48.調査
人の膝上程度の高さの雑草が生い茂っている草むらが目の前にある。
ひろとは注意深く足元を確認しながら石畳の街道と草むらの境を歩いていた。
「・・・ここだな」
なにかに気付き、足を止める。
視線の先には、木の棒が地面に垂直に刺してあり、それを挟む形で丸い石が2つ置いてあった。ひろとが2日前に魔族に遭遇した時に置いておいた目印だ。
「この前、魔族を見かけた場所がここ・・・魔族はこの奥の森へ消えた・・・」
ひろとは1人呟き、視線を目の前の草むらとその奥にある森に移す。
ひろととセンスィ達3人は、隊商の護衛任務でドッピュン村に到着した後、ギルドの出張所に魔族に出会ったことを報告した。
次の日、目的地であるパコパコの街に到着して、ギルド事務所に行ったのだが、そこで『魔族の調査依頼』のお触れが張り出されていたのだ。
魔族の野営地、駐留地などを発見すれば金貨1枚~という破格の報酬が設定されていたが、魔族を相手しないといけないということもあり、調査に乗り出す冒険者はあまりいないということであった。
他の依頼のついでに、偶然見つけても報酬が得られるため、情報があれば、なんでも教えて欲しいとギルドの職員は言っていた。
ひろとは、早速魔族の情報を得るために、一昨日に魔族とはちあわせた場所まで戻ってきたという訳だ。元の世界に帰るためには、魔王を倒す必要があるため、少しでも魔族に関する情報を集める必要がある。
ちなみに、センスィ達はそんな危険な調査は御免だということで、シコシコの街へ帰ってしまったので、ひろと単独で調査している。
「とりあえず、森の中に入るしかないか・・・」
森の入口らしき少し開けた場所に近づいていく。
「迷わないように目印を付けとくか」
ひろとは、入口にある大きめの木にナイフで目印を刻みつけた。
森の中を見ると、けもの道を少し広くしたような幅の道はずっと続いているのが見えた。
何も情報が無いため、まずは道に沿って進んでいくことにした。
剣を取り出し、草木を払いながら進んでいく。
鳥の啼き声が時折聞こえるくらいの静かな森だ。ひろとが草木を払う音が静かに響いている。
1時間くらいたっただろうか。
突如、道の奥の方からガサガサと草木が擦れる音と獣の声が聞こえてきた。
「なんだ?」
林道の向こうから、先日出会ったのと同種のイノシシ型の魔物が一直線にこちらに向かってくるのが見えた。
「またイノシシか!どうなってるんだよこの森は!」
「スク水ガード!」
ひろとは、マントを即座に脱ぎ捨て、スク水姿になりスキルを発動した。
スクール水着が瞬時に硬化し防御力が高まる。
ガンっと言う鈍い衝撃音と同時に、ひろとが構えた盾にイノシシが突進する。
少し後ずさりしながら、突進を受け止め、剣で喉元をかき切った。
ギャアアア!
イノシシの魔物が喉から血を垂れ流しながらパニックになって暴れ始めあ。
「おっと!」
慌ててバックステップで距離をとる。
スクール水着姿のアラサーのおっさんが、剣を構えながら魔物を鋭く睨みつける。
「迂闊に近づくと危ないな・・そうだあのスキルを使ってみよう!」
ひろとは、女神から授かった新たなスキルを思い出し、使ってみることにした。
「ええと、ツインハンマー!」
剣の切っ先を魔物に向けながら、スキルを唱えると、ドンッという衝撃音とともに股ぐらの辺りからふたつの黒い塊がピッチャーが投げる豪速球のごとくイノシシにむかって射出された。
ごしゃっという肉のへしゃげるような衝撃音とともに、黒い塊がイノシシの頭部と肩に突き刺さった。
イノシシの魔物は一瞬硬直し、そのまま崩れ落ちるように倒れた。
「・・すげー!なんて威力だ!あのクソ女神がこんなスキルをくれるなんて!」
ひろとは、自分がこの異世界に来て酷い目にあっている元凶である女神を思い出しながら、興奮した様子でまくし立てた。
「ところで、この鉄球みたいなのはなんなんだ?」
たおれたイノシシの方に近づきながら、鉄球に視線を向けると、鉄球がガタガタと振動し始めた。
「ん?なんだ?・・うわっ!」
突然、ふたつの鉄球が宙に浮かび、ひろとに向かって一直線に飛んできた。
「ひいっ」
ひろとが慌てて身構えていると、鉄球はスクール水着の隙間からスルッと股間の中に入っていった。
「あれっ?」
両手をスクール水着の中に突っ込んでまさぐると、硬い感触のふたつの球体が手に当たった。
ふたつの球は、まさぐっていると手の中でだんだんふにゃふにゃとした柔らかい感触に変わっていく。
「なにこれ?柔らかーい・・」
「・・ってこれキン〇マやないかい!」
ひろとは、手を股間に突っ込んだまま、盛大にツッコミをかました。
「おいおいおいおい!キ〇タマが飛んでく攻撃スキルってどういうことだよ!くっそ、こんなことだと思ったよちくしょーが!あのクソ女神がまともなスキルくれるわけねーよな!ふざけやがってよー」
静かな森の中に、ひろとの悲しい叫びが、獣の遠吠えのように響き渡り、静寂の中に溶けていったのだった。




