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14.一部が召喚されたら、残りは?

 リディの話は続く。


「前にも話したけれど、聖女が聖獣を呼ぶわけじゃないの。聖獣の気に入った子が、聖女になるのよ。すでに私達3人が契約したサラちゃんを凌ぐ聖女はいないわ」


 この世界に聖獣は4人。残る一人は趣味で国を運営しているとか。趣味っていったい……関わらないと思うからいいけど。


 私が聖女に確定したとして、幼女でいいのかな。絵的にこうグラマラス美女か清楚系美少女じゃないと、似合わない気がする。


「あら、サラちゃんなら清楚系愛らし幼女でいけるわ」


「あ、うん……ありがと」


 鏡で見た範囲で、今の外見ならイケるかも? 前の地味な姿じゃ無理だよね。私は知らない言葉だけど、愛らし幼女って造語だったりして。


「ねえ、私、どうして顔や色が変わったんだろう」


 昔の小さな私が召喚されるなら、対価が足りなかったで納得できる。でも色が違うんだよ。日本人だから銀髪じゃないし、青い目も違う。昔の写真を知ってるけど、こんな可愛くなかった。


「そうね。補った人がいたから……かしら」


 リディは苦笑いした。そもそも召喚用に用意された対価の魔力は、幼女だとしても足りないらしい。術式だけは合っているので、異世界からの召喚自体は成功した。このままでは赤子以下で召喚されてしまう。さすがに胎児では死ぬと懸念した人が、魔力を足してくれたのだ。


 その人の影響だろうと聞いて、感謝しておく。名前も知らない誰かさん、五体満足で可愛く呼び寄せてくれてありがとうございました。お陰様でリディ達と合流して、何とか……ん?


「リディとアランがあの街にいたのは」


「ええ。召喚が行われる気配を察したの。それと……呼ばれた気がして」


 そっか。数日前から胸騒ぎがして、住処の街サルビアから移動したのね。話を整理して飲み込んでいく。


 ここで重要なことを聞いておかないといけない。緊張しながら口を開いた。


「あの……この世界から、前にいた世界に戻れる?」


 戻れるなら方法が知りたい。不足している物があれば集めないといけないし、戻れないなら覚悟を決めないと。


「異世界から来たら戻れないわ。この世界は神が造った大きな箱で、入れることは出来ても何も捨てられない」


 一方通行……浮かんだ単語に、思ったより絶望しなかった。何となく、そんな気はしていたんだ。だって戻せるなら、召喚した国の人も返すと思う。面倒が増えるだけだもの。それが召喚した私を城の外に捨てるだけなんて、戻せないと言ってるようなものだった。


 分かってたけど、はっきり示されると辛いな。リディの手が、肩から頭に移動した。温かな手は撫でるのではなく、ただ優しく触れるだけ。


 もう家族に会えないし、友人とも遊べない。読みかけで続きが気になる小説や漫画も諦めるしかないし、お気に入りのタレントのコンサートも無理だった。こんなことなら死亡保険金が高い生命保険に入ればよか……。


「そういえば、私の一部が召喚されたなら……残りは?」


 前の世界で頭がもげた死体になってるとか? または腹に大きな穴が開いてワイドショーで騒がれたりしてない? やだ、そんな終わり方ってないわ。じわりと浮かんだ涙は、惨殺死体になったと思われる自分への同情だった。

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