欲張りな心
翌朝
今日は夕方からセリスとリュシアンの2人で研究所からの単発依頼があるだけで、それぞれ自由な時間を過ごしていた。
草原に腰を下ろし、研究書を開いたまま、リュシアンとセリスは議論を続けていた。
柔らかな風に髪を揺らしながら、彼女は愛らしい唇から難解な専門用語をいとも自然に紡いでいく。
リュシアンもまた、それを特別なこととは思わず応じていく。
言葉が重なり、思考が噛み合うこの時間は、驚くほど心地よい。
——こんなにも話が合う女性は、他にいない。
時折見せる控えめな笑顔。
リュシアンの言葉に真剣に耳を傾け、目を輝かせながら自らの持論を語るその姿に、彼の胸の奥が不思議と温かくなる。
ふと、視界の端にヴァルの姿を捉えた。
その瞬間、彼女の視線がわずかに揺れる。
ほんの一瞬、彼女の視線はリュシアンではなく、彼を追った。
すぐに戻ってきたはずなのに。
確かに目は合っているのに。
どうしてだろう。
胸の奥に、言葉にできない疎外感が残る。
……俺は、こんなにも欲張りだっただろうか。
昼前。
リュシアンは一人、街へと繰り出した。
強い日差しがリュシアンのエメラルドの瞳を照らす。
露店の影が、石畳に長く伸びていた。
彼はしばらくアクセサリーを見つめた後、静かに口を開いた。
「これを」
それは、厚みのあるシルバーの指輪だった。
中央には、小さな四角い透明の石がはめこまれていた。
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