カラオケ 後編
夏希が稽古というなの用事で帰り、あかねとカラオケに来るきっかけになった最初の話。内緒話を始めるということで俺の隣ぎりぎりまで距離を詰めてきたところから話は始まる。
カラオケに来るきっかけ。それはこの前の事で話がしたいと言ったことだった。
時刻は昼休み。
俺は授業が終わったところであかねに話しかけた。
「ちょっと話があるんだけど」
「いいけど、お昼一緒に食べる?」
「うん」
とりあえずお弁当を机に広げて、昼食・・・・・・
「で、何の話?」
「この前のこと」
「・・・・・なら聞かれたくないでしょ。カラオケいこっか!」
「え・・・・・・・」
俺が困り顔でいると、あかねはぐいぐいと詰め寄ってきて、
「カラオケ行こうよ~~。カラオケ~」
「えええええ・・・・・・」
「いいでしょ???」
「別に、行きたくないわけじゃないけど、そこまでする必要もない話だし・・・・・」
「そんなこといわずに~~」
今日はずいぶんと押してくる。
俺が困って辺りに目線を泳がせていると、そこに委員長が通りかかり、
「今、カラオケと聞こえましたが、学校帰りに直接行ってはダメですからね」
「そんなかたいこと言わずに、委員長も一緒にどう?」
「私は念を押しただけであって・・・・・」
「そんなこと言わずに委員長も行こう!!」
「私は行きたいとは・・・・・」
「委員長、諦めよう・・・・・」
俺が委員長の肩にポンと手を置く。
委員長は黙ったままだ。きっと今は茫然自失。どうしてこうなったのかと頭の中でぐるぐると考えているんだろうなぁと俺は思いながら静かに見守った。
委員長こと、夏希も押され弱いのか、断れずに結局ついて行くことになった。
「それで、本題になるのかな。瑞樹ちゃんの聞きたいことってどんなこと?」
あかねは俺の方にぐいっと詰め寄ってくる。
顔が近い・・・・・・・
今日はやけにぐいぐい来るなと思った俺はそれをまずは聞いてみた。
内緒話には関係ないけど・・・・・・
「今日はずいぶんと積極的だね・・・」
「この間、妹さんと喧嘩したじゃない。それでいろいろ言いあって、私には積極性が足りなかったんじゃないかって思ったの。だから、今はそのチャレンジ期間」
「そうなの?」
今までが積極的であったとは言い難いが、他の子と比べればそれなりに距離感は近かったと思うのだけれど、それは考えに含まれているのだろうか。
なんて、俺が考えても仕方がないのだけれど、このままだと、あかねの言うところの積極性が接触性になりそうで、身の危険を早めに感じた今日の俺は、しっかりとうやむやにせず、伝えることを選んだ。
「積極的なのもいいけど、あまりにもぐいぐい押してくるのも違うと思うよ」
「私そんなに迫ってたかな」
「十分、迫ってたよ・・・・・」
「そっか~。だから委員長押されてたんだね・・・・」
「そうだと思うよ」
俺は心の中で、どんまいだよって夏希のことを慰めてみた。俺の良心が痛まないように・・・・・・・
話をもとに戻すように一回、咳払い。
「その、聞きたいことなんだけど」
「なにかな」
「今日はそのあかねの、お母さんのことを聞いてみたくて」
「お母さんのこと? それってどんな」
「例えば、厳しめなのかなとか、何かすごいことができる人なのかなとか」
あかねは目を閉じて少しの間考えてから、
「ん~。周りをよく知らないから厳しいかわからないけど、部屋を汚したら怒られるよ」
「それはたぶん普通だね」
「それと、凄いことっていわれても、瑞樹ちゃんの知りたいようなすごいことはきっとできないと思うな。しいて言うなら霊感みたいのはあるかも」
「霊感か~。それは私にもわからないや~」
霊感で魔女の残り香、つまりは俺の中に残った魔力を感じ取れるものなのか、それは俺にも未知のことだった。
予測できないことが増えれば増えるほど、不安が大きくなる。
しかし、不安ばかり大きくしてもどうしようもないので、そのことはあえて考えないことにした。
門前払いされたらされたで命だけは助かるかもだし・・・・・・・・
「他には聞きたいこと何かないの?」
「ここからはお母さんのことじゃないんだけど、あかねの住んでいる神社って古くからあると思うんだけど、何か特別な場所だったりする?」
俺がそのことを恐る恐る聞いてみる。
なぜ恐る恐るなのかと言えば、よくあるマンガのトラップ系の場所だったり、邪悪な悪魔系、妖怪系、幽霊系とその他もろもろを束ねた怪異とか魑魅魍魎とかいう感じの者たちは立ち入れないとかいうあれ。
逆に立ち入ると出られないとか・・・・・・
俺にとっては、この身になってからまだ一度も行ったことがないのでその辺わからずじまいだが、何か事が起こって逃げる時に逃げられないとか恐怖以外の何物でもないからだ。
「特別な場所なのかは調べてみないとわからないかな。そういう話は聞いたことないけど、一応調べておくよ」
「ありがとう」
「お礼なんていいよ。巻き込んだのは私だし」
しばしの沈黙。
目と目が合う。
ありがとうと言った後に沈黙になるとなんだか恥ずかしくなることって多いと思うのだけれど、この心臓の高ぶりって、いわゆる吊り橋効果っていうあれにも似ているなんとこんな時になんだけど、思ってみたり・・・・・・
「そ、そうだ。瑞樹ちゃんが聞きたいこととは違うかもしれないけど、私自身に聞きたいことってないの??」
「ん~。巫女さんってたいへん? とか」
「巫女か~。初めのころは大変だったけど、最近は慣れちゃったな~。瑞樹ちゃん、巫女に興味があるの? それとも服かな??」
「べ、別に、そんなことないよ」
俺は焦って否定する。
実を言うと服の方にはちょっとばかし興味があったり・・・・・
だって、よくキャラコスで見るんだもん。着たことないから興味くらい湧くよね。普通。普通・・・・・・・
などと、俺が自分自身に言いくるめている間に、あかねは俺の顔をにやにやと覗き込んでいた。
「な、なにかな」
「今度、着せてあげるよ~」
「ほんと!?」
俺の飛びつくような反応の後で、やっぱりか~みたいな顔になったあかねを見てしまったと思った俺は、もう手遅れだと諦めるのだった。
「・・・・・着てみたいです・・・」
「素直でよろしい」
あかねも場の雰囲気に合わせて、勝ち誇ったようにそう言った。
その後も聞きたいことはと聞かれたが、さすがにもうなかったので、今日はこれでお開きになった。
カラオケを出た後、商店街の途中であかねとは別れた。
そう言えば、今になってこんなことを思った。
桜田がいなくなる前に言っていた。
何もなければ三か月程度で魔力も切れるはずだと。
何もなければ・・・・・・
今はきっと何かが起こってしまったという状況なのだと思うのだけれど、桜田は助けには来てくれないのだろうか・・・・・
そんなことを考えながら、俺は自宅まで帰った。
第二章? に入ってからの話についての感想募集中です。
もちろん全体通しての感想、批評もお待ちしております!
気兼ねなく書いちゃってくださいw




