17.難敵苦戦
「ほら、マリナ敵が来たよ」
残り時間が20分になったころようやく二つ目の敵パーティが来た。
人数は二人、二人とも俺が見たことない武器を持っている。
片方は棒のようなもの、もう片方は…
「瓶?」
何やら丸い結晶が大量に入ってる瓶を持っている。
「何の職業でしょうか…。とりあえず様子を伺いましょう」
敵が来た、と言った瞬間に俺への質問をやめ切り替えたマリナ。
実は俺より年上なんじゃないかと思うくらいしっかりしている。
妹と同じくらいと言っていたから中学生なんだろうけども。
マリナの指示に従って俺とマリナは身体を隠し、顔だけ出して様子をうかがった。
んー、特に変わった様子はない。
「先に仕掛けて倒しちゃったほうが早くないか?」
先ほどから全く警戒していない二人を見ているとそう思ってきた。
「ライト、不自然だと思わないですか?仮にも今はバトルロワイヤル中ですよ?この時間まで残っているパーティということはそれなりにできるはずです。なのに全く警戒していないなんて…」
マリナの言葉はそこで途切れた。
正確にはマリナがそこで言葉をきって俺を突き飛ばし、自身も後ろに跳んだのだ。
「危なっ!マリナいきなり何を――」
俺が声を出した次の瞬間俺とマリナの間を何かが通過した。
「ライト、気づかれてます!」
マリナの言葉を聞いてようやく事態を把握した。
我ながら遅すぎる。
「あっれー?倒せはしないでもHP削るつもりでやったのになー」
棒を持った相手がそう言った。
「この時間まで残っているプレイヤーが相手なんだから油断するんじゃねえよ、バカイト」
「バつけんなよー、アホール」
「アをつけるんじゃねえ!」
そんな呑気な会話をしてるのはさっきまで俺たちが様子をうかがっていた二人組だ。
名前は〈Kaito〉と〈Hole〉というらしい。
そんな話をしているカイトと呼ばれたプレイヤーの肩に鳥型のMobが泊まった。
確か〈アーリーイーグル〉だったと思う。
〈アーリーイーグル〉はLv16で、俺が初めて見た飛行型のMobだったから強く印象に残っている。
「どうやら〈獣使い〉のようですね」
マリナがそう口に出した。
〈獣使い〉、自身ではほとんど戦わず、テイミングしたMobで戦う職業。
ステータスはそこまで高くないが、そのステータスを自身のMobに反映することができるという職業だったはずだ。
つまりさっきの〈アーリーイーグル〉はカイトというプレイヤーと同じ物理攻撃力を持った状態で俺たちに突っ込んできたということだ。
俺、あたってたら死んでたな。
しかもテイミングは自身のLv以下のMobしかできなかったはずなので、あの〈獣使い〉は低く見積もって16Lvと言うことになる。
結構な強敵なんじゃないか?
「んー?『厨二病』?ホール、あれってどこかで見た気がするんだけど」
「確かプレイヤー消滅事件の犯人が掲示板でそう呼ばれてたな。じゃあアイツは…」
ばれてる!?
しかも掲示板ってなんだ!?
もしかしてそのせいで俺にこんなに早く二つ名が…?
ホールというプレイヤーはそこで話をきると口元を緩めた。
いや、あの笑い方は…
「一回そんなやつと戦ってみたかったんだよなぁ!カイト、俺は最初からとばしてくぜぇええ!」
戦闘狂の笑い方だ!
ホールはそう言うと手に持っていた瓶から一粒何かを取り出し、歯で砕いた。
「〈擬獣化〉フェンリル!」
そう唱えた瞬間ホールの体から急激に漆黒の毛が生え、顔や体の形が少しずつ変わった。
変身が終わったと思う頃にはホールは狼男になっていた。
刹那、ホールの体がぶれた。
ヤバい!
直感でそう思った俺は右へ急いで跳んだ。
あぶね、もう少しで屋根から落ちるところだった。
「ハハッ、コレを避けるか。やるねぇ、厨二病さん、よ!」
一瞬でつめられた!?
この建物の高さは4~5mはあるぞ。
それをこんな簡単に…。
ホールはそう言うと再度俺のほうに向かってきた。
速い!
「マサ、その人は〈獣化人〉という職業です!確か効果時間があります、頑張って逃げてください!」
マリナは〈アーリーイーグル〉の相手をしながら俺にそう言った。
よく見ればマリナのHPバーが少し減っている。
何発かもらっているらしいが、それは〈アーリーイーグル〉にも言えることだった。
マリナが残り5分の4くらいなのに対して〈アーリーイーグル〉は3分の1ほど。
一見有利に見えるが、それを操っているカイトのほうのHPはまだMAXだ。
「よそ見してる暇があるのか?」
そう言ってホールはジャブを放ってくる。
連続で何発も、まるでマシンガンのようなジャブはかわすだけで精いっぱいだ。
「凄いな、アンタ。俺、一応情報公開されてる最高Lvの18なんだぜ?まあ、いつまで避けられるかだけどな!」
「クッ…」
一応7Lv差だぞ!
最高Lvとかどうとかは知ったこっちゃないがこのLv差でこっちがよけるのが精一杯?
ふざけてる速さだ。
「マリナ!無理だ、このままじゃ負ける!他の属性も使うぞ!俺のこともばれてるみたいだし!」
だが、よけながらでも詠唱はできる。
「わかりました!早くこっちも手伝ってくださいね!」
とりあえず一回大きく隣の建物まで跳び、時間を稼ぐ。
そして跳んでいる間にアイテムポーチからMPポーションを取り出し、飲む。
空き瓶をホールのほうへ投げつけ、少し時間を稼ぐ。
「こんな距離一瞬だぜ!」
そう言った言葉に嘘はなく本当に一瞬で距離を詰めてきた。
着地した瞬間にすぐに横に跳んだが、少し攻撃がかすってしまったらしい。
HPゲージがぐんぐと減り………残り20となってしまった。
(減りすぎだろぉぉぉぉお!!)
もう一発かすったら終わる。
「天よ、我を我が望むところへ瞬く間に運びたまえ」
だがそれでも詠唱を始める。
「何もやらせねえよ!どうやらそっちは紙装甲みたいだし、な!」
そう言いながらまたジャブを繰り出すホール。
だけどこの詠唱、MPが結構持ってかれる代わりに結構短いんだよね。
「〈瞬間移動〉!」
最後に繰り出されたジャブが当たりそうになった瞬間俺の体は消えた。
そしてホールの真後ろの建物の下、誰からも見られない場所に移動した後再度MPポーションを開けて飲んだ。
合計9本。
こんなに飲んだのにも理由がある。
ポーション類は間隔を開けてから飲まないと回復量が減っていく。
最初20%だと次一分以内に使う場合18%、その次は16%となっていき、最終的には1%しか回復しなくなる。
残り数%の状態から100%にするには9本飲む必要があったのだ。
しかも一本当たり大体200mlくらいあるから9本飲むとなると結構時間がかかる。
「天よ、我を我が望むところへ瞬く間に運びたまえ。〈瞬間移動〉」
〈瞬間移動〉を使って今度はマリナのところに移動。
「マサ、大丈夫でしたか?」
ちょうどマリナが〈アーリーイーグル〉を倒したところだったようだ。
「へぇー、結構お気に入りだったのになー」
カイトはそんなことを呟いている。
「念のためもう一体テイミングしておいてよかったよー。〈召喚〉〈アーリーイーグル〉」
もう一体!?
カイトがそう唱えた瞬間カイトの肩に〈アーリーイーグル〉が再度登場した。
「こっちに戻ってきてたのか」
そう言いながらホールも戻ってきた。
「まずいな…」
もう一度〈瞬間移動〉を使うか?
いや、そう何度も使わせてもらえるとは思えない。
二人一気に俺に来たら終わりだ。
じゃあ攻撃魔法?
それだとマリナが巻き込まれる可能性がある。
「くそっ…」
手詰まりか…。
そう思った時脳内に音声が流れた。
『フィールドナンバー51、残りパーティ数が10になりました。閲覧マップへ自動転送されます。残り時間9分51秒。最多kill数48、プレイヤー名〈Hole〉』
「チッ…終わりかよ」
「みたいだねー。50まであと少しだったね、ホール」
助かった?
危なかった、他のパーティがあと1分倒されるのが遅かったら俺とマリナは脱落していたであろう。
「また当たったらよろしくねー」
「次はしっかり倒す」
こっちもやられてばっかりではいられない。
次にこの二人を見かけたときには様子見などせずに攻撃魔法をぶち込む。
そう決めたのとほぼ同時に転送が始まった。




