5-4話 塩クッキー
すると「これサービスの試供レシピです」と今までキッチンにいたコックがテーブルを回る。
食べたかった塩クッキーだ!!
あまりの偶然が嬉しくついまたさっきのこれでラストの注文からを忘れ
カクテルを注文するが「ビール切れました」と自分が結構呑んだのからかビール売り切れになってしまった。
謝ると
コックは「大丈夫ですよ。うち元々あまりビール仕入れてないからお姉さんのせいじゃありません」と弁解された。
しかしウエイターから「うちではビールだけ注文する人少ないから」と言われてコックにコラ!と言われてるのを見ると居た堪れない気持ちになった。
次を本当に本当のラスト注文にしなくては
そう意気込み「この塩クッキーに合うの下さい」と言うと意外にもコックが話しかけてきた。
「お姉さん、塩クッキーご存知なんですね!」
パッと顔を明るくした彼は私より年上そうだが
「はい。クッキー好きでよく食べるので」
と言うと緊張させたみたいで「うわあ、ちょっと待って。サラミ出しちゃおうかな」とキッチンに戻りそうになったので「いいですよ。美味しいです」とかじって食べコックを呼び止めるとウエイターが「ハハッ」と笑った。
除く尖った八重歯が見えパッと見クマが少しあり疲れていそうだがくしゃっと笑うと可愛いらしい。
(これがギャップか)
と不覚にも少しときめいてしまった。
コックの作る塩クッキーは色んなスパイスが入っていて自分では作らない味だから余計美味しく感じた。
(私も作りたいな)
そう思いが霞むがもう辞めるのだ。
そう思い最後にカクテルを注文した。
「また、おすすめで。あ、ビールは入って無いやつで大丈夫です」
そう言うとウエイターは暫く手を止め考えると何を作るのか決めたのかシェイカーを振るった。
「ロングアイランドミルクティー」
と出されたそれは確かにアイスティーに見えるのだが、紅茶は頼んで無いんだけどなと思ってると
「ミルクティーと付くがちゃんと酒だから」と言われ飲むとすごく飲みやすい。
「ウォッカやテキーラ使ってるから度数は高いが飲みやすいから悪魔的と言われてる」
確かに。味は紅茶にも思えるしアルコールも感じる。
「量はすまない。少なめにした」と言われ何故かと思ったが自分のテーブルに置いてあるグラスを見て察した。
「すみません。これ飲んだら帰ります」と言うとコックは「大丈夫!うち一時まで開いてるので。あ、でも電車なら駅まで歩くしなあ」と言われ「あ、近所なんで」と言うとコックは「そうなんですか?」と尋ねた。
「今日から越して来たんです。あ、ここお昼も美味しかったです」と言うとコックは何故か自分ごとのように「うわー、ありがとうございますー」とぶんぶん握手され何事!?と戸惑っていると
「止めろよ」とウエイターがコックを止めてくれた。
「ああ、すみません!ウチの家族が昼やってるから」とコックが家族経営と話すと盛り上がった。
「唐揚げ美味しかったです」と言うと「親父に言っておきます」と上機嫌だ。
だとすると「あ、ここにも唐揚げメニューにあるんで次回来たら是非」とおすすめされた。
荒城の話をしながら気になった事を聞く。
「もしかしてここのお店は?」と聞くと「はい。俺の店です」と陽気にコックが答える。
なんとコックと思っていた人は店主だったのだ。
「とコイツは住み込みのウエイターです」とウエイターを指差し紹介する。
つられて「美島 華です。よろしくお願いします」と今更ながら挨拶を交わす。
「でもなんか凄いですね。お店って店長さんお若いのに」と言うと
「いや〜、ここ元々親父達の定食屋だったから意外となんとかなりましたよ」と言われそんなものなのかと意外と思った。
確かに土地や物件が持ち家なら改装費はいるが何もないより始めやすそうだ。
「まあ、最初はお客さん少なかったけどやっとSNSとか始めるとたまに寄ってくれるお客さん増えたんですよ」と嬉しそうに話す。
その時、店の端にある階段から誰かパタパタ降りて来る足音と昼に聞いた朗らかな声が下に向かって聞こえてきた。
「店長、賄いまだありますか〜?」と昼のイケメン定員が私服のまま階段から降りてきてカウンター席に座った。
「ねえよ」と言った先に手を伸ばせば届くキッチンの作業台にあった料理を勝手に取ってイケメンはムシャムシャ食べる。
「また、リゾットですか?ワンパターンだと飽きられますよ」と食っときながら文句を店長に向かって言うと流石に店長もキレたのか
「嫌なら食うな。俺の賄いだろ!」と怒鳴る。
「折角、メニュー紹介記事書いたんだから報酬はもらわなきゃ割りに合わないですよね?」とイケメンは意外にもちゃっかりしている。
(というか昼定食屋で働いてるのに広報はこの人なんだ。なかなか魔窟って人遣いは荒いらしい)
「家族経営の闇だな」
とウエイターが言うと
「あ?」と店長の顔はさっきより険しくなり
「なんなら今すぐ追い出してやってもいいんだぞ」
と言うと2人ともそれは困るのか無言になった。
話題を変えようとイケメンは
「あ、クッキー」
と試供メニューの塩クッキーに手を伸ばし
「クッキーなのにしょっぱい」と案の定まんまとした反応をしたので横にいた私は笑ってしまうとやっと私に気付いたのか
「あ、お昼の!」と今更自分に気づいたらしくお互いに挨拶を交わした。
「折角ショップカードもらったから来ちゃいました」と言うとサガンさんもありがとうございますと喜んでくれた。
「お前、それはお客様達に出す分だから食うな」と店長はサガンさんからクッキーを回収するがサガンさんは納得できないのかごねる。
昼に会った爽やかイケメンとは随分イメージが違う。




