合流
あかねの父が神主を務める神社、その境内に桜田と輪花はいた。
桜田の提案で静かなところに移動しようということになり、ここにやってきたわけだ。
一応許可を取る過程であかねの父親も同行しており、いつも座禅を組んでいるところに案内された桜田と輪花。輪花だけが中に入り、残った二人は扉一枚を挟んで外で待機している。
「どうしてだ」
「お邪魔してしまって申し訳ない」
桜田はあかねの父親に向かって頭を下げた。
「そんなことはどうでもいい」
「そうもいきませんよ」
「なら、私の問いにもこたえてもらいたい」
あかねの父親は、少し落ち着かない様子で言う。見た目からは苛ついているようにも見えた。
「質問ですか?」
桜田はそんなことどうということもないというようにいつもの調子で話している。
「そうだ。どうして、あんなことがあった後で訪ねてこられる。君には気まずさというものはないのか」
「あんなことと言われましても、僕としては目先のことで手一杯。だから、そのほかのことはあまり気にしている余裕はないですね。それに、」
「それに???」
「今はここが最適だったというだけですよ」
桜田の含んだような言い方に疑問を持った父親はそのことを問うた。
「最適とはなんだ」
「もうすぐ少しヤバいことが起きるんですけれども」
桜田の話を遮って父親は言う。
「まて、君は私を巻き込んだということか?」
「違いますよ。ここが距離的に最適というだけです。ここは安全ですよ」
「そうか・・・・・・」
父親は安堵したようだった。
「お~い、桜田、もういいぞ」
声と共に扉が開き、中から輪花が出てくる。
「あ、どうもお借りしてしまって申し訳ないです。ありがとうございました」
「ご丁寧にどうも・・・」
二人はとりあえずの挨拶を交わした。
「では、僕たちはこれで」
輪花はもう一度お辞儀をして桜田について行く。
あかねの父親は二人の後ろ姿を眺めながら、二人が鳥居をくぐって出ていくのを見届けた。
再度、二人は谷崎宅の前まで戻ってきていた。
静かに風が吹いている。
夏だというのに少し冷たく感じる。
「輪花さん。準備万端整っていますか?」
「ああ、問題ない。今は間違いなく絶好調だ」
「そうですか。それはよかった」
桜田は笑みを崩さない。
「輪花さんには相手が引いてくれなかったときに強引にでも引かせてもらわないといけないですからね」
「大役ってことだな」
「はい」
二人はしばし、沈黙。そして、桜田が開戦ののろしを鳴らした。
「そろそろ頃合いみたいなので行きましょうか」
「おうよ」
桜田は谷崎宅の呼び鈴を鳴らすのだった。




