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6.出会い

赤い槍を持った森の中を歩む人が一人。

俺だ。

蜘蛛の化物との戦闘を終えて、一安心しながらも警戒は解かずに先へ進む。

そうしてしばらくすると、木々の間から光が差し込んできたのだ。

今改めて考えてみると、この世界での実家である魔女の家では日の光をあまり見た覚えがないのだ。

慣れというものだろう、実感したとたんあまりに日が久々すぎて、感嘆の声が出るほどだった。

またしばらく歩いていくと、段々と木の量は減り、光が増える、これは森を抜けるということを意味していた。


「ぬ、抜けた」


森を抜け、目の前には広大な草原があり、遠くには山が連なっているのが見えた。

俺は安心感と共に、緊張感が抜けて思わずその場に座り込む。

休憩がてら初めての実戦で能力値に変化はあるのだろうかと思い、確認をしてみる。


STR(筋力):80 成長促進:1

DUR(耐久):27

CON(体力):27

AGI(敏捷):65 成長促進:1

DEX(器用):1130 成長促進:3

POW(精神):27

FOR(理力):370

INT(知性):41

LUK(幸運):10


HP(生命):540/540

MP(魔力):--/--


変化はないらしい。

何故器用と理力と魔力がずば抜けているかといえば、ひたすら棒を振り回していたり、母の手伝いをしたりと、色々なことをしていたし、加えて成長促進のおかげで上昇する一方だったのだ。

理力に関しては魔女である母からの魔術訓練での変化だ。

魔力はその名の通り魔力供給による変化だ。

歳を重ねるに連れて母は魔力の譲渡量をどんどんと増やしていき、ついには俺の限界にまで達したのだ。

17年間の積み重ねは中々に凄い。


さて、森を抜けたわけだが。

広がるのは草原。

それだけだ。


「こ、こんなときは」


俺は指に魔力を溜め、Mのような文字を描く。

名はEh(エフ)意味は援助や幸運、簡単にえば神に助けを求めているようなもんである。

これをすることによって何が起きるか。


「誰か人が通りますように・・・ッ!」


祈るのみである。












日が傾いた頃、一つの大型の馬車が俺の視界に入る。

コレを逃す手はない、ゲイボルグを手に取り馬車へと一直線に走る。

ズザザザッという音と共にスライディングを馬の前で決めて、行く手を阻む。


「なんだてめぇ!邪魔すんじゃねえよ!」

「そう怒らんでくれ、頼むがあるんだ」


どうどうと馬を宥めつつ馬車の持ち主であろう男に話しかける。


「ああ?なんでお前の頼みなんか聞かなきゃいけねえんだよ」

「旅は道連れっていうだろ?最もそっちは旅じゃなさそうだけど」


俺は後ろの荷車を見て話す。

馬を四匹引き連れるってことは中々大荷物なんだろう。

商人か何かだろうか。


「ほらほら、それなりに腕には自信があるんだ。魔法だって使える」


火の魔法を詠唱し、軽く掌から火を出して見せる。

正直化物との戦闘になったらどうなるかは分からないが、今の頼み綱はこいつだけ、何も来ない事を祈ってホラを吹く。


「けっ、仕方ねえな。じゃあ護衛代わりだ。それで相子にしてやる」


ありがとうと一言、俺は男の隣に座る。

ゲイボルグは立てる様にして持ち、場所をとらないようにする。


「これどこに向かってるんだ?」

「わかんねぇのに乗せてくれっつったのかお前は」

「田舎育ちっていうか、あんまり外に出た事がなくてさ、初めての旅を始めたばっかりなんだ」

「ったく、世間知らずは損するぜ。今向かってんのはミゲルの王都だ。それぐらい知ってんだろ?」

「いや知らない」

「お前・・・」


男に睨まれる。

魔法の勉強ばっかりでこの世界事情を勉強してなかったんだ、許して。


「まあいい、暇だったしな。お喋りは嫌いじゃない」


割と気の良い人だった。

ルーン文字、神よ感謝感謝。


「何祈ってんだ」

「祈る事は大事」

「唐突すぎんだろ・・・」


それもそうか

呆れつつも男は早速説明を始めてくれる。


「メルガの王都、まぁメルガ王都って言われてるんだが、とりあえずここら一体はメルガの領土だな。そんだけでかい都市、国だな。いろんな産業やらは大抵ここに集中してる。冒険者ギルドもここが本拠地だな。お前そのなりだと冒険者ギルドが目的か?」

「冒険者ギルドとは」

「そこからか・・・。まあ、何でも屋だ。色んな仕事を受けれる、魔族討伐だったり時には子守なんてものあるらしいぜ。そのおかげで仕事のないヤツからそれが本業のヤツまで色々な奴等がいる。一番手軽で一番辛い、そんで成り上がれる職業ナンバーワンだ」


確かにコレは冒険者ギルドに行くのが得策だろう、これも神のお導きか。


「・・・何祈ってんだ」

「祈る大事」

「そうか・・・」


もはや突っ込むのも面倒になられたようだ。

そしてふとした時に、何か別の声が聞こえた。

それも複数、後ろからだ。


「なあ、この荷車って何入ってんだ?」

「ん?ああ、奴隷だよ」

「へぇ・・・奴隷。奴隷!?」

「安心しな、連れ去ったワケじゃない。哀れにも売られた奴等さ」


驚いたのはそこじゃないんだけども。

そうか、ファンタジーだもんな、奴隷とかいてもおかしくないない。

自分の中で適当に自己完結させる。


「売られるとは運がないな」

「そう言ってやるな、あいつ等にもあいつ等の事情があんのさ。俺には関係ないがね」

「そんなもんか」

「そんなもんさ」


俺は馬車の揺れに尻を痛めながら奴隷商人の男と話に花を咲かせた。












「ここで一旦止める」


空は暗くなり、夜だ。

止めた先には丁度家が一件あり、その隣には荷車が丁度納まる倉のようなものもあった。


「夜の移動は危険だ。ここで一晩明かす」

「なるほど、了解」


俺は男と一緒に荷車を押し運び、納める。

複数人が乗っているはずなのに簡単に運び込めたのがびっくりだ。


「こっちだ。飯くらいは分けてやる」


そういって男は家へと入っていく。

飯までくれるなんてかなり良いヤツだった。


中へ入ると少し埃っぽかったが、片付いており、机や椅子ベッド等生活するには困る事のない家具が揃っていた。


「干し肉齧れば上等だろ」


ゴン、と音を立て現れたのは何かの脚の干し肉だ。

男はナイフを取り出し、手馴れた手付きで肉を削いでいく。


「味気ねぇが食わねぇよりマシだ。ほらよ」


ぽいっと大きめにきられた干し肉を投げられる。

それを両手でしっかりと受け取り、齧ってみる。

ほんとだ味気ねぇ。


「そうだ、兄ちゃん名前なんていうんだ。今更だが聞いてなかったな」

「俺はクレア、名前だけだ」

「訳ありか?ベイルだ。ベイル・マーカー。そういやお前魔法使えるとか言ってたが、ステータスはどうなってんだ?」

「ステータス?」


能力値のことだろうか、そういえば母の能力値とか見れるのかな。


「あー。ステータスってのは自分の性能でな、見れるんだ。相手のステータスも許可してくれた場合のみ見れる。その感じだと見方しらねーみたいだな。こうやってすんだよ」


言うとベイルは|Performance《開け》と呪文を唱える。

すると、俺には見えないが何かしらが彼の前で展開されているのが分かる。

やってみな、というので俺も早速真似てみる。


「〝|Performance《開け》〟」


そうして出てきたのは


//姓名========================

名前:クレア・グレイ

性別:男

//性能────────────────────────

STR(筋力):80

CON(体力):27

AGI(敏捷):65

POW(精神):27

FOR(理力):370

INT(知性):41

//魔法────────────────────────

Fire(火よ)〟〝Flame(炎よ)〟〝Blaze(激しき炎)

Ice(氷よ)〟〝Freeze(氷結)〟〝Blizzard(雪嵐)

以下省略

==============================


「あれ・・・」

「どうした?」

「いや、なんでもない」


俺の見てる能力値と違う?これは別物なのか。

というか、グレイっていうのか、知らなかったぞ。


「俺の見せてやるから交換ってことで、どうだ?」


提案され、俺は承諾する。

断る理由もないしな。

俺はベイルの言われたとおりに事を行う。

簡単に言えばOKですよーってやるだけの話なんだが。

そしてベイルの性能を見ようとしたところで


「なっ・・・お前、グレイって」

「ああ、いや母さんが教えてくれなかったというか」

「それにこの魔法の量、お前の母さんって」


ベイルがそう言いかけたところで、外で金属音と叫び声が響く。

方向はなんとなくだが、荷車がある方からだろう。


「なんだ!?」


ベイルは家から飛び出す。

俺もゲイボルグを手に取り、後を追うようにして家を出る。

外に出てみると、何十人かの人が、荷車を取り囲んでいる。

ドサリとその集団から人が投げ飛ばされ、剣を向けられ、そいつは脅えきっているようで動きもしない。

その集団を注意深く見てみれば、服装があまりに雑だ、見た目としては荒くれ者の様に見える。

いやこんな事をしている時点で荒くれ者に違いはないが。


「なんだお前等!」


ベイルがその集団に向かっていくと、そいつらは全員自分の得物を取り出し、完全に争う姿勢だ。

それに応じるようにベイルもナイフを二本取り出し、俺のほうを向いて一言。


「手伝え、出番だ」

「よしきた」


ゲイボルグを構えてベイルに並ぶ。

しかしこれは俺にとっては初の対人戦だ。

蜘蛛に対しては化物と割り切る事が出来たために躊躇なく刺せたが、相手が人となれば難しい。

けれどこれは両者とも殺す気での戦いであるわけで、気を抜いたら俺が死ぬ事になる。


「(うわ、逃げたい)」


俺は内心絶望していた。

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