第九話 仲直りはスイーツで
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里は仲間になった蓮葉雨幸、新原桐菜の他に嘗て戦士として戦っていた赤園風布花と出会う。ある日、雨幸は嘗てのペリドットの戦士であるリーナ・ジーニアスと出会い特訓を受けたことで改めて戦士をしての覚悟を決めるのだった。
ガーネットの戦士、チェリーエッジである新原桐菜は忙しい日々を送っていた。日本舞踊の稽古に加えダークサイレンスとの戦いで学校の友人と遊ぶ時間はどんどん削られて行くばかりであった。ある日、桐菜はいつものように友人と下校をしていた。
「ねぇ桐菜。」
「何~?」
「今度の週末また新しいコスメのお店出るみたいなんだけど。」
「マジ⁉行きた~い。」
友人は新しい化粧品の店に桐菜を誘おうとする。桐菜も勿論行こうと思うが、桐菜は週末も稽古で忙しかった。
「ああ、ごめん。やっぱ週末も稽古があるからさ。」
「そっか……、じゃあ仕方がないよね。」
友人は桐菜が週末に遊びに行けないことを知ると残念がる。しかし友人は桐菜に対して少し気になることがあった。
「桐菜、家の関係で付き合い悪いのはわかるんだけど最近年上の人と一緒にいること多くない?」
「え、もしかしていのりっちとゆっきーのこと?」
「多分そう、それに最近中学生の子も一緒にいるみたいだし。」
「ああ、ふぅちゃんのことね。」
友人は桐菜が依乃里達と一緒にいることが多いことを気にしていた。そして友人は拗ねてしまう。
「桐菜、その人達と一緒にいるのが楽しいんじゃないの?私達といるよりさ。」
「そ、そんなことないよ。いのりっち達も勿論楽しいけどさ、そんな見捨てるようなこと考えてないって。いのりっち達とはさ、ちょっと大事なことを一緒にしてるっていうか……。」
「大事なことって何?私達と遊ぶことより大事なことってあるの?」
「いや、まあ、うん……。」
友人は桐菜が自分達のことを快く思っていないと思っていた。勿論桐菜は弁解するが、ダークサイレンスとの戦いを打ち明ける訳にも行かず言葉が詰まってしまう。
「もう知らない!」
「あ、ちょっと待ってよ……。」
友人は桐菜を置いて先に帰ってしまう。
「そんな……。」
桐菜は友人から見捨てられ、悲しみに打ちひしがれてしまうのだった。
一方その頃、ダークサイレンスでは相も変わらずスノアが大きないびきを掻いて寝ていた。
「んがぁ~。」
「……ったく、こいつはずっと寝てるな。」
「まぁしょうがないでしょ。スノアは出会った時から自堕落でしたからね。」
ブラクスとクリークはそんなスノアを呆れながら見ていた。そんな中、スノアが久しぶりに起きて二人に話し掛ける。
「あ、ブラクスにクリーク。どうしたの?」
「どうしたもこうしたもねぇよ。また戦士が増えやがったんだ。」
「ええ、しかも新たな戦士であるレッドライテストは小柄ながらもかなり手練れた様子で戦っていました。我々にとってはかなりの脅威と言えます。」
「そうなんだ~。」
呑気に話し掛けるスノアに、ブラクスとクリークはレッドライテストのことを話すがスノアは相変わらず驚くような素振りも見せなかった。
「おい、せっかく起きたんだ。たまにはお前が人間界に侵攻しに行け。お前も今の奴らの戦力を知っておいた方がいいからな。」
「えぇ~、面倒くさい。でも行くか。」
ブラクスはスノアに人間界に行くことを勧める。スノアは面倒に感じるが嫌々人間界に赴くのだった。
そして週末、桐菜は友人と険悪になったままのため憂鬱な気分だった。そしてこの日も変わらず日本舞踊の家元である家での稽古があった。
「ママ、準備できたよ。」
「丁度良かったです桐菜さん。今日は体験の方がまたいらしているので紹介しますね。」
「体験?」
着物に着替えた桐菜は母親の元に行く。すると桐菜の母親は桐菜に体験入学に来た人を紹介する。
「初めまして、あなたが桐菜さんですね。」
「あ、どうも……。」
桐菜の前に現れた女性は黒髪のストレートロングをしており、如何にも清楚華憐といった振る舞いをしていた。
「私は三浦竹月と申します。21歳で、今は大学に通っております。どうぞ、本日はよろしくお願いします。」
「お願いしま~す……。」
その女性は三浦竹月と名乗る。桐菜は竹月の丁寧な口調に少し距離感を感じてしまう。
「それでは桐菜さん、竹月さん。稽古の方を始めましょう。」
「はい、ママ。」
「宜しくお願い致します。」
そして桐菜と竹月は稽古を始める。竹月は日本舞踊が初めてとは思えない程覚えが早く、瞬く間に桐菜と同じくらい綺麗な舞を見せていた。
「うわ……、すご……。」
桐菜は竹月の美麗な舞に目を奪われてしまう。そして桐菜と竹月はこの日の稽古を終えるのだった。
「今日はこのくらいにしましょう。」
「はぁはぁ……、お疲れ……。」
「お疲れ様です、桐菜さん。」
桐菜はいつものように稽古に疲れてしまうが、竹月に疲れている様子はなかった。
「ていうか竹月さんだっけ?こんなきつい稽古について来るとか凄いね。」
「いえ、桐菜さんに比べれば大したことはありません。本日は体験でしたし。」
桐菜は竹月に感心するが、竹月は謙遜する。そんな竹月の態度も桐菜は感心していた。
「桐菜さん、竹月さんは年上なのですよ。もう少し敬う態度を取りなさい。」
「いいのですよ先生。私は桐菜さんと仲良くなりたいですし。」
桐菜の母親は竹月に敬語を使わない桐菜を叱るが、竹月は特に気にしていない様子だった。そして桐菜と竹月の二人はそれぞれ私服に着替える。
「先生、お稽古も終わりましたし桐菜さんと共に台所をお借りしても宜しいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
「え、キッチンに行って何する気?」
ふと竹月は桐菜の母親にキッチンを借りたいと言う。母親はすんなり受け入れるが桐菜は少し違和感を覚えていた。
「それでは桐菜さん、参りましょう。」
「いや、ちょっと。」
少し混乱した様子の桐菜を連れて竹月はキッチンに行くのだった。
「さて桐菜さん、早速作りましょう。」
「いや、何を⁉」
マイペースに事を進める竹月に対し、桐菜は強めに問い掛ける。
「お稽古でお疲れでしょうし、ここは甘い物ということでパフェを作ります。」
「パフェ⁉ここで⁉」
竹月は桐菜と共にパフェを作ろうとしていた。桐菜はそれに驚いてしまう。
「はい、材料も準備しておりますし。」
竹月はそう言って自身の鞄から材料を取り出す。
「うわ、本当にパフェを作る気なんだ……。」
竹月の持って来たパフェの材料に唖然とする桐菜だったが、そんな桐菜を気にも留めず竹月はパフェを作り始める。
「桐菜さん、あなたのことは風布花ちゃんから伺っておりました。是非とも今のガーネットの戦士にお会いしたいと思い、つい伺ってしまいました。」
「え、じゃあもしかして先代のガーネットの戦士?」
竹月はパフェを作る準備をしながら桐菜に話す。竹月は四年前、桐菜と同じくガーネットの指輪の資格者として戦っていた。そのことを知った桐菜は驚いてしまう。
「そっか、いつか私も先代に会う時が来ると思っていたけど、まさか先代がこんな礼儀正しい人だったとは……。」
「いえ、あまり畏まらないで下さい。私は桐菜さんと仲良くなりに伺ったのですから。」
「そう……。じゃあさ、つっきーって呼んでいい?」
「はい、構いません。」
桐菜は竹月の礼儀正しさに畏まってしまうが、竹月はあまり気にしていない様子だった。そして桐菜は竹月をつっきーと呼ぶようになる。
「つっきーもダークストーリーズだっけ?何かそんな名前の敵と戦ってたんでしょ。」
「はい、あの時は私も桐菜さんと同じ高校生でした。今となっては良き思い出です。」
「そっか、つっきーも高校生だったんだ。友達と遊ぶ時間とか無かったんじゃない?」
桐菜は竹月が戦っていた当時、自身と同じ高校生だった事実を知る。そして竹月も自身と同じ大変な思いをしていたのかと問い掛ける。しかし竹月の返答は意外なものだった。
「いえ、当時はあまり学友と言えるような方はおりませんでした。私もこのような振る舞いをしていましたから、学校の方とは少し距離が出来ていました。ですからご学友の方と仲良くしている桐菜さんが羨ましいです。」
「そうなんだ……。」
桐菜は竹月が高校時代、友人に恵まれなかったことを知ると少し申し訳ない気持ちになる。そして桐菜は自身の悩みを打ち明ける。
「実はさ、今友達と仲悪くなっちゃってるんだよね……。」
「あら……。」
竹月は桐菜の悩みに少し深刻な表情を浮かべるのだった。
一方その頃、依乃里、雨幸、風布花の三人はとあるスイーツショップでパフェを食べていた。
「桐菜ちゃん、大丈夫かなぁ……?」
「依乃里さん、桐菜さんがどうかしたんですか?」
依乃里は桐菜のことを思って溜め息を吐く。疑問に思った雨幸は依乃里に問い掛ける。
「うん、昨日桐菜ちゃんから電話で相談されてね。何か私達と一緒にいるのが多くなって友達と仲悪くなっちゃったんだって。」
「桐菜さん、ただでさえ家のお稽古で大変なのにダークサイレンスとの戦いにも時間を割いているんですよね。確かに友人の方と遊ぶ時間がどんどん削られているかも知れません。」
依乃里は桐菜から受けていた相談を話す。風布花は桐菜の置かれている状況を察し、同情する。そして風布花はパフェを食べながらあることを思い出していた。
「そう言えば、パフェを食べているとあの人を思い出します。」
「風布花ちゃん、あの人って誰ですか?」
「四年前の戦士にいたんです、パフェが大好きな方が。」
「へぇ~、パフェが大好きね……。」
風布花はパフェが大好きだという仲間のことを思い出していた。そして風布花は連鎖的にもう一人思い出す。
「あと、四年前のガーネットの戦士の方が桐菜さんに会いたいと言っていましたね。」
「先代のガーネットの戦士ですか?」
「はい、三浦竹月さんって言うんですけどとても桐菜さんに興味を持たれていました。」
「そっか、桐菜ちゃんもついに先代に会うんだ……。」
三人はそんな会話を交わしながら気ままにパフェを食すのだった。
そしてまた時を同じくして、桐菜と喧嘩してしまった友人は一人化粧品店を訪れていた。
「桐菜の奴、私の気持ちも知らないで……。」
化粧品を物色しながら友人は桐菜のことを考えていた。
「桐菜ともっと遊びたいのになぁ……。」
そんなことを呟く彼女に、横からスノアが話し掛ける。
「ねぇ、何をそんなに落ち込んでいるの?」
「え?……って、怪物⁉」
「大丈夫、危害は加えないよ。」
スノアは優しい口調で桐菜の友人に話し掛けると、悩みを聞き出そうとする。
「ほーら、立ち話もなんだしどこか静かなところで。」
「は……、はい。」
友人はスノアに言われるがままついて行き、静かな公園のベンチに移動するのだった。
桐菜と竹月は引き続き共にパフェを作っていた。竹月は桐菜から一連の悩みを聞いていた。
「そうですか……、お稽古に戦いもあってご友人と遊べないと……。」
「そうなんだよね。今日だって遊びに行こうって誘われてたのに稽古があるからって断っちゃってさ、そうしたらいのりっち達と一緒にいることを責められて……。」
悲しげな表情を浮かべながら話す桐菜に、竹月は微笑むとパフェを作りながら話す。
「そのご友人の方にもパフェを食してもらいましょう。」
「え?」
竹月は桐菜の悩みにパフェで解決することを提案する。その竹月の回答に桐菜は唖然としてしまう。
「パフェを食べたところで仲直りなんか……。」
「そうですか。」
桐菜は竹月の回答に納得が行かず、僻んでしまう。そんな桐菜に、竹月は語りだす。
「桐菜さん、ご友人というのはどういう存在なのですか?」
「え?それはまあ、一緒に遊んだりする関係で……。」
「確かにそれもご友人との一つの在り方だと思います。しかし、ご友人なら必ず共に遊ばなければならないなどということはないと思います。」
「うん……。」
「要は思いを伝えれば良いのです。パフェはほんのきっかけに過ぎません。」
竹月は桐菜に、友人に思いを伝えるということを話す。その言葉に桐菜は少し胸打たれたようだった。
一方、桐菜の友人はスノアに桐菜のことを話していた。
「ふぅん、君の友達の桐菜って子が君以外の人と一緒にいるのが多くて妬いちゃったんだ。」
「まあ、そんなところ。私ももっと桐菜と遊びたいのに……。」
スノアは珍しくじっくりと桐菜の友人の相談を受けていた。そしてスノアは彼女に助言する。
「その友達は最低だね。親友の君じゃなくて他の人と一緒にいるんだもん。」
「そうかな……?」
スノアは桐菜のことを最低だと言い放つ。友人も桐菜を憎んでいるわけではなく、あくまで仲直りをしたいと考えていたのだが、スノアの言葉で考えが変わり始める。
「桐菜はやっぱり、私のことが嫌いなのかな……?」
「きっとそうだよ。だから君も桐菜って子を憎むんだ。」
「桐菜は……、酷い人……。」
桐菜の友人は段々とスノアに言われるがまま桐菜を憎むようになる。これこそがスノアの目的だった。
「よし、悪意が出来てきたね。これなら……。」
スノアはそう言って桐菜の友人の頭に手を翳す。
「その悪意、解放しなよ。」
「え……?う、うぅ……!」
桐菜の友人は苦しみ出す。そして頭から黒いオーラが広がり、そこからマリスが産まれる。
「ふ~ん、中々良いマリスだね。」
そのマリスはかなり禍々しい見た目をしており、スノア自身も感心する程だった。
「これは、かなり奴らを苦しめられそうだ。」
スノアは不気味に微笑みながらそう言う。そして気を失ってしまった桐菜の友人を冷たい目で見る。
「ありがとう、君のおかげで強そうなマリスを産み出せたよ。君はそこで不快な音に苦しむといいさ。」
そう言ってスノアは桐菜の友人を見捨て、マリスを連れて街へ行くのだった。
パフェを作る桐菜と竹月。パフェの完成も間近に迫っていた。桐菜はふと気になっていたことを尋ねる。
「そう言えば、つっきーはパフェよく作るの?」
「ええ。恋人がパフェ大好きな方で、よく作って差し上げているのです。このパフェも、一つは恋人にと。」
桐菜は竹月がパフェを作り慣れていることが気になっていた。そして竹月は恋人のためによく作っていることを明かす。
「つっきーの恋人か……。つっきーと釣り合う人ならきっとカッコ良くて完璧な人なんだろうな。」
「ええ、いつも自分の気持ちに正直で素敵な方です。」
竹月は桐菜に恋人のことを自慢げに話す。桐菜は竹月の恋人に長身で美形の成人男性を想像していた。そうしている内に二人はパフェを作り上げる。
「桐菜さん、パフェが完成しましたよ。」
「おぉ~、すご!」
桐菜は今までに作ったことのないパフェの出来映えに感動する。そして竹月は冷蔵庫にパフェをしまう。
「それでは暫くここに置いて、後日お渡し致しましょう。」
「オッケー。」
桐菜は友人にパフェを渡すことに期待が高まる。しかしそんな時、竹月が突然耳を塞いで苦しみ出す。
「どうしたのつっきー⁉」
「申し訳ございません、突然いびきのような騒音が……!」
「いびき……、この前のスノアって幹部だ。」
桐菜は竹月のいびきのような騒音という言葉からスノアが現れたことを察する。
「行って下さい桐菜さん、ダークサイレンスから世界を守れるのはあなた方しかいません。」
「わかった、待っててつっきー。」
桐菜はそう言うと家を飛び出し街に急ぐのだった。
街ではスノアがマリスを暴れさせていた。そこに依乃里、雨幸、風布花の三人が駆けつける。
「スノア!」
「これ以上は好きにさせません!」
「あなたをここで倒します!」
「倒すだって?できるかなぁ~?」
三人はそう言ってフラヴァイスを持って構える。しかしスノアは余裕気な態度を崩さなかった。そして勢いよく振り下ろして開き、口の前に持って行く。
「バラ!ダイヤモンド!フラメンコ!」
「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」
「カーネーション!パール!チャールストン!」
三人がそれぞれそう叫ぶとフラヴァイスから音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊るよ!」
「踊ります!」
「踊ってみせます!」
そして三人はそれぞれのフラヴァイスから流れる音楽に乗せて踊る。次第に三人の体は戦士へとその姿を変える。
「情熱の舞姫、ローズレーザー!」
「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」
「軽快な舞姫、レッドライテスト!」
「情熱のメロディー、響かせてあげる!」
「軽快なステップに、ついて来られますか?」
ローズレーザー、ベリースパークラー、レッドライテストの三人は名乗り、スノアとマリスに向かって走り出す。
「「「はぁぁ!」」」
三人はダンスを踊りながらマリスを攻め立てる。
「レーザーストライク!」
ローズレーザーはマリスに戦いを任せて佇むスノアにレーザー光線を放つ。しかしスノアは軽く払ってしまう。
「僕にその程度の攻撃が通用するとでも思った?眠たいねぇ~。」
「そんな……!」
スノアはローズレーザーを挑発する。そしてスノアが産み出したマリスも中々に手強かった。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」
ベリースパークラーとレッドライテストはマリスの攻撃で弾き飛ばされてしまう。
「雨幸ちゃん!風布花ちゃん!」
ローズレーザーは二人の名を叫ぶ。そしてローズレーザーはいつの間にかスノアとマリスに挟まれてしまった。そこに漸く桐菜が駆けつける。
「いのりっち、ゆっきー、ふぅちゃん、お待たせ!」
「桐菜ちゃん!」
桐菜は三人がピンチに陥っている状況に焦ってしまう。
「ヤバ!早くしないと!」
桐菜はそう言ってフラヴァイスを持って構える。
「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」
桐菜がフラヴァイスにそう叫ぶと音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊っちゃうよ!」
そして桐菜はフラヴァイスから流れる音楽に乗せて日本舞踊を踊る。そして桐菜はチェリーエッジへとその姿を変える。
「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」
チェリーエッジは名乗り、マリスに立ち向かう。
「鋭刃の舞!」
チェリーエッジはマリスをすぐに倒そうと攻撃を仕掛けるが、それでもマリスには通じなかった。
「嘘、効かないんだけど⁉」
チェリーエッジは今までにないマリスの強さに驚いてしまう。
「そうなんです桐菜ちゃん、私達だけじゃ手に負えなくて。」
「恐らく、このマリスを産み出した人間の悪意が大きいのかと。」
「マジ⁉」
ベリースパークラーはチェリーエッジに駆け寄って話す。レッドライテストはマリスの強さが悪意の大きさによるものだと推測していた。そんな中、ローズレーザーと交戦中のスノアが高らかに笑いながら話す。
「ははは!このマリスは友達と喧嘩したって子から産み出したマリスなんだ。何となく未練タラタラだから憎むように仕向けたんだよ。お陰で強いマリスを産み出せたよ!」
「そんな、酷い!」
スノアは産み出したマリスについて語っていた。わざと悪意を増幅させたスノアにローズレーザーは怒りを感じていた。
「友達を、憎む……?」
チェリーエッジはスノアの話に、喧嘩した友人のことを重ねていた。
「もしかして、悪意ってこんな些細なことから産まれるものなのかな……?」
チェリーエッジは友人のことを考え、俯いてしまう。しかしチェリーエッジは、同時に竹月の言葉を思い出す。
「要は思いを伝えれば良いのです。パフェはほんのきっかけに過ぎません。」
「もし悪意が些細なことから産まれるなら、仲直りだって些細なことで出来る。そうだよね、つっきー!」
チェリーエッジは悪意に負けないという覚悟を決め、マリスに向かって走り出す。
「うおぉぉぉぉ!」
チェリーエッジは武器の鉄扇を振り回してマリスを攻め立てる。
「大きな悪意があるならこっちは大きな友情がある!こんなところで負けたらずっと仲直りできないままなんだー!」
「桐菜ちゃん、もしかして友達と喧嘩したことを思い出してるんじゃ……。」
ローズレーザーはチェリーエッジのいつにない気迫に先日受けた相談のことを思い出していた。そしてチェリーエッジの猛攻にマリスは手も足も出せずにいた。
「そんな、あれだけの悪意で産み出した僕のマリスに勝てるはずがない!」
スノアは劣勢になるマリスに怒りを感じていた。そんなスノアをローズレーザーは弾き飛ばす。
「はぁぁ!」
「何⁉」
スノアを弾き飛ばしたローズレーザーは銃口を向けながら話す。
「悪意だけが強いなんて思わないで!どんなに強い悪意が立ちはだかっても、私達はそれより強い思いで戦ってるんだから!」
ローズレーザーのその言葉に呼応するかのように、チェリーエッジは武器の鉄扇に強いエネルギーを込める。
「美麗千万、鋭刃の舞!」
チェリーエッジの背後には無数の桜が舞い、そして無数の刃がマリスに向かって飛んで行く。串刺しにされたマリスはそのまま消滅してしまう。
「くっっ……、僕のマリスが……!」
スノアは悔みながら戦いを止め、人間界を去るのだった。
「ふぅ……、終わった……。」
戦いを終えたチェリーエッジは疲れて桐菜の姿に戻る。そして膝から崩れ落ちそうになる桐菜を雨幸と風布花が抱き留める。
「桐菜ちゃん!」
「大丈夫ですか?」
「うん……、何とかね……。」
そして依乃里も桐菜の元に駆け寄り、声を掛ける。
「桐菜ちゃん、もしかしてさっきのマリスに友達と喧嘩したことを思い出しちゃった?」
「まあね、いのりっち。」
依乃里は桐菜が友人とのことを引き摺っていたことを心配していた。しかし桐菜の表情は明るかった。
「でも大丈夫だよいのりっち、仲直りの方法なら見つかったから。」
「そっか、それなら良かった。」
依乃里は桐菜の言葉に安心する。そして桐菜は竹月のことを思い出す。
「そうだ、つっきー!」
桐菜はそう言って竹月の元に戻ろうと走り出す。
「つっきー?」
「もしかして、竹月さん?」
風布花はつっきーというのが竹月のことだと推測し、皆で桐菜の後を追いかけるのだった。
「つっきー!」
「桐菜さん、勝って来たのですね。信じていましたよ。」
家に戻った桐菜。竹月は笑顔で桐菜を迎えていた。
「竹月さん、やっぱり桐菜さんに会っていたんですね。」
「風布花ちゃんも、皆さんに馴染んで来ましたね。」
風布花も竹月に話しかける。そして桐菜は竹月の手を握って目を輝かせる。
「つっきー、私つっきーのお陰で強いマリスに勝てたよ!」
「それは良かったです。桐菜さんのご友人を想う気持ちが勝てたのですね。」
「つっきー!」
桐菜は思わず竹月に抱き着いてしまう。
「後は友達と仲直りするだけだね、桐菜ちゃん。」
「応援しています、桐菜ちゃん。」
依乃里と雨幸も桐菜の背中を押す。そして友人との仲直りに希望を見出した桐菜を見守り、竹月は桐菜の家を後にするのだった。
翌日、桐菜は友人を呼び出していた。
「ごめん、急に呼び出したりして。」
「桐菜、何の用なの?」
友人の視線は冷たかった。しかし桐菜は勇気を出して友人の前にパフェを出す。
「あのさ、パフェを一緒に食べない?作ったんだ。」
「パフェ?桐菜が作ったの?」
友人は桐菜がパフェを作ったことに驚く。そして友人は桐菜と共にパフェを食べるのだった。
「美味しいじゃん、桐菜。」
「でしょ、頑張ったんだ。」
友人は桐菜のパフェに感心していた。そして桐菜は友人を真っ直ぐ見つめて話す。
「私ね、家のこと以外に大事なことをしているんだ。いのりっち達はその仲間なの。でもまた一緒に遊べるように時間を作るから、だからその……、これからも友達でいて下さい!」
「桐菜……。」
友人は桐菜の心からの言葉に胸打たれる。
「ごめん桐菜、私も意地を張っちゃってたみたい。桐菜が忙しいのわかってたはずなのに。桐菜の言う大事なこと、詳しく聞かないから応援してるね。」
「ありがとう。」
桐菜の友人も桐菜に謝り、こうして二人は無事に仲直りして共にパフェを食べるのだった。