【盲点と呼ばれる背景】
【背景と呼ばれる理由】
ある所に、非常に優れた絵描きが居た。
ただこの絵描き、その能力が評価されない。
嘘偽りなく掛け値なしに、本当にこの絵描きは優れているのだ。
しかし、誰も絵描きの本音に気付かない。
その理由は、絵描きが絵を描く光景を見れば理解できる。
――この森は、静かな森にしよう。静謐な霧を書き入れるのもいいかもしれない。
――大地は、美しい緑色にするべきだろうか。霧のつゆが、涙のように零れていると雰囲気に合うな。
――時間帯は、朝が良いかもしれない。朝露に濡れた雰囲気が、きっとこの物語を仕上げてくれる。
そうして絵描きは、素早く景色を描き上げた。
美しく、繊細な、躍動している物語である。
そんな会心の出来である絵を持って、今度こそはと絵描きは商店にやってきた。
――なるほど、こりゃどこでも合う良い絵だ! いくらで売ってくれるんだ!?
やはり、この「絵」は売れるらしい。
実はこの絵描き、自称ではあるのだが「作家」である。
何時になれば売れるのだと嘆きながら、彼は持ち込んだ絵を売った。
意味は伝わるが、相変わらず意図は伝わらなかった。
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この絵は、とある絵描きが書いたらしい。
そして絵描きは、こう言い残している。
――背景とは、本質的に空白であるべきなのだ。
しかし、この絵はどこを見ても美しい。
まるで背景など、どこにもないかのように。
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