第53話 見て見ぬふり(3)
僕は人種なのに努力が実らない訓練を日々続けたよ。アイカさんや集落のみんなを見返してやるのだと、自分の御妃さまの気を引きたい一心で、ライバルに打ち勝とうと努力を続けたよ。
先ほどアイカさんが言っていた通りで彼、ウォンさんは、彼女の従兄ではなく、実の兄だから結婚などできなし。集落内の民のほとんどがアイカさん、と言うか?
藍華姉ちゃんの兄弟や従兄弟ばかりで、僕は義父の策に陥り、猜疑心を持ち、他人を疑ってかかることを覚えさせられ、仕込まれ。義父好みの婿になる……。
そうシルフィーの夫として恥じない男に育てられている。
だから僕が持つ仙術、気功力が発動できない相手……。敵ならばいざ知らず、一族の者を僕の巨大な力で殺す訳にはいかないから。僕はとにかく基礎能力を上げることに重視した。
だから、そんな日々が続けば、僕自身も努力の無駄と言うことはなく。
今日も僕の畑にいけば奴が! 巨大な猪が! 僕が精魂込めて植えたさつま芋とジャガイモを。
「フガ」
「フガ」
「ブフ」
「ブフ」
「ガウ」
「ガウ」
と、奴等は鼻息荒く、貪り。僕の真心込めた無農薬野菜を食べているから。
「──お前等! またきたな! 今日も僕が精魂込めて作った芋さんたちを食べやがって! 今日こそは許さないからな!」と。
僕は大猪たちに勇んだ声を上げると。
僕は鍬を戟のように構えると。
すぅ~と大きく息をして、吐いて……。
「おい! 猪共かかってこい! 今日の僕は朝から嫌なものを見たから大変に機嫌が悪い。だからかかってこいよ! お前等を殺すことで僕は鬱憤晴らしをするから」と。
今日の僕はいつものなよなよしい、少女みたいな健ちゃんではなく、他国の侵略から国を守ったこともある《《英雄王》》の健ちゃんだからかかってこいと巨大な猪数頭に対して、指先でクイクイ! とジェスチャーすれば。




