↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30cmマグナムの生涯!  作者: 猪子馬七
第3章 ダンとパイア
44/98

第43話 謎のダンジョン



 エクレア王国の王宮にて、火災が起きた。その火災の騒ぎに乗じて、門兵を傷付け王都から逃走した人物がいる。パイア・エクレア王女だ。


 必死の捜索も虚しく、王女は姿を消したまま、捜索隊は朝を迎えた。


「いいかぁ!戻ってこない隊員はぁ!この辺りの捜索をしていたはずぅ!つまりぃ!この周辺に王女がいる可能性が高いぃ!お前らぁ!今日中には、何としてでも見つけることぉ!ナーム女王に懲罰されたくなければなぁ!」


 捜索隊の隊長に任命されたエクレア王国第7軍中隊長のヒズは、大声を上げて捜索隊のメンバーに指示を出す。

 小隊長から中隊長へと出世し、初の任務がこのパイア王女の捜索隊の指揮である。更なる出世のチャンスに鼻息も荒い。


「それでは散開!何かあればすぐに笛を鳴らせ!」


 そう言って200名からなる捜索隊をババロア王国の国境付近にて散開させる。

 パイア王女はババロア王国内に逃げ込んでいる可能性もあるので、そちらの方はババロア王国に通達し、軍を派遣してもらっている。つまり、逃げ場はどこにも無い。


 どこに隠れていようとも、絶対に見つけられる。そう確信しているヒズの元に、早速報告が来た。


「ヒズ中隊長!怪しい穴を発見しました!微量の魔力を感じることから、ダンジョンの可能性が高いです!」


「なにっ?ダンジョン?」


 王女発見の報告かと思いきや、まさかのダンジョン発見の報。そこでヒズは思い出した。ギルドからの報告に、複数の魔族が結託している可能性があることを…。


 昨日の捜索隊で帰還してない隊員が、魔族に殺されている可能性。もしくは、ダンジョン内へと捜索して殺された可能性。そのどちらもあり得る事になる。


 そうなると、ただの王女捜索の任務では無くなる。自分が魔族に狙われる可能性も、出てくるからだ。


 己の保身のみに生きるヒズにとって、出世はしたいが危険な事はしたくない。その為、現場には向かわず陣頭指揮を取る事に。


「よし!では昼過ぎまでに捜索隊が何も発見しなければ、そのダンジョンに潜んでいる可能性が高い!捜索隊の半数をダンジョン内の捜索にあてるぞ!」


 そう指示を出すヒズであったが、部下はそのダンジョンが普通のダンジョンではないと説明。

 何が普通じゃないのか要領を得ない為、仕方なくヒズは発見されたダンジョンへと向かうのであった。







「…おい!何だコレは⁉︎」


 発見されたダンジョンに到着したヒズであったが、ダンジョンを見るなり驚きの声を上げる。


 確かに報告の通り、普通のダンジョンでは無い。ダンジョンの入り口から直系2m程の穴が地面にあいているのだ。そう、まるで大きな井戸の様に、底が見えない程の深さの穴が…。


 呆気にとられているヒズに対して、発見した隊員の一人が説明する。


「この通り、微量の魔力を感じることが出来ます。即ち、ダンジョンの可能性が高いと思われます。しかし、この様なダンジョンは見たことが有りません。入り口から井戸の様に穴がポッカリとあいてるなんて…」


 確かに異常だ。何なんだ、コレは?そう思うヒズであったが、中を捜索しない事には始まらない。


「よし、お前!今から中を捜索してこい!」


「ええっ?自分がですか⁉︎」


「当たり前だ!ここの窪みを利用すれば下に降りられるだろうが!」


 ヒズが近くにいた部下に捜索の指示を出す。

 部下にしてみれば、こんな謎に満ちたダンジョンの捜索など、本来であれば拒否したいところ。

 それでも、陰険で名高い上司であるヒズには逆らえない。ヒズに言われるがままに、ダンジョンの捜索を開始するのであった。







 ダンジョンに背を向けながら、手前の内壁にある窪みを利用して、少しづつ降りて行く捜索隊の隊員。その姿をジッと監視する視線に気が付かずに…。



『お、蟻の巣ダンジョン…もとい、ミミズの巣ダンジョンの初の犠牲者が降りて来たぞ』


 ダンジョンコアのあるコアルーム。そこでダンとパイはモニター越しに、ダンジョンの入り口の様子を見ていた。


 偉そうに威張り散らす隊長らしき男に命令され、不満そうにダンジョン内に入ってくる隊員。これがミミズの巣ダンジョンの初の犠牲者となる。


『さて、そろそろいいかな?』


 捜索隊の隊員が深さ20m程降りて来たところ、ダンは用意しておいた罠を発動。壁が飛び出し、目の前の対象者を吹き飛ばす単純な罠だ。


「…え?」


 僅かな窪みを利用して、何とか下へ下へと降りて来た隊員。その途中で突然壁が飛び出し、自分の体を突き飛ばす。


「うわああああっ⁉︎」


 井戸の様に、深い深い穴の中。そこで足場を失えば、あとはもう真っ逆さま。落下する隊員は空中でジタバタと暴れるが、掴まる場所など用意されてる訳がない。


 グシャリ!


 地面に叩きつけられた隊員が、そのまま呻き声を上げながら絶命。

 入り口付近でヒズが何やら叫んでいるが、返事などできる訳がない。絶命した隊員は速攻で、ダンに捕食されているのだから。


『この時間だと昼飯だね。はい、ご馳走様!』


 捕食を終えたダン。そして昼飯にウサギ肉を食べていたパイも、同じ様に肉を完食。


「こちらもご馳走様。しかし、本当に深い穴ね。何mあるのよ?」


『およそ100m。直径は2mで、掴まる場所は小さな窪みだけ。だから降りてる最中に壁が少しでも飛び出してきたら、そのまま落下して床に激突死!』


「…悲惨ね」


『一人じゃなくて複数人落ちてきたら、下敷きになる人がクッションになって、一命をとりとめるかも知れない。だからアーチャーモンキーを底に数匹待機させて、確実に殺して上げます』


「ふーん。徹底してるわね」


『ジョンが言うには【ダンジョンとは人を招き入れて、罠に嵌る魔族】だから、どのダンジョンも入り口は入りやすい構造になってるのが定石だそうで』


「で?その逆に、入り難さに特化した入り口にしたってわけ?」


『そう言うこと!こちらには、敵のお目当てであるパイちゃんがいるからね。わざわざ、入り口を入り易くして上げる義理は無いっての!』


「じゃあ、このコアルームと違って入り口付近が暗いのも、入り難さの演出ってこと?」


『御名答!ここは俺とパイちゃんとの愛の巣だから、光苔をONにして明るくしてるの。入り口も本来なら光苔を設置するところだけど、そんな必要も無し。真っ暗闇の地下100mの縦穴。それを見て突入したがる人はいないでしょ?』


「ダンジョンに詳しい冒険者なら、間違い無く異常を感じて入らないレベルよ、このダンジョンは」


『ふっふっふっ!やはりね!あ、あの隊長らしい男が他の奴に探索させようとしてる…うわっ!抵抗されたら殴って無理矢理…ああ、可哀想に。半ベソかきながら降りて来た。まあ、同情はするけど、こちらも初夜がかかってるんだ。情けはかけられないよ!』


 そう言って先程と同じ様に、壁の罠を発動して侵入者を落下させて絶命。捕食。そしてダンが舌鼓。


『うむ。ご馳走様。あ、すぐに三人目も降りて来た…。あの隊長、本物の馬鹿か?少しは頭を…って、どこかで見たことある顔だな?』


「アイツはヒズよ。エクレア軍で出世願望が強い鼻つまみ者。あんたをここに連れてきた張本人…忘れたの?」


『あああー!そうだ、あの野郎!よくもまあ、ぬけぬけとここまでやって来れたな!』


「気付くのが遅いわよ。それとアイツは何よりも保身を優先するクズだから、ダンジョン内には絶対入って来ないと思うわ」


『なるほど、なるほど…でも、大丈夫!実は運良く、普通のダンジョンでは、あり得ない罠を設置しているのです!まさか33名の仇の為に、この罠を使えるとはね!たった一回だけしか使えないから、二度目は無理だけど…』


「なんとなーく、怪しい場所があるわよね?あの入り口にある、隠し通路みたいなとこ…」


『その通りで!誰もが入り口から下に伸びる縦穴に目が行くけど、実は入り口からすぐ、目の前には5m程の通路が隠蔽魔法によって隠されているのです!そこに隠されているのは…スライム8匹と火矢を装備したアーチャーモンキー1匹。もう、お分かりですね?』


「それで分かったら本当に凄いわよ。で?どんな罠なの?」


『ドロップアイテムで、お酒があるよね?酒宴でも使った。あれをスライムに飲ませて、水分とアルコールの分離が可能なのを発見。で、高濃度のアルコールを製造できるなら…それを使わない手は無いでしょ?』


「とても良いアイディアみたいね。ヒズにしてみれば最悪な展開みたいだけど」


『1匹のスライムに五つの酒樽から抽出した、高濃度アルコールを含ませ、それを8匹配置!入り口付近でアホヅラしながら中を覗き込んでいるヒズと仲間達に向かって…スライム弾、発射!』


 ダンの指示によって高濃度アルコールを含んだスライムが、隠蔽魔法によって隠された通路から飛び出してきた。

 入り口付近にいるヒズに向かって、スライムが襲い掛かる。しかし、ヒズの目前である入り口を通過した瞬間、スライムは消滅。

 ダンジョンモンスターはダンジョン外では生きられない、その制約によって消滅したのだ。


 しかし、ドロップアイテムの酒樽から抽出された高濃度アルコールは別。スライムが消えても、その存在はダンジョン外でも消えることは無い。


 突然目の前に現れた高濃度アルコールを浴びたヒズと部下達は、むせ返る様な濃度のアルコールに目を白黒させるが、それで終わりでは無い。

 そう、スライムの後ろに配置されていた、火矢を装備したアーチャーモンキーがいるのだ。


 ババロア兵が使用していた矢を回収し、布を巻き付けて火矢に改造した、ダンジョン外でも消える事のない火矢。それがヒズに向かって解き放たれる。

 一瞬にしてダンジョンの入り口が火の海に…。


「うわあああ!」


「ギャアアアアアッ!」


「た、助けてぇ!」


 まさに阿鼻叫喚。地面に転がり火を消そうとしても、地面にも高濃度アルコールは染み込んでいるのだ。中々消えるものでは無い。


 そんな、のたうち回る連中に対して、アーチャーモンキーは紐のついた矢をヒズに向かって発射。返しの付いている矢尻がヒズの足に刺さり、紐を手繰り寄せるとヒズの足がダンジョン内に。それをダンの触手が掴み、穴の中へと引き摺り込んだ。


「う、うわああああ⁉︎」


 全身大火傷を負ったヒズが、100mの縦穴に落下。だが、ダンは簡単に殺す様な事はしなかった。


『…悪いが、お前は簡単には殺さないぞ。33名の恨みもあるからな』


 そう言って、ヒズの落下地点に水を吸って大きくなったスライムを召喚。落下の衝撃を和らげ、即死は免れた。

 更にヒズを受け止めた衝撃により、水を吸って大きくなったスライムは破裂。その水が大火傷を負ったヒズの全身の火を消滅させる。

 これにより急死に一生を得たヒズであったが、それは僅かばかりに寿命が伸びただけのこと。


 これから始まる尋問と拷問。ヒズはそれに耐えうる精神など、持ち合わせてはいないのだから…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。