お誘い
あれから三日目。
時刻は昼過ぎ。
今日も真夏らしく蒸し暑い。
外に出る気力もなく、クーラーの効いた部屋の中に入り浸っている生活を送っていた。
そんな何不自由なく、冷やしそうめんをゴマダレにつけて食べていた、その時だった。
家の呼び鈴が鳴らされ、誰だろうとモニターで確認。
そのモニターにはちょっとおしゃれに極めたあかねが映っていた。
俺は玄関を開けて、お出迎え。
出てきた俺を見てあかねは開口一番。
「既読無視なんてひどいよ~」
スマホの画面を見せられて、既読のついていないところを指で強調してくる。
「一昨日の昼過ぎに送ったのに~・・・ぐすん・・・」
「あ~・・・ご、ごめんね?」
そう言えば最近スマホを見ていなかったな~と思い返しながら謝った。
「何してたの? まさか・・・」
「早めに片付けちゃおうと宿題にがっついてました・・・」
「あの瑞樹ちゃんが早めにやるなんて・・・」
と、驚愕なものを見たような顔で俺を見つめてくるあかねは、その後空を眺めて、
「今日は本当に嵐かもしれない!」
などと言ってくる。
なんてひどい・・・・・・
「で、今日は何の用なの? とりあえず暑いし上がったら?」
「うん。おじゃましま~す」
「いらっしゃい」
玄関でサンダルと帽子を置いて、俺の後をついてくるあかね。
「きもちいい~」
「外は暑いね」
「あら、いらっしゃい」
リビングに入ってきたあかねを見つけた母さんは、そう言ってあかねのことをまじまじと見つめる。
「お久しぶりです。お邪魔します」
「大きくなったわね。それに、きれいにも」
そう笑顔で言う母さん。
それに対抗でもするかのように、
「瑞樹ちゃんのためですかね」
と、笑顔で返した。
「あら・・・じゃあ、今後も楽しみにしているわね」
「はい!」
母さんのその返し方は、どちらの俺に向けてのものなのか、俺にはわからなかったが、それよりも元気よく返事したあかねの方にちょっと恐れ入った感じだ。
まさか、そんなはっきり返事するとは・・・・・・さすが彼女を名乗っているだけのことはある、と感心してしまっている自分がそこにはいた。
「あ、そうめんだ・・・」
「食べたいなら作るよ」
「えっ、いいの?」
目をキラキラさせて聞いてくるあかねを無碍にすることもできない。それに、
「お・・・私ももう少し食べようかと思っていたから」
俺もこう思っていたから、正直作ることには変わらないので、一人増えたところでどうということはない。
「それじゃあ、お願いしようかな」
「は~い」
そして俺はそうめんの準備に取り掛かった。
そうめんも出来上がり、今度は三人で食卓を囲む。
どうして三人かと言うと、楓がお友達と出かけているからだ。
だから今食卓を囲んでいるのは、俺と母さんとあかねの三人だ。
「それで今日は何の御用なの?」
「ふ、ふううふ・・・」
静かに母さんが笑っている。
「どうしたんですか?」
「何でもないわ・・・・・・続けて」
「瑞樹ちゃんのスマホにも送ったけど、プールいかない?」
「プール? どうしてまた急に?」
そう聞いた俺にじゃーんと二人分のチケットを見せてきた。
「この間福引で当てたんだ」
「いいじゃない。行って来たら?」
「でも、水着ないし・・・・・・」
せっかくのお誘いだけれど・・・・・・・・・
「いいじゃない買って来たら。お金あげるから行ってらっしゃい」
なぜか乗り気の母さんに押しきられ頷いた俺を見てあかねはやったーと思わず声に出して言っていた。
「それじゃ、さっそく買いに行こうよ」
「行ってらっしゃいな」
「うん・・・・・・行ってきます」
そうめんを食べ終えた皿を片付けて、外に行く用意をさくっと済ませた。
前にも一度したコーデだけど、これにしよう。
白のワンピースとサンダル。それと麦わらぼーし。夏にはぴったりのコーデだろう。
それを着てあかねの前に立つ。
「可愛い」
「ありがとう」
二人で笑いあった。
どこか歯痒い。それでいてうれしい。
けれど、少し怖い・・・・・・最近の感覚はちょっと怖い。
「それじゃあ、いってくるね」
「お邪魔しました」
「あかねちゃん、また来てね」
「はい」
俺とあかねは水着を買いに出かけた。




