文化祭準備期間 五日目
文化祭準備期間 五日目
俺たちがせっせと準備に励んでいると風紀委員長が訪ねてきた。
「失礼しますね」
「あ、風紀委員長どうしたんですか?」
倉田に近づいた風紀委員長は、
「そろそろお店が開く頃なので、買い物のお迎えに来たんですよ」
と、そんなことを言っていた。
「そして、瑞樹さん、ミスコンの件、お引きいただいてありがとうございます」
振り返り、近くにいた俺にそう言ってくる。
「あ、いえ・・・」
いきなり恐縮されてもちょっと困ると言わんばかりに俺は一歩退いた。
というか、この人・・・・・・夏休みに答案取りに学校に来た時に話した人だ。よくよく見て俺はそう思った。
ということは、あの時ももしかしたら。
つまり、関わらないと思っていたことに知らず知らずのうちに関わってしまっていたということか。なんて世界は狭い・・・・・・
「本来なら直接お尋ねしないといけないのに・・・・・・」
「別にそんなに気にしなくていいんですよ」
俺は半分苦笑いとも思える笑みを浮かべた。
「そうだ、瑞樹さんも一緒に来ませんか?」
「え、でも」
「別にいいんじゃない? メイド班にはその後頑張ってもらう予定だし」
「??」
何を頑張ってもらう予定なのかは知らされていないが、倉田さんが言うなら
「じゃあ、ついて行きます」
そうして、倉田、風紀委員長、俺と男手を借りるために数名を連れショッピングモールに向かった。
ショッピングモールに着いて、風紀委員長の案内の元、食器なども扱う生活用品店にやってきた。
「ここで選んでください」
店員のようにどうぞと前に立った風紀委員長。
俺たちはそれぞれに中を物色。
そしていくつかの手に留まったものを覚えておく。
それぞれが一周したところで、自分の良いと思ったものをそれぞれに紹介。
「この花柄のセットなんてどうかな?」
「可愛いわね・・・」
俺の選んだものを見て、なんでちょっと悔しそうなのと思うような表情をしている倉田。たぶん同種だったのかな・・・・・・
まことに残念なことにこういうものの選び方なんて知らない俺は、とりあえず派手ばでしくなく、かといってワンポイントはあるやつを選んだ。
倉田さんの反応から言ってはずれではなかったようだ。
「倉田さんのは?」
「これだけど・・・」
そう言って見せられたのは、ソーサーとカップに同じ蒼い網目模様の入ったセットだった。
これも別に悪くないと思うのだが・・・・・・
とは言っても、周りを見てもやはり・・・・・・
俺たちの選んだものは無印に比べればやはり値が張る。
「お気に入りは見つかりましたか?」
「見つかったは見つかったんですが、ちょっと高くて」
俺と倉田はそれぞれが選んだものを見せ、なおかつ無印の値札も見せた。
「二人ともざっと四千円。たいして無しは二千円ですか」
「倉田さん、いくらまでならいけるの?」
「ちょっと待って・・・えっと、五万円くらいかな。少しは手元に残しておきたいし」
倉田は封筒の中を確認しながら言う。
「どのくらい欲しいんでしたっけ?」
「十個くらい。ポットもあるからあまり高いのは・・・」
「なるほど・・・それでしたら」
風紀委員長は少し考え込んで、
「ポットは決まっているのですか?」
「ポットは普通の・・・透明なやつで」
それを聞いた風紀委員長はちょっとそこまで行って透明なティーポットを持ってきた。
「これでいいのでしょうか?」
「はい」
倉田は頷いた。
「ならセットの方はそれぞれ五つずつではどうでしょうか?」
「え? でも・・・」
「私に任せてください」
とんと胸に手を乗せて見せた風紀委員長は、そのままレジの方へと言ってしまう。
レジまで着くと、そのまま
「あの、店長は?」
「お客様いかがなされましたか?」
奥からちょうど出てきた店長と思わしき人物は風紀委員長を見るなり焦ったご様子で、
「しぐれお嬢様!? どうされたんですか?」
「ちょっと学校の用事で。それで、このセットとポットをいただきたいのですが、ちょっと安くなりませんか?」
「それはもう。これでどうですか?」
「結構です。ではお会計を」
「はい」
終始笑顔だった店長を見てる俺たちはちょっと気の毒にすらなった。
しかし、これで準備はほぼ整った。よかった、よかった、と一安心。
「風紀委員長って何者?」
今のやりとりを見ていた倉田はそれを聞いた。
触らぬ神に祟りなし。知らぬは仏見ぬが神。なんてことわざがある通り、聞かない方が得ってこともあるんだよ・・・・・・
「私ですか? 私はちょっとしたお嬢様ですよ」
風紀委員長は笑って受け流す。
「しぐれお嬢様って言われていましたものね」
「そう言えば名乗っていませんでしたね。神門しぐれ、これが私の名前になります。以後お見知りおきを」
丁寧にも制服のスカートをすっと持ち上げてみせた風紀委員長、神門しぐれからは礼儀の整った風格があった。
そして生徒会室に行くという風紀委員長とは校門で別れて、俺たちはそのまま、教室ではなく家庭科室に向かった。
どうしてっていうのは言わなくてもわかるかもしれないが、皿洗いだ。
買った食器をそのままお客様に出すわけにもいかないので、今日のうちに一度洗っておく必要がある、ということらしい。
それが終わってからようやく俺と倉田は教室に戻った。
自宅。
四時くらいに帰宅した俺はリビングでテレビを見ていた楓に、
「明日から文化祭なんだけど」
と切り出し、楓が来るのかを確かめた。
そしたら、あたかも当然というように、
「行くに決まっているでしょ!!」
と真顔で返された。
その顔からは私がお兄ちゃんを見に行かないなんてことがあると思っているのという威圧感が感じられる。
どうやらこの質問は愚問であったようだ。
「わかった。来てくれるのを楽しみにしておく」
「うん!」
そして俺は自室へと向かった。




