10 ハレベルの最終目標
なぜだろう。
なぜ私はこんなに怒っているんだ。
「なにをやっている。離せ。」
状況を見た私は、何かがプツンと切れるように沸々と怒りがこみ上げた。
「ぉっと~。いやいや、ハレベルちゃんには本当頭が上がらないな。
僕が思っていたよりも、随分と思い入れが深いようだ。」
「離せっ…!!!」
私は、デオラデの腕を掴んだ。
なんでこんなことをしているかわからなかった。
たまたま保健室の前を通りかかったら、デオラデの声がしたんだ。
別にどうってことない。ただ体調が悪くて、保健室に来ていただけかもしれない。
耳を澄ませて中の様子を探る必要なんてないのに、なぜか中の様子が気になって仕方がなかった。
すると、デオラデの困ったような声が聞こえた。
いつもだったらスルーすることを、なんで私は…
この前もそうだ。実習の時もそう…。
わからない。
でも、デオラデの困った声が聞こえると
どうしても…。
「ぁ~、ハレベルちゃん、申し訳ないねぇ。でもこれは理事長からの頼まれごとでもあるんだよ。
理解してくれるかな?と、いうわけでデオラデくんをもう少し預けて頂いても?」
「だめだ。これ以上は許さない。」
どうして。どうして、怒りが止められないのか分からない。
でも私は、デオラデをもうこの場にいさせたくないと思った。
デオラデがケイトに触れられていることに憎たらしいとさえ思った。
私はデオラデの腕を思いっきり引っ張り、起き上がらせた。
引っ張り上げた腕を強く掴んで、保健室のドアを思いっきり開けた。
そこからは記憶にないくらい、逃げるように走った。
走って走って走って______
デオラデとまたあの場に行きたい…。
そう思って、いつもの裏庭まで無我夢中で走った。
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「はぁはぁはぁ…。」
ハレベルさんも僕も、この場にたどり着くまでに随分と息が切れてしまっていた。
ハレベルさんはまた僕を助けてくれた…。
いつも僕が困っているときに、助けてくれる…。
嬉しさと同時に、自分が「情けないな」と感じ
胸が痛くなった。
「また…助けてくれたね。。ありがとう…。
ごめん…。いつも迷惑をかけてばかり…。」
本音がポロリと漏れてしまった。
こんないつも助けてもらってばかりで…僕はだめだなと思ってしまった。
「…。」
雨がポツポツと降り出してきた。
どんどん雨音が強くなった。
ハレベルさんは下にうつむくばかりで、何も言わなかった。
「ハレベルさん…?」
「私は魔法が嫌いだ。だいっきらいだ。」
「え…?」
不意に、ハレベルさんは僕に強い言葉を放った。
ハレベルさんは顔をあげず、下を向いていた。
「…魔女も…魔法も…みんななくなればいい…!」
「は、はれべるさん…?」
「デオラデだってわかるだろう!
君だって、魔女じゃなければ…魔法が使えなければ…、こんな世界がなければ…
この学園に来る必要はなかった!もっと言えば、お前のその呪いだって!身体だって!
魔法のせいだと思わないのか!」
ハレベルさんはいつもと違った。ひどく動揺しているようだった。
なんでこんなに怒っているのか、僕にはわからなかった。
きっと雨のせいだ…。
僕はそう思ったけど、彼女の目は濡れていた。
「…。」
困惑した僕は何も答えることができなかった。
雨なのか、涙なのか、わからなかった。
でも、いつもと様子が違ったんだ。
「私は憎い…。魔法の存在自体が…。
魔法が…魔法さえなければ…!
だから…、だから私は魔女の存在を消したい…
私は…私の魔法で魔女を全滅させ、この世から魔法を消し去りたい…っ。」
消え入るような、でも魂が籠った声で彼女はそう言った。
雨音は一段と強くなり、辺りの草花はぐしゃぐしゃに濡れていた。




