お泊り会 当日
お泊り会、当日。
あかねは朝早くに迎えに来た。
俺としては夕方からの予定のつもりだったのだけれど。
朝食を手短に済ませて俺はあかねとともにあかねの家に向かった。
とりあえず、お泊りグッズ並びに道具を家に置きに行くことになったわけだ。
あかねは俺とどこかに行く気であるみたいなのだが、俺としてはそんな予定はなかった。
あかねの家に到着。
家の隣に、俺たち、この辺に住む住民にはおなじみの神社がある。
そこがあかねの家が管理している神社だ。
あかねの家は特別他と違った民家というわけではない。
一般家庭であるのは見た目からも明らかだ。
俺の家より少し大きい気はするけれど・・・・・・
門を開け、玄関を開けてくれたあかねはどうぞというように手で入るように指示した。
玄関まで入ったところで、後ろからあかねが俺のことを追い越して先に上がった。
「ママ、連れてきたよ~」
あかねに連れられて出てきたのはあかねの母親。
「あら、いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
「はい。お邪魔します」
俺は靴を揃えて荷物をよいしょと持ち上げ、あかねに案内されるままに二階へと上がった。
あかねの部屋は一番奥にあり、一人部屋と言うにはちょっと大きい。
二階にはほかにも部屋があったけれど、両親が使っているところ以外は物置とのこと。
あかねは俺の知る限り一人っ子だし、一番大きい部屋を子供部屋にしたのかも・・・・・・・
「荷物はその辺、好きなところにおいてね~」
俺はあかねに言われるように、部屋の隅に荷物を置いた。
それを見届けたあかねは、
「じゃ、行こっか」
「どこへ?」
俺は疑問を口にした。
何度も言うけれど、そんな予定はなかった。
「ちょっとそこまで」
「・・・」
俺はあかねに連れてかれて、本当にちょっとそこまで。
歩いて一分。
家の隣の神社へ。
「今の時間ならここに、お父さんいると思うから。ちょっと紹介だけしとくね」
「そういうこと」
「ううん、行きたいのは別にちゃんとあるから」
「そうなの?」
「そう」
俺とあかねは歩きながら話していて、俺はこの神社にはお参りに何度も来たことはあったけれど、そのいつも、閉まっていた扉の前に来た。
あかねはその扉を思い切り開け放った。
そして中に入る。俺もあかねに続いて入る。
大きな大仏の置かれている部屋。その前で座禅を組んで、お経を唱えている男がいた。
「お父さん、連れてきたよ~」
どうやらその男が、父親のようだ。
「おお。あかね。戻ったか。それでこちらが」
「うん、瑞樹ちゃん」
あかねと並び立った俺は自己紹介する。
「谷崎瑞樹です。今日はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。特におもてなしもできないが、ゆっくりしてくれると嬉しい」
「はい・・・」
今のところ、何も怪しい雰囲気はない。
会っていきなりそんなことを考えるのは失礼極まれりと言った感じだが、無神経にも警戒しないわけにもいかないということをわかって欲しい。
「瑞樹ちゃん? 行くよ?」
「あ、うん」
少しぼうっとしていた。
考えすぎか?
俺は立ち去り際に、もう一度、あかねの父親を見た。
父親は俺の方を見てはいなかった。
元いたように、座禅を組んでお経を唱えようとしていた。
だけれど、少し何かに違和感を覚えなくもなかった。
これが俺の考えすぎなのか、本当に何もなくもなかったのかは、今の俺は知る由もない。
俺とあかねは神社を出て、少し歩き、そしてとてもなぜだか休みの日の学校に来た。
「なんで学校?」
「だって休みの日の学校って、部活の人以外来ないから、ちょっと興奮しない?」
「ドキドキしても、興奮はしない」
「そうなんだ」
「そうなの。で、本当の理由は?」
あかねとの付き合いはそれなりに長いと思っている、というか幼馴染だ。このくらい冗談だということは俺でなくてもわかるだろう。
「ちょっと保健室に用があって」
「どうして保健室?」
「なんとなく嫌な予感がするから」
「いやな予感があるなら行かなければいいのに」
そういった俺のことをあかねはじっと見て、
「そういうことじゃなくて、嫌な予感は今日の夜。私、前にここで瑞樹ちゃんとしたときに、何かぼうっとしていたっていうか、その、あまりよく覚えてないっていうか」
「それでもう一度、同じ場所でしてみたら思い出すかもって?」
「そう、そう、それって・・・・・・そんなわけないじゃん」
「あかねはそういうと思ってた」
「冗談はそれほどにね。それで、話の続きなんだけど、その感覚とは少し違うんだけど、似たような感覚にあの日、瑞樹ちゃんの家に行った時にもあって」
あかねはしどろもどろに行き先不明という感じで話していった。
つまるところ、その感覚が心配ってことだ。
俺には心当たりがあるにはあるけれど、俺としてはこれをどうこうできていると思っていない。ということは、無意識なのかもしれない。となると、
「俺にはどうしようもないな」
「えっと、何が?」
あかねは逡巡の後、そう返してくる。
俺は何でもないと返し、そのまま、休みの日の学校へと入っていくのだった。




