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魔眼治癒師の最適解  作者: 鍵音-kagine-


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第88話 休日の約束

 食堂には笑い声が戻っていた。


 ガルドは不満そうに腕を組んでいる。


「納得いかねぇ……」


「何がよ」


「なんで謝った側が燃やそうとしてくるんだよ」


「知るわけないでしょ」


「お前だよ!」


 ガルドが机へ突っ伏した。


 アイリスは淡々と昼食を続ける。


「ガルドさんは反応が面白いので」


「お前ら本当に仲良くなったよな!?」


 カナトが吹き出した。


 リゼアも思わず笑う。


 少し前まで。


 こんな風に笑えるとは思っていなかった。


 それだけで。


 胸の奥が少し温かくなる。


 そんな時だった。


「そういや」


 ガルドが顔を上げる。


「今度の休み、お前ら予定あるか?」


 リゼアが首を傾げた。


「急に何よ」


「いや、せっかく久しぶりに全員揃ったんだしな」


 ガルドは頭を掻く。


「どっか行かねぇ?」


 カナトが顔を上げた。


「どこに?」


「それは今から決める」


「何も決まってないんだね」


「勢いは大事だろ」


 いつも通りだった。


 リゼアは呆れたようにため息を吐く。


 だが。


 嫌な気分ではなかった。


「王都などはいかがでしょう」


 アイリスが提案する。


「王都?」


「はい。最近は任務や訓練ばかりでしたし」


 確かにそうだった。


 土砂災害もあった。


 ゆっくり出掛ける機会などほとんどない。


「悪くねぇな」


 ガルドが頷く。


「カナトは?」


「僕は大丈夫」


 即答だった。


「リゼアは?」


 三人の視線が集まる。


 リゼアは少し考えた。


 少し前までなら断っていたと思う。


 強くならなければならない。


 追い付かなければならない。


 そんな焦りばかりが頭を埋めていた。


 仲間と出掛ける時間さえ惜しかった。


 だが。


 今は違う。


「行くわ」


 自然と言葉が出た。


 ガルドが笑う。


「決まりだな」


「レオンさんも誘いますか?」


 カナトが言う。


「そうね」


 リゼアも頷いた。


「せっかくだし」


「後で聞いてみましょう」


 アイリスも賛成する。


「で、王都行って何するんだ?」


 ガルドが聞く。


「買い物でしょうか」


「アイリスは何買うんだ?」


「本です」


 即答だった。


 ガルドが苦笑する。


「だと思った」


「ガルドさんは?」


「肉」


「王都まで行って?」


「王都の肉だぞ」


 何故か自信満々だった。


 カナトが笑う。


「それは少し気になるかも」


「だろ?」


 ガルドが得意げに胸を張る。


「リゼアは?」


 今度はガルドが聞いてくる。


 リゼアは少し考えた。


「別に決めてないわ」


「珍しいな」


「たまにはそういう日があってもいいでしょ」


 そう言うと。


 ガルドは笑った。


「まあな」


 窓から風が吹き込む。


 昼の陽射しがテーブルを照らしている。


 食堂の喧騒は変わらない。


 だが。


 リゼアには少し違って見えた。


 苦しい日々が消えたわけじゃない。


 これからも悩むだろう。


 迷うこともある。


 立ち止まる日もあるかもしれない。


 ふと。


 カナトが笑っている姿が目に入った。


 ガルドが騒いでいる。


 アイリスが呆れた顔をしている。


 そんな光景を見ていると。


 自然と口元が緩んだ。


 休日が少しだけ楽しみだった。


 失ったと思っていた日常は。


 少しずつ。


 確かに戻り始めていた。


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