのコーナーはあったんだけど、R、Oはあるのに、Iが無いんだ」


 あるのは小文字のiだけ。


「……まあいいんじゃないですかね。小文字の方が分かりやすいでしょう。大文字ならリリィオって読まれるかもしれません」

「うーん。」


 それは無いだろうが……

『RiO』。何となくバランスが悪い気がするが……まあいいだろう。これはこれで……


 戦利品はこうだ。

 ・安全ピン

 ・チェーン

 ・チョーカー

 ・RiOの缶バッジ


「あれですね。髪と眼が青くなってるのも相まって、ほんとチャラいですね。根は真面目なのに」

「いいんだ!これが王のファッション!!!!」


 そして、後はQueenの文字を消さなくては。

 私は大型書店にあったマーカーでバッテンして、その上の方にKINGと太く書き記した。


 気づけば、二階の一番端まで来ていた。

 私たち2人は無言で外を見つめていた。


「……マユ。私は世界を征服するぞ」

「では、私はリオ様のツッコミ役をしますね」


 なんだか締まらないなぁ。


「ああそういえばリオ様、一つ思ったのですが」

「ん?」

「今、冬ですけど……寒くないんですか?」


 そこから、地獄のコート探しが始まった。

 そういえば……寒かった。


「寒いぃいいい!いや……王は寒がらない!」

「王はやせ我慢しないと思います」


 しかし……大人が消えて以来商品が入れ替わっていないから、果たして冬物が置いてあるのか……⁉︎


「てかマユ……お前は寒くないのか?」

「鍛え方が違いますし、このメイド服は、夏は涼しく冬は暖かくなる仕様なのです」


 そんな都合のいい服があるのか?

 衣服業界ってそこまで発展してたっけ?


「……あ!あった!」


 婦人服売り場。

 年中吊るしてあるのか……コートが見つかった。

 ん?……いやでも、なんか薄い……?


「それは……商品じゃないようですね」

「何だと……」

「婦人服ならもっと分厚いはずです。それは従業員だった人のものではないでしょうか」

「……まあいい。私が貰おう」


 そうして、寒さ問題は解決した。

 私たちはその後、戦利品を持って家に帰った。


 荷造りをし、出かける準備をする。

 ……が、遠出をする前に、寄るところがある。


「車動くかな……」

「リオ様、それにしても……もう少し具体的に、その……シェヘラザードの研究に携わったとかいう青年の話とか、しませんかね」


「そういうのは後々で……まずは西高に行く」

「……リオ様の出身校ですか?」

「ああ」


 何か嫌な予感がする。

 少なくともヤクザが絡んでいるのは間違いない。


「何かあったら大変だろ」

「まあそうですね」


 私たちは、とりあえず荷物は家に置いて、車を動かして西高に向かった。


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