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【自問する防壁】
【自問する防壁】
ある時、歴史を記していた学者は気が付いた。
忘れられている警句の、なんと多いことか。
しかし、人は忘れているが前に進めている。
――つまりそれは、人は忘れる事で前に進めるのではないか?
自問したその問いに自答して、学者はこうも思った。
――これは書き残すべきなのでは?
誘惑に抗えなかった学者は、最初にこう書き記した。
人の話を聞くこと自体が、既に演出なのだ。
――だからこそ、注意深く聞くべし。
華やかなものほど、説明を必要としない。
あらゆるものは注意力を奪う演出に過ぎない。
――だからこそ、知られていないものを知るべし。
そして学者は、最後にこう書き記した。
――魔剣に対して最も強固な防壁は、「己で考える事」である。
書き記した内容に満足した学者は、
誰の批判も恐れることなくこの書物を出版した。
だがその後、この書物について語る者はいなかった。
学者は、一つ書き記し忘れていたからだ。
――愚かさの中にしか、問いは生まれない。
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使いこなせばあらゆる魔剣の防壁になる……と伝わる一枚の紙。
幾つかの短い警句が書かれているのだが、
この警句を読むために勇気か愚かさが必要であるらしい。
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