第十一話 新たな舞台はライオンと共に
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里は仲間になった蓮葉雨幸、新原桐菜の他に嘗て戦士として戦っていた赤園風布花と出会う。依乃里を戦士にした謎の女、黒崎真理紗が嘗てのアメジストの戦士である鈴木林檎の前に現れる。しかし真理紗は大事なことをあくまで依乃里に話すと言い姿を消す。そして依乃里の前に再び姿を現した時、ブラックチャームという戦士になるのだった。
「魅惑のムーヴに、酔いしれなさい。」
「お前……!」
ブラックチャームはブラクスを挑発する。ブラクスはブラックチャームの登場に苛立ち歯ぎしりをする。しかしブラックチャームはジェントルピューマと手を取りながら社交ダンスの舞台に行くようにゆっくりと歩く。
「ふざけやがって!」
ブラクスは怒ってブラックチャームを攻撃する。しかしブラックチャームは平然とした様子で躱す。そしてブラックチャームはジェントルピューマとタンゴを踊りながらブラクスを蹴りつける。
「はぁぁ!」
「うおっ⁉」
ブラクスはブラックチャームの攻撃に押される。そしてブラックチャームは激しいタンゴを踊りながら華麗な足技でブラクスを翻弄する。その華麗な戦いぶりは歴戦の勇者を思わせるものだった。
「強い……。」
ブラックチャームの戦いに思わず目を見張ってしまうローズレーザー。そしてブラックチャームはローズレーザーの方を見る。
「立ち上がりなさい桜間依乃里。」
「え?あ、うん。」
ローズレーザーはブラックチャームに言われるがまま立ち上がりブラックチャームの元に行く。するとジェントルピューマはブラックチャームの元を離れマリスに飛び掛かる。そしてブラックチャームはローズレーザーの手を取りタンゴを踊り出す。
「え、ちょっと!」
ローズレーザーは出会った時と同じようにブラックチャームとタンゴを踊る。そしてローズレーザーとタンゴを踊りながらブラックチャームはブラクスを翻弄する。
「くそっ、あの獣人野郎以外とも踊れるのかよ!」
ブラクスはブラックチャームがジェントルピューマ以外と踊れる事実に苛立つ。しかしブラックチャームは共に踊るローズレーザーを翻弄しながらブラクスを攻撃する。そしてジェントルピューマは獣人のような荒々しい動きでマリスを攻め立てる。
「これが、真理紗さんのパートナーの獣人……?」
「踊らなくても戦えるんかい。」
ベリースパークラーとチェリーエッジはジェントルピューマの戦いに目を丸くする。
「さあ、そろそろ戦いを終わりにするわ。」
ブラクスと交戦中のブラックチャームはそう言ってジェントルピューマとマリスが戦っている所に歩いて行く。
「ピューマ、決めるわよ。」
「がぁ~。」
ブラックチャームはジェントルピューマにそう言うと手を取りダンスの態勢に入る。
「ダンサ・エクスプロシオン。」
ブラックチャームはそう言ってジェントルピューマとタンゴを踊り爆発を起こす。その爆発に巻き込まれたマリスは消滅してしまう。
「俺の渾身のマリスが負けただと⁉くそっ、ここは退くか。」
ブラクスはマリスが消滅した悔しさを噛みしめ、人間界を去るのだった。やがて騒音が止んだように人々が立ち上がり歩き出す。
「どうやらまた、平穏が訪れたようね。」
ブラックチャームはそう言うと元の真理紗の姿に戻る。後を追うように他の皆も元の姿に戻り、真理紗に歩み寄る。
「真理紗、久しぶり。」
「桜間依乃里、次に会う時は戦場でと決めていたわ。戦士として成長したようね。」
依乃里は恐る恐る真理紗に話し掛ける。真理紗は微笑みながら答える。どうやら真理紗は今の依乃里を喜んでいるようだった。
「それでは、今から大事なことを話すわね。」
「うん……。」
そして真理紗は大事なことを話すと言い、依乃里らは身構える。
「桜間依乃里、あなたはこれからもっと強くならなければならないわ。これからダークサイレンスと戦うためにね。そのためにまずはあなたの持っているフラヴァイスを出してもらえるかしら?」
「うん……。」
真理紗は依乃里がもっと強くなる必要があると言い、依乃里にフラヴァイスを出させる。依乃里は言われるがままフラヴァイスを手の平に乗せて真理紗の前に出す。すると真理紗は突然、足を高らかに上げ依乃里のフラヴァイスを蹴り上げる。
「え?」
「ピューマ。」
突然の状況に唖然とする依乃里。そして真理紗はジェントルピューマを呼び、ジェントルピューマは飛び上がったフラヴァイスまで飛び上がってフラヴァイスを齧る。
「「「「え?」」」」
これには依乃里だけでなく雨幸、桐菜、風布花の三人も唖然としてしまう。そしてジェントルピューマは依乃里のフラヴァイスを噛み砕き、壊してしまうのだった。
「「「「えええええぇぇぇぇぇ~~~~~~~!」」」」
依乃里ら四人はこれ以上ない程の大きな声で驚く。そしてジェントルピューマは着地してフラヴァイスを壊し終えると元の小さな獣の姿に戻り真理紗の手の平に乗る。
「壊しちゃった……。」
「依乃里さんのフラヴァイスを……。」
「ジェントルの欠片もないじゃんこのピューマ……。」
「これでは依乃里さんはダークサイレンスと戦えません……。」
四人は壊れた依乃里のフラヴァイスの残骸を見ながら唖然としていた。そして四人は一斉に真理紗を睨み付ける。
「ちょっと真理紗!言っていることとやっていることが違うじゃん!」
「ただでさえ厳しい戦いを強いられているんですよ⁉」
「あんた人の心とか無いわけ⁉」
「一体何を考えているんですか⁉」
四人は一斉に真理紗を責める。しかし真理紗は平然とした様子で微笑んでいた。
「いいこと?桜間依乃里はこれからもっと強くならなければならない。それには今持っている力を一旦捨てなければいけないということよ。」
「全くわからない……。」
真理紗は依乃里のフラヴァイスを壊したことに自身の考えを言うが全く理解し得ないものだった。そんな依乃里に真理紗はある物を差し出す。
「桜間依乃里、あなたにはまたこれをあげるわ。」
真理紗はそう言って依乃里の胸元のポケットに薔薇の花を入れる。
「またこの薔薇の花をフラヴァイスにするってこと?」
「そう、でもそれだけではまた同じ力を手に入れるだけだわ。だからもう一つプレゼント。」
真理紗は再び依乃里が薔薇の花をフラヴァイスに変えることを考えていた。しかしそれだけではなく、真理紗は依乃里の右手を持ち、中指に指輪を嵌める。
「これは……、ルビーの指輪?」
「察しがいいわね。このルビーの指輪はあなたのもう一つの力よ。」
真理紗が依乃里に渡したのはルビーの指輪だった。そして真理紗は依乃里ら四人に背を向け、去ろうとする。
「ちょっと真理紗、それだけ?」
「もっと話さなければならないことがあるのでは?」
依乃里と風布花が真理紗にもっと教えて欲しいことがあると引き留めようとするが、真理紗は振り向こうとしない。
「ちょっと待ってよ真理紗。」
慌てて依乃里が真理紗を追いかけようとした瞬間、ルビーの指輪が眩い光を放つ。
「うっっ……。」
そしてその光の中から小さな体格の白いライオンが現れる。
「ライオン……、ですか?」
「何故に?」
「もしかしてこのライオン、あのピューマと同じモンスターでしょうか?」
雨幸、桐菜、風布花の三人はそのライオンに唖然とする。そして依乃里はそのライオンを真理紗に尋ねる。
「真理紗、このライオンは?」
その依乃里の質問には流石の真理紗も立ち止まって答える。
「その子の名はパッショネイトレオン、あなたのパートナーになるモンスターよ。これからあなたはパッショネイトレオンと愛を育み、新たな戦士へと進化するの。これで大事な話は終わりよ。」
「そんな、待って……!」
真理紗はそのライオンをパッショネイトレオンと言い、依乃里のパートナーだと明かす。そして依乃里らから姿を消そうとし、依乃里は慌てて追いかけるが真理紗はまた黒いオーラを放つ。
「うっっ……!」
「目が……!」
四人は一瞬黒いオーラに視界を覆われ、それが消えた時には真理紗の姿がなかった。
「はぁ……、また消えちゃった……。」
「結局こちらの知りたいことを何も教えてくれませんでしたね……。」
「ていうかわざわざいのりっちに会うって言っておいて、いのりっちのフラヴァイス壊しただけじゃね?」
「確かに掴みどころのない人でしたね……。」
四人は改めて真理紗とまともに話せないやるせなさを感じていた。そして依乃里はパッショネイトレオンを見つめる。
「はぁ……、この子と愛を育むってどういうことだろう……。」
依乃里は真理紗の言葉に首を傾げながらパッショネイトレオンを見つめる。すると雨幸、桐菜、風布花の三人はある推測をする。
「そう言えば、真理紗さんはピューマとタンゴを踊って戦士になっていましたよね?」
「そうだ、確かに踊ってた。」
「恐らく、社交ダンスの戦士はパートナーとなる獣人のパートナーが必要ということでしょうか?」
「じゃあ私、このライオンと……。」
「「「「社交ダンスを踊る⁉」」」」
四人が口を揃えて驚くと、依乃里は戦慄してしまう。
「ちょっと、今までフラメンコを踊るだけでも大変だったのに社交ダンスまで踊らなきゃならないの~?」
依乃里はこれから社交ダンスを踊るということにプレッシャーを感じる。そしてこの日、四人は解散するのだった。
一方その頃、ダークサイレンスではブラクスがマリスをブラックチャームに倒された悔しさを引き摺りながら戻っていた。
「やはり戻って来ましたか、ブラックチャームが。」
「ああ、久しぶりに会ったがやっぱあいつは他の奴らよりも数段上の強さだったぜ。俺の自信作のマリスも簡単にやられちまった。」
クリークはブラクスの暗い様子からブラックチャームが現れたことを察する。ブラクスはクリークにブラックチャームのことを話す。ダークサイレンスとしてはブラックチャームが再び現れたこと、それが気掛かりなことだった。
「次は僕が行きます。ブラックチャームが現れた以上、こちらが劣勢になることは避けられません。その前に他の戦士を叩かなければ。」
クリークはそう言って人間界に赴く。
「ブラックチャームか。このまま戦士が増えなければいいがな……。」
ブラクスはクリークを見送りながら自分達がこれ以上劣勢にならないことを祈るのだった。
数日後、依乃里は通っているフラメンコ教室の定期発表会に臨んでいた。最初は難しいステップに手こずっていた依乃里だったが、フラメンコを踊りながら戦うというある意味他の人よりも数倍多い練習量で腕前はかなりのものになっていた。
「桜間さん、かなり上手くなっていましたね!」
「あ、ありがとうございます。」
フラメンコ教室の先生はかなり上達した依乃里に感心していた。依乃里は少し照れながらある相談をする。
「あの、先生。」
「何でしょう?」
「社交ダンスとか、教えてもらえないでしょうか?」
「社交ダンスですか?」
依乃里が相談したのは社交ダンスについてだった。依乃里はパッショネイトレオンと社交ダンスを踊らないと再び戦士になれないという状況に焦っていた。しかしフラメンコ教室の先生は少し顔をしかめて首を傾げる。
「こちらはフラメンコ教室なので、社交ダンスはちょっと……。」
「そ、そうですよね~。」
難しい表情で答える先生に対し、依乃里は苦笑いを浮かべるしかなかった。しかし、先生はふとある提案をする。
「でも、提携している社交ダンス教室があるのでそこで良かったら紹介しましょうか?」
「え、いいんですか?」
先生が提案したのは社交ダンス教室の紹介だった。依乃里は希望が見えたと思い喜ぶのだった。
「これでとりあえずは第一関門突破かな……。」
帰り際、依乃里は少し胸を撫で下ろす気持ちで歩いていた。そんな中、後ろから風布花の声が聞こえる。
「お〜い、依乃里さ〜ん!」
「風布花ちゃん?」
依乃里は声がする方に振り向く。するとそこには風布花、そして風布花と腕を組んでいる先代ダイヤモンドの戦士の桜名美姫、更に見知らぬ男性の姿があった。
「あ、美姫さん。」
「久しぶり、依乃里ちゃん。」
依乃里と美姫が会うのは風布花に一度紹介されて以来だった。そして美姫は見知らぬ無愛想な男性を紹介する。
「依乃里ちゃん、こっちは四年前のルビーの戦士で桃井剣二。」
「桃井剣二だ。」
「あ、どうも……。」
男性の名は桃井剣二、嘗てルビーの戦士として戦っていた者だった。依乃里は真顔の剣二に少し距離を感じながら挨拶をする。
「依乃里、君のことは風布花からよく聞いている。俺も何も情報がない中、仲間を増やしながら戦っていたから気持ちはよくわかる。」
「あ、ありがとうございます……。」
剣二は無愛想な態度を振り撒きながらも似た境遇で戦っている依乃里にシンパシーを感じていた。
「依乃里ちゃん、さっきのフラメンコ恰好良かったよ。」
「え、観てくれていたんですか⁉」
「はい、実は。」
「踊りながら戦っているだけあって、中々様になっていたな。」
美姫、風布花、剣二の三人は先程の依乃里のフラメンコの発表会を観ていた。それを聞いた依乃里は赤面してしまう。
「そんな、結構緊張して自信なかったんですけど……。」
「そんなことないよ、かなり情熱的だった。」
依乃里は美姫から褒められて少し照れてしまう。そんな中、風布花はある話を切り出す。
「それで依乃里さん、あれからパッショネイトレオンの様子はどうですか?」
「ああ、うん……。」
風布花が依乃里に尋ねたのは、パッショネイトレオンのことだった。依乃里はパッショネイトレオンと共に社交ダンスを踊らなければならないのだが、そのためにもパッショネイトレオンを飼う必要があった。依乃里はアパート住まいなのだが、たまたまアパートがペットを飼える場所だったので無事に飼うことが出来た。しかしモンスターと言えど依乃里にとっては生き物を飼うことなど初めてのことだったので苦労が耐えなかった。
「レオンの奴、全然私に懐いてくれないし部屋中走り回るしで気が休まらないよ。」
「それは、大変ですね……。」
風布花は依乃里の疲れ果てたような口調から心情を察する。
「取り敢えずレオンはハムスター用のケージに入れてる。でもちょっと心配だなぁ……。」
「大変だね、依乃里ちゃん……。」
依乃里は常にパッショネイトレオンのことで気が重かった。その気持ちを美姫も察する。ふと依乃里は剣二を見つめる。
「な、何だ?」
「剣二さん、私と社交ダンスを踊ってくれませんか?」
依乃里の視線に困惑する剣二に、依乃里は社交ダンスを踊ることを提案する。
「依乃里ちゃん、何言ってるの?」
美姫は依乃里を宥めるように問いかける。
「だって剣二さんって四年前のルビーの戦士だったんですよね?もしまだ剣二さんがルビーの資格を持っているなら私と踊ってくれれば万事解決じゃないですか⁉」
「依乃里さん、そんなにレオンと踊りたくないんですね……。」
依乃里は剣二がパッショネイトレオンの代わりに自身と踊れば再び戦士になると考えていた。必死に話す依乃里に風布花は苦笑いしてしまう。
「悪いが社交ダンスは苦手でな。それに今の俺にきっとルビーの資格はない。」
「そんなのわからないじゃないですか。嵌めてみて下さい。」
剣二は社交ダンスを苦手としているのとルビーの戦士の資格を失っていることを理由に依乃里の提案を断る。しかしどうしても剣二と踊りたい依乃里は剣二にルビーの指輪を渡す。
「んっ……、ダメだな。」
剣二はルビーの指輪を嵌めようとするが、結局嵌めることは出来なかった。
「残念だが、今の俺では君の力にはなれない。」
「そんな~。」
依乃里は剣二がルビーの戦士の資格を失っていることに落胆してしまう。
「まあ依乃里ちゃん、ダンスの練習だけなら私達も力になれると思うから。」
「ありがとうございます、美姫さん。」
依乃里は美姫の言葉に、少しだけ救われた気持ちになるのだった。
その日の夜、雨幸、桐菜、風布花の三人は依乃里の家を訪れフラメンコの発表会が上手く行ったことを祝っていた。
「「「「かんぱ~い!」」」」
四人はジュースを乾杯してパーティを楽しむ。
「いのりっちももう立派なダンサーだねぇ。」
「私も観に行きたかったです。」
「止めてよ、結構緊張したんだから。」
桐菜と雨幸も依乃里を褒め称えるが、依乃里はやはり少し照れ臭かった。そして風布花はジュースを飲みながらケージに入っているパッショネイトレオンを眺める。パッショネイトレオンはケージから手を出し、出たそうにしていた。
「依乃里さん、パッショネイトレオンがケージから出たそうにしているんですけど大丈夫ですか?」
「う~ん、出たら出たで手がつけられない程暴れるからなぁ……。」
風布花はパッショネイトレオンの様子が心配だった。それには雨幸と桐菜も同感だった。
「確かに、動物の種類によってはあまりケージに入れるのも良くないですしね。モンスターですけど。」
「ていうかいのりっち、餌とか何あげてんの?」
「一応肉料理とかあげてる。今日は生姜焼きをあげた。でも野菜とかもあげた方がいいかな?」
「いや、ライオンとかの肉食動物は野菜を食べられないのでそれは良くないと思います。モンスターですけど。」
「そっか……。」
依乃里はパッショネイトレオンの育て方がわからず探り探り育てていた。そして桐菜はケージに手を伸ばす。
「ねぇ、ちょっとレオンを出してみるね。」
「ちょっと桐菜ちゃん!」
桐菜は興味本位でケージを開ける。するとパッショネイトレオンは勢いよく飛び出してしまう。
「うわっ!」
パッショネイトレオンはケージから出るなり依乃里の胸に飛びつく。
「胸に飛びつきました。」
「何、母乳でも欲しいの?」
「わかんない、でも何かすぐ胸に行くんだよね。」
風布花と桐菜はパッショネイトレオンの行動に困惑する。これには未だに依乃里もわからなかった。そして依乃里がパッショネイトレオンを振り払うと、今度は雨幸の胸に飛びつく。
「きゃっ!」
「今度は雨幸さんの胸に。」
「そっか、ゆっきーの方が大きいもんね。」
「胸か、胸かコノヤロー!」
依乃里はパッショネイトレオンが単なる豊満な胸好きかと感じ怒りを露にする。
「ちょっと、レオンってもしかしてドスケベ?」
「健全な男の子、ということでしょうか?」
「胸にパッショネイトってことかも。」
「そんなことより離して下さいよー!この子全然離れてくれないです!」
依乃里、風布花、桐菜が様々な推測をするが、雨幸は自身の胸から一向に離れようとしないパッショネイトレオンに迷惑していた。そんなやり取りをしつつ、風布花は剣二から聞いたことを話す。
「そう言えば剣二さんから聞いたんですけど、真理紗さんが現れたあの日に依斧さんがダークサイレンスの幹部、恐らくブラクスと交戦したらしいです。」
「依斧さんが?」
風布花が剣二から聞いたのは四年前のシトリンの戦士、金山依斧がブラクスと交戦したという話だった。しかし依乃里達には少し疑問に感じることがあった。
「でも、指輪を嵌めている私達以外は騒音で動けないんじゃないの?」
「ダークサイレンスが騒音を出すのはマリスを産み出して本格的に侵攻を始める時みたいです。その前なら依斧さんでも相手を出来たと。それにダークサイレンスは以前のダークストーリーズのことを知らないみたいです。やはりダークサイレンスはダークストーリーズが壊滅した後に誕生した悪の組織みたいですね。」
「なるほど……。」
四人は新情報に真剣な表情を浮かべる。そんなやり取りをしてパーティはお開きになるのだった。
翌日、クリークはマリスを産み出して街に繰り出していた。
「もう、いのりっちが戦えない時に!」
「悪はこちらの事情なんて考えません!」
「私達で何とかするしかないです!」
桐菜、雨幸、風布花の三人は依乃里がいない中、街まで走っていた。そして三人はそれぞれフラヴァイスを開く。
「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」
「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」
「カーネーション!パール!チャールストン!」
「Let's Dance!」
「踊ります!」
「踊っちゃうよ!」
「踊ってみせます!」
三人はそれぞれダンスを踊って戦士へとその姿を変える。
「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」
「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」
「軽快な舞姫、レッドライテスト!軽快なステップに、ついて来られますか?」
三人はそれぞれ名乗り、立ち向かう。
「おや?ローズレーザーとブラックチャームがいませんね。」
「ローズレーザーは今戦えない!ブラックチャームは今連絡がつかない!」
クリークはローズレーザーとブラックチャームの姿が見えないことに疑問を持つ。チェリーエッジは少し苛立ちながら答える。
「なるほど、あなた達だけならば勝ち目はありそうですね。」
クリークは戦士が三人しかいない状況に勝機を見出す。そして遅れて依乃里が遅れて戦場に着く。
「やばい、みんなピンチだ。」
依乃里はクリークとマリスに苦戦する三人の姿を見て焦る。しかしフラヴァイスを壊された依乃里には戦う術がなかった。依乃里はむずがゆく感じる。そして依乃里の手の平の上にはパッショネイトレオンが乗っていた。
「まだレオンと踊れていないしな……、真理紗みたいに行けるかな?」
依乃里は責めて皆の力になりたいと感じ、真理紗の見様見真似でルビーの指輪が嵌められた右手をパッショネイトレオンに翳す。するとパッショネイトレオンは真理紗のジェントルピューマと同じように燕尾服を着た獣人の姿になる。
「出来た!」
依乃里は獣人の姿になったパッショネイトレオンに驚く。そして依乃里はパッショネイトレオンに見えるようにマリスを指差す。
「レオン、あのマリスと戦って。みんなを助けて!」
「ガー!」
パッショネイトレオンは依乃里の言うことを聞き入れるように唸りを挙げてマリスに立ち向かう。
「ガオー!」
パッショネイトレオンは唸りを挙げながら荒々しい動きでマリスを攻め立てる。
「この獣人、もしかして依乃里さんのレオン?」
「こいつも獣人になれたんだ。」
ベリースパークラーとチェリーエッジは獣人と化したパッショネイトレオンに驚く。そしてパッショネイトレオンはあっという間にマリスを倒してしまう。
「くっ、まさかローズレーザーの元にも獣人がいるとは。戦力がまた増えましたか。ここは一旦退きましょう。」
クリークはパッショネイトレオンの強さに焦りを感じながら、人間界を去るのだった。そして街からは騒音が消え、戦士達は元の姿に戻る。
「凄いじゃんレオン!」
依乃里はマリスを倒してくれたパッショネイトレオンに感心する。そして桐菜、風布花、雨幸の三人もパッショネイトレオンに駆け寄る。
「暫くいのりっちの代わりに戦ってよ。」
「今は戦力を減らす訳には行きませんからね。」
「頼りにしてます。」
雨幸が最後にそう言ってパッショネイトレオンの手を握った瞬間、パッショネイトレオンの目には雨幸の胸が映る。
「ガー!」
「キャッ!」
パッショネイトレオンは興奮して雨幸の胸に飛びつき、押し倒してしまう。
「依乃里さ~ん!」
「ちょっとレオン!雨幸ちゃんから離れなさいこのド変態!」
依乃里は慌ててパッショネイトレオンを雨幸から引き離そうとする。桐菜と風布花は苦笑いしながら見守るのだった。
一方その頃、桃井剣二の元にある一人の男性が訪れていた。
「お前か、ご苦労だったな。それで、どうだった?」
剣二はその男性を労い、何かを尋ねる。どうやら剣二はその男性に何かを調べさせていたようだった。
「お前の読み通りだったよ剣二。残りの指輪の在り処がわかってきた。」
男性はそう言うと女性の顔写真を二枚見せる。
「黒崎真理紗の他に、指輪の戦士がいるかも知れない。」
男性は意気揚々とそう話すのだった。




