初デート 前編
時は二時。
約束の時間丁度に待ち合わせのあかね宅の呼び鈴を鳴らす。
あかねはすぐに出てきた。
「どうかな?」
「その髪型とってもいいね」
学校ではポニテにしている髪型を今は下ろしていて、左右から三つ編みで後ろに縛りながらまとめるような髪型。
「髪型だけ~?」
にやにやとしながら上目遣いに見るように少しかがんで胸・・・もとい服を強調してくるので服も誉める。
「あかねは何着ても似合うと思うよ」
あかねが着ているのは、首元に青いリボンが付いていて白シャツの様だけどもっと砕けた感じの服に、上に行くほど青が濃くなるスカート。全体的に夏の日に相応しいさわやかな感じだ。
「ありがとう」
少し先に歩いて行き、あかねは笑いながら振り返った。
「じゃ、行こっか」
「うん」
そして二人で歩き出した時、横目にあかねが、
「あ、瑞樹ちゃんの服も可愛いよ」
何とも歯がゆくて、それでいてうれしさもあり、あまり感じたことのない思いに包まれた俺はとりあえず、こう返した。
「・・・・・・ありがとう」
俺が着ているのって普通の黒いトップに白いシャツを合わせて、ショートパンツ履いて、サンダルというコーデなんだけど・・・・・・・ちょっと胸が気になるな~~
魅せブラと言ってもいいみたいだけど、これは慣れそうになかった。
十分も歩けばカラオケについた。
俺たちは一度来たこともあるせいか、受付を手短にすませて案内された部屋に入った。
とりあえずフリーで頼んでおいた。
まず、音量とかエコーとかを調節してから歌う順番を決め、モニターを操作する。
一番手はあかねだ。
席を大型モニターに近い場所に移動したあかねはマイクを手で持った。
「マイクテスト~。初デートだね、瑞樹ちゃん」
「・・・ふえ!?」
これってデートだったのか・・・確かご褒美のはずだったと思うのだけれど・・・・・・・
「じゃ、まずはこの曲から」
そして音楽が流れて、あかねが歌い出す
その間に俺も歌いたい曲を入れてと、それを交互に何度も繰り返す。
そうしているうちに喉というか、発声にも慣れてきた頃合であかねが
「デュエットしようよ」
と、誘ってきたのでそれを快諾。
距離を詰めるようにすぐ隣に座ってくるあかねから少し離れるように座り直す。ちょうど曲が始まって歌い出すと、思っていたよりもノリノリで歌ってしまった。
歌い終わってから、
「ちょっと瑞樹ちゃん、よそよそしくない?」
「そんなことないけどな~」
「そうかな~」
そう言って肘がぶつかるくらいまで距離を詰めてくるあかね。
そもそもどうして俺が距離を空けたかというと、昼食時に言われたというか、その時の楓の何気ない言葉から始まったリリンとの一連のやり取りが原因だったりする。
その原因というのがこちらだ。
「そう言えばお兄ちゃんってさ、百合なの?」
「いきなりどうしたんだよ・・・・・・」
百合って、嫌いじゃないけども・・・・・もともと男の方が本体と考えれば百合にはならないし、見た目だけなら、まあ、確かに見えなくはないかもだけど・・・・・・意識したことはない。
「いや~、これからあかねちゃんとカラオケなんでしょ、それってさ~・・・・・」
楓は何やら含みのある言い方をした。
あかねとの百合???
一時期危ない時はあったけれど、すんでのところで踏ん張ったというか、するまで行ってないし、ぎりぎりセーフだよな・・・・・・それともキスでアウトなのか???
見た目が女で、女同士のキスはアウトなのか~~~????
・・・・・・ちょっとうるさいよ、瑞樹ちゃん。
・・・・・・リリン。リリンはどう思う?
・・・・・・うん? まあありなんじゃない? 気持ちの問題でしょ?
リリンはたいして興味のないというように言った。
・・・・・・それより瑞樹ちゃん、そんなに精神揺らしていると、また、そのあかねって娘に魅了かかっちゃうよ。それはまずいんでしょ。
・・・・・・そうだね。集中・・・
魅了って言うのは俺が原因であかねや楓が変な状態になったことがあったと思うけれど、その時の状態にしてしまう一種の魔法だということだった。
基本的に俺の場合、魔力が不安定になった時、つまり焦りや苛立ち、ストレスとかで魔力が体内から体外に放出され、それに当てられた人がなってしまうみたい、というのがリリンの見解だった。
もともとこの魔力はリリンの母であるリリスのものだった。
リリスは今の世ではサキュバスという魔族になっているという話は桜田から聞いていたので、リリンに言われずとも知ってはいたのだが、魔力とは魔のエネルギーだ。
サキュバスは魅了を誰にでも使うことができるとされているけれども、”魔”について生まれたての赤子のような存在の俺は魔力をうまくコントロールできていないらしい。
そのため、元が男性だからか、魅了できるのは女性限定みたいだけれど発揮したくて発揮できるものではなく魔力が不安定になった時に発揮されてしまうみたいだ。
リリン曰く、魔力コントロールは一朝一夕では無理ということで、まず精神集中から始めてみようということだったのだ。
・・・・・・ある程度なら私がサポートできるけど、まあ、あまり意識しないことね
・・・・・・はい~~
とは言われたものの、ここまで距離近いと言われずともドキドキしちゃうって・・・・・
距離を詰めてきたあかねに今、後ろに逃げようとした俺のことを封じるように手で制しられ、身体はもう半ば乗っているような感じ。
「瑞樹ちゃん」
「はひ・・・」
なんか、上ずって念な声出ちゃった・・・・・・
「ねえ、今日はご褒美でデートしてくれているんだよね~。私の彼女なんだよね~。好きにしていいよね~」
「・・・・・・・」
・・・怖い怖い怖い
なんか最後のほう、もう前置き関係なかったし。というか、彼女ってだから逆じゃないの!?
というか、もう、密室で二人っきりの時、俺尋問されすぎじゃない!?
「・・・た、助けて~~~」
「大丈夫。認めてくれればすべて解決よ。認めてくれれば、ご褒美。認めなければお仕置き。ねえ、どちらがいいの?」
・・・・ああ、これやっちゃってるな~
そんなことを思いながら俺はあかねの話を聞いているのだった。




