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30cmマグナムの生涯!  作者: 猪子馬七
第3章 ダンとパイア
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第45話 一網打尽



 エクレア王国にある冒険者ギルド。そこに次々と情報が寄せられてくる。その情報をまとめ上げ、冒険者ギルドを総括する本部へと、書類を提出しなければならないのだ。


 仕事が一段落つき、ギルドマスターのルドーがお茶をすする。


「ふう…さて、こんなところか?」


 まとめ上げた資料によると、エクレア王国とババロア王国との国境沿いに新しいダンジョンが出現。

 その謎のダンジョンは普通のダンジョンではあり得ない、ダンジョン外への攻撃を行った。

 入り口付近にいた捜索隊の隊長ヒズは火計を受け、そのままダンジョン内へと引き摺り込まれた。

 常識では考えられない動きを見せるダンジョン。新種の迷宮族か、もしくは他の魔族との共闘か?どちらの可能性もある為、予断を許さない。


 更に王宮に火を放ち、実父であるダブツ王を焼死させて国際指名手配されたパイア元王女。その逃亡先が、(くだん)のダンジョンの可能性が高い。

 王宮に関わる者の証言によると、パイア元王女は魔族関連の書物を読み漁り、魔族に傾倒していたそうだ。

 国王殺害事件。そして魔族の暗躍の可能性。今のエクレア王国は、異常事態と言っていい。


 …改めて書類を読み直すと、本当に異常だ。ギルドマスターのルドーとしては、頭の痛くなるような案件。しかし、少しだけ救いがあった。


「これだけの大事件であっても、ギルドは参加しなくていい。それが唯一の救いだな…」


 三ヶ月前に起きた新人冒険者大量殺人によって、王国からの依頼を一年間受理しないことになったギルド。そのペナルティが、結果としてギルドにプラスと働いたのだ。

 そう、ペナルティによってギルドは、今回の事件への関与を拒否することが可能となったのだ。

 人類の脅威ともなり得るダンジョン。そこに冒険者を突入させるには、無駄死にの可能性だってある。ギルドの長として、それだけは避けたい。


 エクレア王国の女王であるナームから、再三の出動要請も拒否できている。

 ヒズが引き摺り込まれてから、その後も馬鹿みたいに突入を繰り返しているエクレア王国。パイア元王女が生きていた場合、何かと不都合があるからだろう。

 だが、そんな王宮の事情など、ギルドには関係無い。


「まあ、これならあと九ヶ月は平穏だな…」


 と、ルドーがフラグを立てると案の定、不都合な事案が舞い込んで来た。


「あの、モンガラ教国から書簡が届いてます」


 副ギルドマスターのクギーが書簡を持ってやって来た。モンガラ教国の封蝋が押された、本物の書簡だ。


「モンガラ教国からの書簡?ああ、ひょっとして海賊島の討伐に関する話か?」


 聖百合(ヴァージン)騎士団による海賊島の殲滅作戦。それはルドーも知っていた。しかし、書簡を読み上げると、みるみる青ざめた顔をなる。


「…一体、何の恨みがあるんだ?何故、こうも次から次へと問題が舞い込むんだよ…」


 そうぼやくルドーだったが、確かに書簡の内容は大問題であった。



 教皇の孫であるソウメイ・モンガラがエクレア王国にて行方不明となり、その捜索が開始されたのだ。

 ソウメイは庶民の暮らしを知る為に、新人冒険者に紛れて生活していたそうだ。

 危険がないように、安全な仕事のみを選んでいたそうだが…新人冒険者大量殺人の被害者に、ソウメイの名があった事をルドーは思い出した。


 教皇の孫を知らぬとは言え、危険な仕事に就かせて見殺しにしてしまった。更に、その妹が捜索隊のリーダーとしてやって来る。


 モンガラ教国を敵に回しては、ギルドの職員全員の首が飛ぶ事もあり得る。勿論、それは職員を辞するという意味だけでは無く、物理的に首が飛ぶ事でもある。


 次から次へと舞い込むトラブルに、流石のギルドマスターのルドーも頭を抱え込むのであった…。







『はい、今日もご馳走様でした〜』


 ヒズを殺してから数日後。その日もダンは美味しく侵入者を捕食した。

 最初のうちは侵入に躊躇いがあったようだが、パイの身柄確保の為か、エクレア王国の兵は毎日ダンジョンへの侵入を試みた。


 新しく捜索隊の隊長に任命された男は、ダンジョンの入り口からかなり離れたところから指示を出していた。ヒズと同じ、自分の保身を何よりも考える男なのだろう。

 侵入を試みる部下は、長めのロープを体に縛り付けてダンジョンへ。とても怯えているので、可哀想だとは思いながらもダンは捕食に踏み切る。


 ダンジョン外でロープを支えている複数人の兵。それが途端に後ろへと倒れ込む。

 命綱であるロープの先を確認すると、侵入した兵はおらず、ロープの先端が鋭利なる刃物で切り裂かれていた。ダンが鎌の罠を発動したからだ。


 続いては、長めの鎖を使っての侵入。ロープの時と同じ様に、一人の兵が体に鎖を巻き付けて、それを複数人の兵が支えながらダンジョンに侵入。

 ゆっくりと縦穴を降りる兵であったが、すぐに異変に気が付いた。命綱である鎖に、スライムがこびり付いているのだ。しかも、ただのスライムではない。スライムの上位種にあたる、アシッドスライム。酸で敵を溶かす、厄介なモンスターだ。


 鎖を溶かされる。そう気が付いた兵が命綱を急いで引き上げる様に叫ぶが、時すでに遅し。ダンによってカスタムされたアシッドスライムの溶解速度は、異常なまでに速い。

 一瞬にして溶かされた鎖が、命綱の役割を果たす事はなかった。叫び声を上げながら落下する兵が地面に叩きつけられると、再びダンに捕食されるのであった。



 翌日は作戦を変えてきた。大勢の兵を使う…そう、人海戦術だ。

 昨日の鎖より、太くて強めの鎖を用意。そして器具を取り付けて、捜索隊の兵士が外れない様にすると、それを50cm間隔で兵士に繋げる。

 つまり、途中でスライムが鎖を溶かそうとしても、攻撃が可能となる為の仕様にしたのだ。


 兵士が一人、また一人とダンジョンへと降りて行く。全員が命綱である太めの鎖で繋がっているのだ。死ぬことはない。そう誰もが思っていた。勿論、それは大きな間違い。ダンにとっては入れ食い状態となるのだから…。



 鎖で繋がった兵士が縦穴の丁度真ん中辺りに差し掛かった頃、縦穴を降りる兵士の数はおよそ25名に達していた。

 そしてそれを地上にて支える兵士の数は50名を超える。全員が鎖と器具によって固定され、絶対に鎖を支える意思が見受けられた。

 それを見て頃合いだと判断したダンは、容赦の無い罠を発動する。それは…巨大な岩石による罠。

 鎖の先頭にいる兵士と、その上にいる兵士。二人の間にある横の壁から、巨大な岩石が登場。そしてゆっくりと縦穴へと転がり出す。


 直径2m近い巨大な岩石。縦穴の直径より若干小さい程度の岩石が、縦穴へと落ちるのだ。それが何を意味するか分かるだろうか?

 逃げ場もなく、鎖に繋がった先頭の兵士を、そのまま落下する岩石が巻き込んで落下。その重さは、地上にて支える50名の兵士に重くのしかかる。


 突如重くなった鎖。それでも50名もの兵士で支えているのだ。何とか踏ん張り、鎖をその場で維持。それを見ていたダンが、無情なる行動に出る。


『…すまねぇ。岩石は一つじゃねぇんだよ。そんなに頑張っても、二個も三個も岩石に巻き込まれたら…無駄な足掻きだよな?』


 そう言ってダンは複数の岩石を追加。そうなると、流石に支えるのは無理がある。

 あまりの重さに鎖は一気に縦穴へと引き摺り込まれ、そして鎖と器具で繋がっている地上の50名も同じ様に引き摺り込まれた。


 多くの兵士が泣き叫ぶ。それでも鎖は止まらない。ジャラジャラと音をたてながら、鎖は大勢の兵士を道連れに、ダンジョンへと吸い込まれて行く。


 全ての鎖がダンジョンへと飲み込まれ、残された兵士達はその場にへたり込む。自分達が相手にしているのは、とんでもない化け物だと…改めて思い知らされたからだ…。







 80名近い兵士を飲み込み、そして生き残っている兵士を容赦無く殺すダン。底に待機していた、複数のアーチャーモンキーが大活躍。

 そして岩石や鎖などと一緒に、全ての死体を飲み込んだ。


『ぃやっほ〜い♪一網打尽!そして目標の1万DPに到達!レベルも10になり、ますます絶好調!』


「怖いくらいに上手く行ってるわね。これだとかなり早い段階で、計画を実行できるんじゃないかしら?」


 喜ぶダンとパイ。それもそうであろう。二人が目標に掲げていた1万DPへの到達により、計画は更なる進展を迎えることになるのだから。

 そう、ここから歩いて半日かかる距離にある王都へ、まさかの襲撃計画を企てている二人なのだから!



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