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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part1
31/31

31 コールマン・ズ・グロウス④

コールマンの過去。28~31まで続きます。30と31は同日連続更新をします。





 コールマンはいつものように登校した。今朝は校門でキミコと会うことはなかった。たまにタイミングが合わないこともあり気にはしなかった。


 教室に着くとコールマンはスクールバッグをおろし、横にいるクラスメイトと話していた。コールマンは持ち前の愛想の良さでクラスメイトと良好な関係を築いている。


キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴り、男性教師がクラスに入ってきた。


「皆さんにお伝えすることがあります。三組の山中キミコさんが昨日の下校途中、事件に巻きこまれ命を落としました」


 男性教師が淡々と言った。コールマンは突然のことに目の前が真っ暗になった。


「えっ?」


 何かの間違いだ。昨日まで仲良く勉強を教えていたキミコが死ぬはずない。


「何を言ってるんですか? 嘘言わないで」


「コールマンさん・・・・・・残念ですが」


 コールマンは放心して焦点が定まらない。周りのざわつく声が遠ざかる。ハチオウジでは事件も人の死も珍しくない、それは高校も同じでまわりの生徒は多少の動揺に留まっている。


「嘘」


 涙が頬を伝う。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 コールマンはその場で泣き崩れた。まわりの声も耳に入らなくなり突然意識が途切れた。



「コールマンさん! コールマンさん!」


「!?」


 コールマンは自分の名前を呼ばれる声で目を覚ました。どうやら保健室にいるようだ。保健の女性教師が心配そうに覗きこんでいた。


「・・・・・・キミコは?」


「残念ながら・・・・・・亡くなったの」


 コールマンは目を閉じて悲しみを堪えた。


「何があったんですか?」


「山中さんは下校途中に通り魔にあったのよ。酷い話だけど・・・・・・」


「・・・・・・」


 コールマンの脳裏に昨日、放課後に一緒に勉強したときのことが、鮮明に思い出される。


 ねぇ、明日、カフェ行こうね、キミコの笑顔、伸びやかな声、笑い合ったあの光景。


 あのとき、もっと一緒にいれば良かった、胸の奥に冷たい後悔が広がる。勉強の途中で笑ったあの瞬間、まだ先のことを何も知らず、何気ない日常を楽しんでいたのだ。


「どうして、キミコが・・・・・・」


 問いかけても答えは返ってこない。放課後、笑いながら問題を解いていたあの時間が、逆に胸を締めつける。


 もっと一緒にいれば、もっと気をつけてあげれば、思い出すたびに、言葉にならない罪悪感が積み重なる。


「ごめん、守ってあげられなくて」


 コールマンはまたしても無力感を感じていた。両親の死に何もできず、超人に覚醒しても友人も守ることもできない。やり場のない気持ちと悔しさで方針状態になった。


 保健室で休んだ後、早退して家に帰った。家に帰ると後藤が仕事の準備をしていた。


「何かあったか?」


「キミコが・・・・・・キミコが殺された」


 コールマンはそう言うと感情が爆発して後藤の前で号泣した。コールマンの話を後藤は何も言わずに聞いてくれ。


 この日、後藤はバーを休みコールマンに寄り添い続けた。


 キミコの葬儀が開かれた。キミコの両親は終始泣き崩れていた。コールマンの胸が押し潰される。


 まわりから聞こえてくる話ではキミコはレイプされた後、水もないのに溺死していた。超常犯罪と言われている。コールマンは真相に気づいた。犯人は自分と同じ超人の仕業だ。


 葬儀場の奥、キミコの棺を前に、数人の大人たちが立っていた。


「久しぶり」


 柔らかな声が響き、振り返ると、ユウが立っていた。肩まで伸びた髪に、少し大人びた落ち着きがある。


「久しぶり・・・・・・」


 コールマンの声は小さく、かすかに震えていた。胸の奥で、何かが締めつけられる。


 後ろには加林家と能垣の二人も控えめに並んでいた。加林家は昔と変わらずの笑顔を作ろうとするが、瞳は濡れている。能垣は手を組み、視線を落としていた。


「キミコが死ぬなんて・・・・・・」


 ユウの声は低く、途切れ途切れ。悲しみが言葉の端々に滲む。


 コールマンは棺を見つめ、思わず拳を握りしめる。


「普通ではあり得ない方法で殺されたの。村のみんなと同じ」


 言葉が詰まり、涙が頬を伝った。キミコの面影が蘇る。


「こんなのおかしいよ! 村のみんなも殺されて・・・・・・キミコまで殺されるなんて!」


 ユウの声が震え、嗚咽に変わる。葬儀場の静寂に、泣き声が谺する。


 しかしコールマンは、少し距離を置いて立ち、深呼吸して落ち着かせる。


「この世界は・・・・・・狂ってるのよ」


 コールマンは心の奥でそう言い聞かせるように呟いた。


 能垣が、視線をやっと上げ、言葉を絞り出す。


「誰がこんなことを・・・・・・俺、許せないよ」


「うん」


 全員が黙祷する間、時間がゆっくり流れる。悲しみの深さは共有されているのに、距離感は埋められない。それぞれの経験、過ごした年月、抱えてきた思いが、棺の周りで微妙な隔たりを作っていた。


「こんな形でみんなと会いたくなかった」


 コールマンは震えた声で言うと皆が小さく頷いた。慟哭と静寂の混ざる空気の中、時間だけがゆっくりと過ぎていく。





 キミコの死から一ヶ月が過ぎた。犯人はいまだに捕まっていなかった。早々に捜査が打ち切られたという。コールマンは後藤に工作員だった頃の伝手を使って調べるように言ったが何も成果はなかった。それでもコールマンは諦めず独自に復讐を誓い、キミコの事件を調べることにした。


「後藤さん、どこに行くの?」


「貴重な酒の買い付けだ」


 後藤はそう言うとソフト帽とトレンチコートを着て出掛けた。後藤は工作員引退後も何か用があるのか出掛けることが多かった。理由を聞くと食材探しやバーに関する商談と答えていたがコールマンは何か別の理由があるように感じていた。


 後藤が出るのを見届けるやコールマンはダウンコートを着てフードを目深に被ると外出した。キミコの死後から後藤が頻繁に出掛けだした。もしかしたら後藤がキミコを殺した犯人をまだ、探しているかもしれないという淡い期待があった。


 日曜日の昼、住宅街を後藤が進んでいく。コールマンは後をつけながら奇妙な気持ちになった。


 後藤はさらに歩いていくと一軒の家の前で立ち止まった。山中キミコの家であった。後藤は懐からバンダナを取り出して口元を覆うように巻いた。インターフォンを鳴らすと門が開き、後藤がキミコの家に入っていった。何故キミコの家に後藤は行ったのか? 疑問が増すばかりだ。


 一時間程経過して、後藤はキミコの家から出てきた。辺りはすっかり夕焼けのオレンジ色の光に包まれていた。


 後藤はさらに歩き続けた。八王子駅前は家族連れやカップルで溢れていた。雑踏の中を後藤が歩き、コールマンが後をつけていく。コールマンは気を制御して遮断して気配を消していた。後藤に習った尾行方法の一つだ。


 後藤は居酒屋「濱家農場はまいえのうじょう」へと入っていく。コールマンはカフェ「ダストフロンツ」に入ってキャラメルラテを頼むと通りに面したカウンター席に座り、斜め向かいにある濱家農場を監視した。


 小一時間程すると金髪で無精髭をした太った男が下りてきた。男は伸びきったTシャツを着ている。男はコールマンの目の前を通り過ぎた。すぐ後に後藤が店から外にでてきた。コールマンも店を出ると再び、後藤の後をつけていく。後藤の前を太った男が歩いている。どうやら後藤は太った男を追っているようだ。


 辺りはすでに暗くなっている。周りに住宅街が多くなってきた。後藤と太った男は西八王子方面に向かって歩いていた。コールマンはあることに気づいた。もうすぐでキミコが殺された現場の近くだった。


 段々と人気がなくなり周りに雑木林が見えてきた。街灯の心もとない明かりの下、コールマンは物陰に隠れながら後をつけていく。


 コールマンが木の影に隠れた時、後藤が立ち止まった。後藤は再び懐からバンダナを取り出すと口元を隠すように巻いた。


図屁利ずべりマルオだな?」


 後藤が太った男の背中に問いかけた。図屁利と呼ばれた太った男が振り向いた。


「なんだぁ」


「山中キミコを殺したのはお前だな?」


 図屁利は何を思ったのか突然笑い出した。


「ニヒヒヒヒヒヒヒ! こいつ頭おかしいんじゃないか?」


「そうか」


 後藤は図屁利に向けて両手の指をつけて三角を作った。図屁利は警戒するように右手を後ろにやる。


「ホゲェェェェェェェェェェ!」


 耳をつんざくような音がして後藤の両手から三角の光が放出された。図屁利は咄嗟に右に転がり後藤の攻撃を避けた。


「なんだ!? 超人か?」


「そうだ、貴様もそうだろ。もう一度聞く山中キミコを殺したのはお前だな? 同じ手口で四人の女子高生を殺したのもお前だな?」


 図屁利は後ろポケットに突っ込んでいた炭酸飲料水「コリャコーラ」のペットボトルを右手で抜き出して構えた。ボトルの底を後藤に向けている。


「ニヒヒ、そうか超人なら良いだろう。そうだ俺が殺した! 俺は強いぞ! それでもやるか?」


「当然、お前を殺る」


「ニヒヒヒヒ、馬鹿はどうしようもないな! 死ねってな感じで!」


 図屁利の言葉を聞いたコールマンの頭の中で理性が途切れた。気付くとコールマンは木陰から飛び出して髪に刺していたボールペンを抜いた。


「お前がキミコをぉぉぉぉぉぉ!」


 ペンから光が短刀程の長さまで伸びた。後藤が振り返り驚愕の眼差しを向けた。図屁利も一瞬驚いたようだがすぐさま冷静になりボトルのキャップを開いた。


「コーラガイザー! お願いします!」


 図屁利が叫ぶとボトルからコーラが勢い良く吹き出した。後藤が気付き両腕を交差して防御したがコーラの勢いにより後ろに吹き飛ばされた。その横をコールマンは光るペンを構えながら図屁利に殺到した。背後から後藤が木に直撃する音がする。


「ニヒヒ、お前もかオラァ」


 図屁利が噴出するコーラをコールマンに狙いを定める。コールマンは光るペンを構えてコーラを受け止めた。恐ろしい圧力がかかる。


「ぐぐぐ・・・・・・このぉぉ!」


「お前も超人、しかも外国女かぁぁ! ニヒヒヒヒヒヒ、お前も同じめに合わせてやる! 犯してコーラで溺死しなってな感じで」


「よくもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 コールマンは渾身の力で光るペンを振りかぶった。コーラ噴流が斜め上に弾かれた。


「なにぃ!?」


 その瞬間、コールマンは光るペンを腰だめに構えて突進した。目の前に驚いた図屁利の顔が広がる。光るペンを図屁利の腹をめがけて突き刺した。


 光るペンの刀身が肉と内臓を焦がして穴を開けていく。手にはフォークでケーキを刺すような感触が伝わってきた。


「えっ!?」


 図屁利の口から血が吹き出した。血飛沫がコールマンのフードと頬にも血が点々とかかった。


「う・・・・・・げぇ、この・・・・・・女」


「死ねぇ! 死ねぇ! 死ねぇぇぇ!」


 コールマンは光るペンに力を込めた。光の出力が上がり、刀身が伸びる。弾けるような音と共に光るペンが図屁利の背を貫いた。


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 図屁利の口からさらに血が吹き出し、コールマンの顔に血がかかった。


 その時、背中を強い力で引かれた。光るペンが図屁利の腹から引き抜かれ、コールマンの身体も後ろに転がった。見上げると後藤の後ろ姿が見えた。図屁利はボトルを地面に落とすと腹を押さえて血を吐きながら睨んでいる。


「ショー! チュー! コーオォォォ!」


 後藤が両手をバスケットボールを持つような形のまま大きく開いた。両手の間の空間が振動するように歪んでいる。コールマンはそこに不可視の力を感じた。


「ムスブ!」


 歪んだ空間が放たれた。図屁利の目に絶望の色が浮かんでいる。


「やめてくれぇぇぇぇぇぇー!!」


 キィィィィィィィィィィィィィィィィィィン、不可視の力が図屁利に殺到。


「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 歪みが激突した瞬間、図屁利は木っ端微塵に吹き飛んだ。図屁利の身体は真っ赤な霧状になり周囲に降りかかる。ザァァァ、一瞬、雨のような音がすると雑木林と地面が赤く濡れた。


 コールマンにも血の雨が降りかかった。後藤の身体も真っ赤になっている。


「!?」


 コールマンは自らの手に図屁利を刺した感触が甦った。血塗れの状況に頭が混沌としている。


「わ・・・・・・私がキミコを殺した、あいつを、あつを・・・・・・殺した・・・・・・私が」


 身体の震えが激しくなった。立とうと思うが足に力が入らない。両親が死んだ光景がフラッシュバックした。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「コールマン、奴を殺したのは私だ! お前じゃない!」


 後藤が振り返り悲しげな目で叫んだ。コールマンの目から涙が止めどなく流れてきた。後藤の声が遠くに感じる。


 混沌と混乱の中、コールマンは自らが踏み込んではいけない世界に一歩踏み込んだ、そんな気持ちになっていた。





 図屁利の死から数時間後、コールマンと後藤は自宅のテーブルで向き合っていた。 手前に後藤が淹れたコーヒーが入ったカップが置かれている。


「すまなかった、お前を巻き込んでしまった」


 後藤が悲しい目をしながらポツリと呟いた。コールマンは震えながらコーヒーカップを持っている。頭をなんとか落ちつけようとして後藤をまじまじと見た。出会った頃に比べて白髪が多くなっていた。また、右腕には図屁利の攻撃を受けてか赤黒い痣があった。


「私が図屁利を殺した・・・・・・」


 コールマンは絞り出すように言った。キミコの仇を討てた気持ちと殺人を犯した恐怖の両方が心に渦巻いていた。


「言っただろ。図屁利を殺したのは私だ。お前は殺してない」


「違う、私はキミコの仇を討つことしか考えてなかった。でも、何で?」


「お前と同じ気持ちになったからだ」


「じゃあ、キミコの家に行ったのは?」


「・・・・・・」


「答えて! 私は全て知りたいの! 隠し事はしないで!」


 後藤は溜め息をついてコーヒーを一口飲んだ。


「わかった。お前に尾行されていることにも気付かないのなら私も潮時かもしれない」


「どういうこと?」


「私は山中キミコの親に会って超人に殺された娘の仇を討つ覚悟があるか聞いた。覚悟があるなら一〇〇万円払えば私が代わりに娘の仇を討つと持ちかけた」


「それで・・・・・・」


「覚悟はあると言った。だから、伝手を使って事件を調べて犯人が図屁利であることを突き止めた。今日は始末の段取りをつけたことを山中家に報告して意思の最終確認をした。そして、図屁利を始末する所でお前が現れた・・・・・・」


「どうして? キミコが私の友達だから? なら何で山中のおばちゃんやおじさんからお金をとったの?」


 後藤はさらに思案するように顔をしかめると右腕の痣を擦った。コールマンはそれを見ると後藤なら今までであればすぐに回復する程の傷なのにという疑問が浮かんだ。


「この世の中は利害だ。大きな力が要請するのならば裏の仕事は誰かが引き受けなければならない。ならば超人の私が引き受ければ良いと思って工作員の仕事を遂行してきた。私はその仕事を通して色々なことを見てきた。そして、政府の犬で生きる以上にやるべきことがあると悟った・・・・・・」


「やるべきこと・・・・・・」


「ハチオウジを中心に超人が増え、超常犯罪で闇に消される者が増えている。超常犯罪を犯した超人もライフウェーブやフシモリ達の大きな力で守られて大抵は裁きを受けない。だが私ならばそんな奴らを始末する力がある。それに被害者にも無念を晴らしたいなら覚悟の上で機会があるべきだと思ったのだ。だから、被害者の覚悟として金を受け取り、私が無念を張らすことにした」


「後藤さんは・・・・・・工作員を辞めてからキミコの事以外でもずっと戦ってたの?」


「そうだ。それに私自身もいずれは自らが殺した者達の手にかかって死ぬか戦いで負けるかで死ぬ。それまでのこの命の使い方を決めたのだ」


 後藤はそう言うと右腕を持ち上げた。


「過去から戦い過ぎて私の身体はガタが来はじめた。それにお前の尾行も見破られないのならそんな生活も終わるのかも知れない」


 コールマンは言い知れない悲しみが込み上げてきた。


「何言ってるの? そんなことはさせない! もう、何もできずに大切な者を失い続けたり、辛い思いをし続けるのは嫌なの! パパ、ママ、キミコも失って後藤さんも失いたくない! それに被害者に無念な思いをさせるのも嫌!」


「コールマン」


「両親を失った時、超人に覚醒した私は無力だった。でも、後藤さんが仇を討ってくれた。だから、少しは救われた・・・・・・救われない思いをする人よりはよっぽどマシなの」


 後藤がコールマンを無言で見つめる。コールマンは覚悟を決めるように見つめ返した。


「今のままだと後藤さんは死ぬわ・・・・・・その思いを完遂することができない。それに後藤さんのやることこそ、私のやるべきことだと思った・・・・・・私にもやらせて」


「絶対にかかわるな! お前は今のままの生活を続けて、普通に暮らすんだ!」


 後藤が語気を強めて叫んだ。それでもコールマンは後藤を必至で見つめ続けた。彼の目に再び悲しみと絶望がよぎるのが見えた。後藤は溜め息をつくと俯いた。


「お前のことだ。私がやめろと言っても自分で突っ走るのだろう・・・・・・そうなればお前は死ぬ・・・・・・これも業か。コールマンまで巻き込んだ私自身が憎いよ・・・・・・」


「違う・・・・・・私は自分の意思で選んだの。図屁利を殺したのも・・・・・・私の意思・・・・・・」


「・・・・・・例え、最悪の罪を犯した超人を殺すとしても殺しは殺しだ。それが何度も続く。正義でも何でもない、ただの殺しだ。やるならばその覚悟を持つ必要がある。狂った所業、まさに狂師だ」


 それを聞いたコールマンは目を瞑った。両親の死、近所の皆の死、志摩洲への憧れと憎しみ、キミコの死、図屁利を殺した時の感触。悲しみ、無念、憎悪がコールマンを駆け抜けていく。コールマンは目を開いた。


「それでも・・・・・・私はやる」





 雨粒が頬を伝い、コールマンは過去から現在へと引き戻される。


「狂師として行ける所までいく。例え、終わりが死でも後藤さんが始めて私が皆を巻き込んだ」


「これは全て私の意思だ」


 後藤が悲しげな眼でこちらを見つめていた。コールマンは首を振る。後藤が一人で終わろうとしたのに自分がそれに加わり、さらに多くの者が従った。三人の死や今いる高取や米山に責任がある。喋りかけるが後藤が手で制した。


「それに巻き込んだ等と言うな。それは傲慢だ。お前を含め皆、自らの意思でやっている」


「後藤さんの言う通りだよ。どうしたんだコールマン? いつもの感じじゃないぞ?」


 米山が心配そうに言った。


「・・・・・・そうね。らしくなかった」

 コールマンは蘇える過去を追い払い、今を見つめた。


 空からぽつりと落ちていた粒が、やがて数を増やしていった。



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