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Battle Job Online  作者: 栗山ハル
【1.Battle Job Match】
19/30

18.妹戦順調

(〈ホーミングショット〉)

 しっかりと狙って放った矢が少し軌道を変えこちらに背を向けているプレイヤーの心臓部分に刺さった。

 〈ホーミングショット〉は少しずれてもしっかり狙ったところにあたるが、中威力の〈貫く矢〉と比べると威力は2分の1ほどだ。

 削れた体力は3分の1ほど。

 クリティカルでこれとなると少し悲しくなる。

「敵だ!」

 私が放った矢にあたったプレイヤーがそう言うとその前を歩いていた4人が立ち止まって私のほうを見た。

 全員男、しかも戦士職。

 1対1でこの距離なら負けることはないだろうが1対多となると遠距離攻撃職が不利。

 理由はこっちが体力を全部削る前に相手に近づかれるからだ。

「たった一人だぜ?しかも低火力の〈弓使い〉…余裕だろ」

 相手の中の一人がそう言った。

 50mほど離れているのに聞こえるということは結構な声の大きさで言ったのだろう。

(まあ、余裕なのは私が一人だったらの話だけど)

 相手の戦士職5人がこちらに向かって走ってきたその直後、その中の1人がポリゴン片となった。

「なっ…。おい、〈弓使い〉!お前何をした!?」

 そのすぐ隣にいた男が私に向かってそう言ったが、わざわざ敵に情報を教えてあげるつもりもなければ私が攻撃をやめる理由もない。

(〈貫く矢〉)

 そう心の中でつぶやくと構えた弓と矢が赤い光を放ち始めた。

 4人全員の意識がこちらに集中したとき、先ほど私に矢を当てられた男がポリゴン片となった。

 残り3人は消えたプレイヤーのいたところを何が起こったかわからないという様子で見ていた。

そのうち2人が私から見て一直線に並んだ時…私は矢を放った。

 このスキルは溜め時間が長ければ長いほど威力が増す。

 先ほど〈ホーミングショット〉は〈貫く矢〉の2分の1の威力と言ったがそれはほぼ溜めなしの状態の時だ。

 今MAXまで溜めたこの矢の威力は〈ホーミングショット〉の約3倍。

 ただ茫然と立っているだけの人に当てるのだなんて朝飯前だ。

 私が放った矢は1人目の頭を貫通し、2人目の肩へ刺さった。

 1人目はポリゴン片となって消え、2人目はその後、後ろから斬られてポリゴン片となった。

「な…何が……?」

 残った一人が怯えている様子でそう口にだした。

 そう思うのも当然だと思う。

 私が最初に矢を放ってから1分ほどしか経っていないのに仲間が4人いなくなってしまったのだから。

 最後にもう一度〈貫く矢〉を弱点に打ち込んで私――ミキとパーティメンバーのヒナのBJM初バトルは勝利で幕を閉じた。


「ミキってばやることえげつないねー」

 相手パーティを倒した後、私たちは建物の間に隠れながら周りの様子をうかがっていた。

「いやいや、ヒナちゃんの方がえげつないでしょ…、後ろから攻撃だなんて…」

 そう話しながらウィンドウを開く。

 そしてBJM情報と言うボタンをタップ。

 フィールドナンバー31、残りパーティ41、残り人数187。

 でてきたのはBJMに関する情報だ。

 残り時間は50分51秒、50秒…と1秒おきに減っている。

「その作戦も考えたのはミキだけどね…って何ソレ!?」

 私が残りパーティの数などを考え、大体の人数を計算しているとヒナちゃんが後ろからそう尋ねてきた。

「何ってBJMの情報だよ?」

「いやいや、そんなの説明になかったよ?」

 説明になくてもウィンドウとかを一通り開いて情報を集めるのは当然だと思うけど…。

 そう思ってヒナちゃんの方を見ていると「もう、なんでもないよ…」と言って呆れられてしまった。

「次はどうするの?」

 私がウィンドウを閉じてまた周りの様子をうかがい始めるとヒナちゃんがそう聞いてきた。

 ちなみにヒナちゃんのLvは14、平均Lvより少し上くらいだ。

「基本的にはさっき作戦と同じにしようと思ってるけど…」

 さっきの作戦とは戦士職5人を数分で倒した作戦のことだ。

 方法は簡単、まずは私が囮となる。

 相手との距離は50mほどあけて弓をうって相手に「相手(私たち)は〈弓使い〉一人で逃げながらちょっとずつHPを削っていく気だ」と思わせる。

 相手もまさか最初のBJMでいきなりパーティがまとまらないで行動すると思わないだろう。

 そして私に意識が集中したとときに、あらかじめ近づいておいたヒナちゃんが相手の中で一番後ろにいる人を後ろから攻撃し倒す、と言うものだ。

 どうなったかわからない相手は一度倒された味方がどうなったか確認、思考し、次に私の存在を思い出し、再度全員の視線がこちらに集中、その間にヒナちゃんがもう一人、そして私は矢を放つ、以降はコレの繰り返しだ。

 正直さっきのはあそこまでうまくいくとは思わなかった。

「わかったよ!…それで、話戻るけどよく普通に頭とかうてるよね、ミキ」

「私は距離があるから平気なだけだよ…。多分ヒナちゃんくらいの距離でやったら気持ち悪くなると思う…」

 正直ゲームとはいえ近くで人の頭に穴が開いているのは見たくはない。

 中身はもちろんポリゴンだけども。

「その光景を私に見せてるんだから基本的に心臓のほうを狙ってくれないかな、ミキ?」

 それで解決するヒナちゃんはすごいと思う。

 正直心臓付近に矢が刺さっている光景も近くでは見たくない。

 全て〈弓使い〉だからこそできることだね。

「そう言えば何でミキはそんなにLv上げたがるんだっけ?」

 ヒナちゃんとの会話で唐突に何かが聞かれるのはよくあることだ。

 この1週間で結構慣れた。

「お兄ちゃんに勝つため、かな」

 実際にはお兄ちゃんに話を聞いてもらうこと、なのだけれどそのためには勝つか同じくらいの実力になることが必要な条件だと思っている。

「お兄ちゃんってマリ連れてった人に似てるんだっけ?」

「連れてったっていうかマリちゃんのお兄ちゃんって自分では言ってたけどね」

 ヒナちゃんの言い方だと誘拐したみたいに聞こえる。

 最近『厨二病』に関する掲示板を見つけて、その時に出てきていた名前は〈Masa〉だった。

 そして〈Right〉の二つ名も『厨二病』。

 同じ二つ名をこんな短期間で二人の人物が獲得するなんてふつう考えられない。

 そんなこともあり私の中で〈Right〉=〈Masa〉説はほぼ確信に変わっていた。

「でもあの時マリ、ビックリしてたしね。自分の兄に話しかけられてビックリって…ねえ?まあ、それでも嫌だったらすぐに帰ってくると思うしそこまで悪い人でもないんだろうね」

 ビックリしてたと言われれば確かにそうだったかもしれない。

 ヒナちゃんって意外といろいろ考えてるんだな…。

「む、ミキ今失礼なこと考えたでしょ?」

「……ヒナちゃん、敵が来たよ」

「話流された!?」

 今度は3人組のパーティだ。

 魔法職1人、戦士職2人だ。

「先に魔法職からやっちゃおうか、行動パターンがわからないし」

「ん、了解」

 ヒナちゃんは相手を見るなり切り替えてそう言うと素早く動いて相手の方へ向かった。

 〈盗賊〉の固有パッシブスキル、〈弱点の弱点ウィーク・ウィークポイント〉は弱点に攻撃を当てた時にダメージがさらに2倍になるという恐ろしいスキルだ。

 ただ、盗賊の武器は短剣だから弱点に当てられるくらい近づくのは難しいのだけれど。

 ヒナちゃんの準備がようだから、私も作戦を始めた。

 作戦はこの後も順調に成功して私とヒナちゃんは無事に予選を突破した。


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