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魔眼治癒師の最適解  作者: 鍵音-kagine-


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111/115

第111話 突破

 魔物の群れは勢いを増し、第九班と騎士たちは絶え間なく迎撃を続けていた。


 剣戟。


 咆哮。


 魔法が炸裂する轟音。


 辺りは既に激しい戦場へと変わっている。


「右から三体!」


 騎士の叫びが響く。


「カナト!」


「はい!」


 カナトは身体強化を維持したまま駆け出した。


 右眼が熱を帯びる。


 魔眼が三体の魔物を映し出す。


 前脚へ掛かる力。


 呼吸。


 視線。


 身体を巡る魔力。


 身体強化と魔眼が噛み合ってきたことで、ここにきて複数の魔物の動きにも対応できるようになっていた。


(一体目は飛び掛かる)


(二体目は右へ回り込む)


(三体目は少し遅れる)


 頭の中で順番が組み立てられる。


 一歩目。


 飛び掛かってきた狼型魔物を躱し、そのまま首元へ剣を走らせる。


 二歩目。


 回り込もうとした魔物へ身体を滑り込ませ、横薙ぎ。


 最後の一体が距離を詰める。


 その瞬間――


 ――ズゴォォンッ!!


 腹の底へ響く重低音が森へ轟いた。


 レオンの大型魔法銃。


 放たれた魔弾が地面へ着弾すると、魔力が網のように広がり、最後の一体の動きを封じる。


「今だ!」


「はい!」


 カナトは迷わず間合いへ飛び込み、魔石を正確に断ち切った。


「いい連携だ!」


 近くで戦っていた騎士が思わず声を上げる。


 カナトは返事をする間もなく、次の敵へ視線を向けた。


◇


「リゼア!」


 レオンが叫ぶ。


「北西!」


「了解!」


 リゼアは杖を軽く振る。


 無詠唱で放たれた炎弾が弧を描き、魔物たちの進路を塞ぐ。


 爆炎が広がる。


 足を止めた魔物へ騎士たちが一斉に斬り掛かった。


「魔力は大丈夫ですか!」


 一人の騎士が叫ぶ。


「まだ余裕はあるわ!」


 リゼアは短く答えながら、次の炎弾を生み出す。


 蒼炎は使わない。


 今はまだ、その時ではない。


◇


「北側、押され始めています!」


 別の騎士が叫ぶ。


 森の奥から新たな魔物が姿を現した。


 数が多い。


 一体を倒せば、すぐ次が現れる。


 戦線は少しずつ後退し始めていた。


 その時。


「魔物が突破するぞ!」


 一体のヴォルクスハウルが騎士の隙間を抜け、村へ向かって駆け出した。


「しまっ……!」


 カナトが反射的に走り出そうとする。


「カナト!追うな!」


 レオンの声が飛ぶ。


「でも!」


「行かせろ」


 低く響いたのは、ギルフォードだった。


「隊長!」


「あのままでは!」


 ギルフォードは前だけを見据えていた。


「今、お前が隊列を崩せば北側が崩壊する。」


「守れる命より、失う命の方が増える。」


 カナトは唇を噛んだ。


 分かっている。


 頭では理解できる。


 それでも、目の前を魔物が抜けていく光景を見過ごすことしかできない自分が歯痒かった。


 その直後。


 村の方角から鬨の声が上がる。


「討ち取れ!」


 数人の騎士が槍を構え、一斉に狼型魔物へ飛び掛かった。


 連携した攻撃が魔物を捉える。


 最後は一人の騎士が剣を振り下ろし、魔石を砕いた。


 魔物は霧となって消えていく。


 カナトは小さく息を吐いた。


(……助かった。)


 だが、安心する暇はない。


◇


 その時だった。


 ルークの通信魔法が各防衛線へ響く。


『各班へ。』


 落ち着いた声。


 しかし、その声色はわずかに硬かった。


『東の未開領域より、大型の魔力反応を確認。』


 戦場に緊張が走る。


『反応、一。』


 一拍置いて、ルークが言葉を続ける。


『……訂正。』


『三。』


 さらに数秒。


『まだ増えています。』


 その報告を聞いたギルフォードは、大剣を静かに構え直す。


 森の奥から、大地を震わせるような重い足音が響き始めた。


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