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4-14 手がかり

挿絵(By みてみん)


【前回の振り返り】


右肩の回復に合わせ、一雄はついに身体を使った訓練を始めた。


収納棚で作られた迷路で課されたのは、敵役の陸を倒すことではなく、蓮を見つけ、二人で出口まで戻ること。


不意に陸と出くわし、とっさに動きかけた右腕。

それでも一雄は訓練を重ね、空き缶で注意をそらし、無理に戦わず退くことを少しずつ覚えていく。


誰かを逃がし、自分も次の判断ができる場所へ行く。

一人で敵を倒すためではない、誰かを守り、自分も生き延びるための「最初の一歩」を、一雄はようやく踏み出した。




【作品紹介】


本作は、noteで「フーデリオン」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。


本作は、38歳のおっさんフードデリバリー配達員が、配達で培った知識と未知数の鎧を纏い、未来からの襲撃者と戦う、音楽連動型の特撮風SF小説です。



【2作連動の仕掛け】


オヤッサンが一雄に告げた「歌は、やめるな」という言葉。なぜ彼は一雄の葛藤を見抜いていたのか?


そのすべての元凶となる、一雄の30年前の姿を描いた別世界線

     ▼ ▼ ▼

『魂のラブレターを運命のアイドルに直接届けたらストーカー対策会議の議題にされた件』

     ▲ ▲ ▲

と合わせて読むと、このセリフの本当の重みが突き刺さります。



【主題歌】

YouTube・noteにて順次公開!


①オープニングテーマソング

FoodFighter「紡ぐ意思〜フーデリオン〜」


②エンディングテーマソング

FoodFighter「流星」



作者が作詞しました。

ぜひ聴いて小説を楽しんでほしいです!


(リンクは後書きの下にあります)

【4-14 本文】


五月十七日。


「今日の訓練は、蓮を探して、二人で出口まで戻る」


陸が、工場の中央に立って言った。


一雄は右肩を少し動かしかけ、痛みが出る前に止めた。まだ無理に使うことはできない。


「あれ? 前と同じ訓練か?」


「少し違う。前は、蓮の居場所が分かっていた。今日は、工場の奥側にいるということしか教えない。それと、制限時間を設ける」


「奥側のどこか、ってこと?」


「そうだ。それと、訓練が始まったら声を出すな。蓮からも声は出さない。敵に居場所を知らせることになるからな」


蓮が頷いた。


「私も動かない。見つけてもらうまで、そこにいるよ」


「おおよその場所しか分からない。声は出さない。制限時間もある。難易度が一気に上がったな」


「実戦に向けての訓練だ」


「よし。それで制限時間は?」


「初めは十分。徐々に時間を減らしていく」


「十分か。蓮を見つけて、二人で出口まで戻る。時間を過ぎたら失敗だな」


「人は選択を迫られると、どうしても迷う。考える時間があるなら構わないが、実戦では迷い続けることが命取りになる」


「考えなきゃいけないのに、迷う時間はないのか。キツいな」


「探す時間だけじゃない。見つけたあと、出口まで戻る時間も残しておけ」


陸が天井を見上げた。


「爺。訓練配置を頼む」


『了解した。収納棚を移動する』


工場の奥で、低い駆動音が響いた。


高さ三メートルほどの収納棚が、車輪を回して動き出す。棚は互い違いに並び、工場の中央に折れ曲がった通路を作っていった。


棚の脚から固定具が降りる。


『配置完了。収納棚を固定した。訓練中、棚は移動しない』


蓮は一雄に見られないよう、訓練区域の奥へ入っていった。陸があらかじめ決めていた場所へ、音を立てないように身を隠す。


一雄は入口で待った。


「蓮は、奥側のどこかにいる。それ以上の情報はない」


陸が言った。


「声も出さない。動かない。位置を知らせるものも残さない。実際に助けに行くとき、相手の場所が正確に分かるとは限らないからな」


一雄は頷いた。


『訓練を開始する。制限時間は十分』


照明が落ちた。


一雄は迷路へ入った。


右手は使わない。走らない。肩に痛みが出たら中止する。


そして、十分以内に蓮を見つけ、出口まで戻る。


最初の分かれ道で、一雄は立ち止まった。


右は奥へ続いていそうだ。左はすぐに曲がり、その先が見えない。


一雄は右へ進んだ。


棚の間を抜け、二つ目の角を曲がる。人の姿はない。通路の先は、壁のように棚で塞がれていた。


一雄は来た道を引き返した。


さっきの分かれ道まで戻り、今度は左へ進む。棚の向こうから、かすかな物音がした気がした。


立ち止まり、耳を澄ます。


何も聞こえない。


音を確かめようとしているうちに、時間だけが過ぎていく。


一雄は先へ進んだ。角を曲がり、短い通路を抜ける。その先にも人影はなかった。


『残り八分』


天井から声が聞こえた。


一雄は足を止めた。


出口まで戻る時間も考えると、残り五分までには蓮を見つけたい。


蓮を見つけなければ、二人で帰ることもできない。だが、時間ぎりぎりまで探して、出口に戻れなくなるのも失敗だ。


一雄は、一度通った道を思い返した。


行き止まりの通路。左へ曲がった短い道。まだ確かめていないのは、最初の分かれ道からまっすぐ続く通路だ。


一雄はそちらへ向かった。


棚の端まで来たとき、棚の下のわずかな隙間に、靴の先が見えた。


一雄はすぐには近づかなかった。


棚の向こうに陸がいるかもしれない。周囲の音を確かめてから、身を低くして棚の端を回り込む。


蓮がいた。


彼女は一雄を見つけると、声を出さずに頷いた。


『残り四分』


一雄は出口の方角を思い出し、蓮に手で合図をした。


二人は来た道を戻る。最初の角を曲がり、通路を抜けようとしたところで、陸の姿が見えた。


一雄は止まった。


蓮はその後ろにいる。陸の横を無理に抜けようとすれば、どちらかが捕まる。


一雄は、蓮に来た道を戻るよう手で示した。


蓮は一瞬だけ迷ったが、すぐに頷いた。二人は分かれ道まで戻り、別の通路へ入った。


『残り二分』


出口へ続く通路に出た。だが、その手前に陸が立ちはだかっている。


一雄は一度足を止めたあと、蓮に別の通路を指し示した。


二人は来た道を戻り、迂回路へ進む。


『残り一分』


出口は近い。けれど、通路を一つ曲がるたび、先が見えなくなる。


二人は角を曲がった。


『訓練終了。制限時間を超過した』


照明が戻る。


一雄は息を吐いた。


「間に合わなかったか」


「蓮を見つけるのが遅かった。最後に陸が道を塞いでなければ……」


「敵が道を塞ぐのも訓練のうちだ」


陸が言った。


一雄は、口を閉じた。


「そうだな。探す時間と戻る時間だけじゃない。途中で道を塞がれたときのことも、考えておくべきだった」


陸は訓練区域の入口を指した。


「お前は最初に右へ進み、行き止まりまで行った。引き返して、次の道を探した。あれでは、同じところを何度も通ることになる」


「全部の通路を確かめようとしてた」


「時間内に全部を調べるのは無理だ。蓮がいる可能性の高い場所を考え、通った道を覚え、出口まで戻る時間を残す。限られた情報の中で、優先順位を決めろ」


蓮が一雄のそばに立った。


「見つけたとき、出口まで戻る道を考えてなかったよね」


「そうだな。見つけたところで、ほっとしちゃった」


「助ける相手を見つけるだけじゃ終わりじゃない。二人で帰れるところまでが訓練だ」


陸の言葉に、一雄は頷いた。


「分かった。次は、探す前に出口へ戻る時間を残しておく」


「あっ、そうだ。ひとつ提案。私たちには当たり前すぎて忘れてたけど、一雄はハンドサインを知らないでしょ?」


蓮は、一雄に向けて手を上げ、指でいくつかの形を作ってみせた。


「ハンドサイン? なにそれ?」


「声を出さずに合図する方法だよ。さっき私に進む方向を示してくれたけど、あれはただの身振り。意味を決めた合図なら、もっと細かいことも伝えられる」


「確かに。次は基本のハンドサインも教えないとな」


陸は顎をさすりながら答えた。


「じゃあ、今日はこのまま、もう一度やるぞ。次は、今みたいな身振りだけでどこまで伝わるかも意識しろ。正式な合図は、次回から使う」


「分かった」


陸が天井を見上げた。


「爺、配置を変えてくれ」


『収納棚の固定を解除する』


収納棚が動き出し、通路の形が変わっていく。


蓮が、今度は訓練区域の反対側へ向かった。どこに隠れるのか、一雄には見えない。


「場所の情報は?」


一雄が陸に尋ねた。


「奥側。細かい位置は分からない」


「声は?」


「使えない」


「制限時間は?」


「九分」


一雄は新しくできた通路を見た。


今度は、全部を調べようとしない。


時間をどう使うか。どこから探すか。見つけたあと、どの道で戻るか。


その順番を、頭の中で組み立てる。


『訓練を開始する。制限時間は九分』


一雄は、入口から一歩踏み出した。



【4-15へ続く】

ep.25 4-14「手がかり」をお読みいただき、ありがとうございました!


居場所は分からない。声も出せない。そして、刻々と減っていく制限時間。


前回と同じように見えた迷路での訓練は、わずかな条件の違いで、一雄にとって格段に難しいものになりました。


ようやく蓮を見つけても、そこで終わりではない。戻る時間も、道を塞がれる可能性も考えなければ、二人で帰ることはできません。


「助ける相手を見つけるだけじゃ終わりじゃない」陸の言葉が、今回の訓練の難しさを物語っています。


蓮の提案したハンドサインも、これからの連携につながる大切な気づきでした。

失敗を振り返り、次はどう動くかを考える一雄。


九分に縮まった制限時間の中へ踏み出す姿に、少しずつ積み重ねてきた成長が感じられる回でした。


【次回 ep.26 4-15「ピンクパンダ」明日18:00公開予定!】


ついに蓮の専用マシンが完成!「ピックアップ・オン!!」おなじみの掛け声とともに、コードネーム「ピンクパンダ」が起動します。

かわいらしい姿からは想像できない蓮の動きに、一雄も思わず見とれてしまい……!?


肩の痛みもなくなり、二人そろっての訓練が始まる中、工場に届く一本の緊急通信。


その知らせが、和やかな空気を一変させます――。新たなアーマーのお披露目と、動き出す事態。


明日も18:00にお届けします!




【作者からのお願い m(_ _;)m】


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【主題歌のお知らせ!!】

作者が作詞しAI(Suno)と制作した楽曲

YouTube・noteで順次公開中!


オープニングテーマソング

『紡ぐ意思〜フーデリオン〜』


エンディングテーマソング

『流星』


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挿絵(By みてみん)


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