健康診断
あかねが近づいてきて、教室中から上がっていた歓声から俺を助けてくれたところからの話だ。
要は前回の続きである。
「ごめんね、みんな~。私、瑞樹ちゃんを保健室まで連れて行かないといけないから」
あかねはクラスみんなに説明するように大きな声でそう言った。
「何する気よ、あかね~」
「何言っているのよ、理沙。私が保健委員なの知っているでしょ」
「そうだったわね~」
そう言って、気さくな雰囲気を漂わす、理沙と呼ばれた女生徒は、それでもにやにやとしながら俺のことを視ていた。
ただ、俺はその女生徒に目線を向けた、さらにその先に目を奪われた。
さすがに奪われたと言うのは言い過ぎかもしれないけれど・・・・・
理由は至極単純で、俺はその先にいた、教室の隅の席に座る、ロングヘアの茶髪で、色白、色素の薄い瞳を持った、女生徒から怖いと感じるほどに睨まれていたからだ。
俺はその生徒から目線を逸らすように、あかねに向き直った。
「保健室、行くんだよね? なら早く行こう」
「え? ああ、そうだね」
いきなり俺が声をかけたから、焦ったような声があかねから出た。
一瞬の間にあかねは表情を整えて、理沙に向けて
「じゃあ、またあとでね」
と言って、あかねは俺の手を引いて教室を後にした。
これから行く保健室の先生なんだけど、少し癖のある人だから気を付けてね。
それと、先生の名前は花崎華っていうの。覚えておいて。
なんて、あかねに行く途中て言われていた。
それがそういうことだったなんて先に言っておいて欲しいものだった。
保健室に着いた俺は、病院で診察を受けるような状況になっていた。
「谷崎瑞樹さんで間違いないかな」
「はい」
先生から確認を取られた俺は、これから何が行われるのかと内心ドキドキしていた。
ちなみにあかねはというと、保健室の扉の前で、「あとは頑張ってね~」と言い残し、一人先に教室に戻っていった。
「よし。それじゃあ、瑞樹さんだけ身体検査やってないからサクッとすませちゃいましょうか」
「え、ああ、そういうこと・・・・・」
「ん? 何か問題でもあったかな」
「いえ、なんでもないです」
「ああ、私が本当に女なのかと心配しているのかな」
えんじ色の先生の髪が俺の肩にかかる距離まで、一気に身を詰めてきた先生は俺を逃がすまいとするように俺の腰に手を回す。
「大丈夫。私は女だと今から証明してやろう」
そう言って、先生はもう一方の手で俺の手を掴み、自分の胸に手を当てさせる。
「あの、先生。これは????」
「何、瑞樹さんも女性ならこの感触が本物であることくらいわかるだろう」
「ああ、なるほど・・・・・確かに、そうですね」
俺は笑顔で返した。
なに、自分も胸だって男の至りで揉んだことはあったけれど、そんな経験豊富なんてことは、まさかあるはずもない。
故に、とてもやわらかいという感想しか出てこなかった。
笑顔なのは、条件反射のようなものだった・・・・・・
その反応がお気に召さなかったのか、先生は
「やはり、まだこれでは足りないのか・・・・・ ならば、思う存分、私を堪能するといい」
「え、ちょ、わあああ」
先生は俺の腰に回した方の手をしっかりと力を入れ直して、俺の体勢を固定。そのまま、すんなりと持ち上げ、もう一方の手を膝の後ろに回し、お姫様抱っこの状態にさせられる。
そして、そのままベッドの方へと行き、ゆっくりと下ろされた。
俺は何が起こったのかわからないまま、成すがままだ。そのすきに時は正常に進んでいて、先生に腰の上に股がられていた。
「さあ、瑞樹さん。いや、瑞樹ちゃん。お楽しみの時間ですよ」
「ええええ」
「どうかな。私のここには何もないだろう」
お楽しみとかいうからちょっと期待したかもしれないが、今先生がしたのはただ股の部分を俺にわかるように当てただけだ。
その動きに俺が焦ったという感じ。
「な、何もないです」
「そうか、そうか」
そして先生はまた先ほどの動きをするのかと思いきや、前のめりになって今度は俺の服を脱がせ始めた。
「ちょ、え、なに、してるんです!?!?!?」
先生は何も答えない。
「え、ちょ、え、やめて・・・・・」
「ん~。この手が邪魔だな。ならば、こうだ」
「ふえ!?」
俺の手を掴んだ先生は、いつの間にかほどけていた制服のリボンを使って俺の手をベッドの鉄柵に拘束した。
「さあ、これで、もう何もできまい」
「ふぇええええ」
俺はすでに涙目になっていた。
身体の自由を封じられることが、こんなにも恐怖心に繋がるなんて思ってもいなかった。いや、男だったら火事場のバカ力でなんとかできたのかもしれないなと、あの頃が恋しく感じる。
今日、俺もついに女の初めてを・・・・・・
そう思って、恐怖心から逃れるように目を瞑った。
何か胸に冷たい感触。
でもひんやりしていて気持ちいい・・・・・
先生の腰もなんだか動いている・・・・・・
ふいに、先生から声がかかった。
「何をしている。もっと落ち着かないか」
「そ、そんなこと言われたって、これが初めてなんだから・・・・・」
俺はそこまで言って言葉に詰まった。
恐る恐る目を開けた視界から入ってきた先生の手には聴診器があり、俺の胸の音を聞いていたのだ。
確かに少し冷たい感じはしたけど先生の手が触れているのだとばかり思っていた。
だって、気持ちいいところと一緒にするってどこかのマンガに書いてあったもん・・・・・・・・
「なんだ。私にやられると思ったのか」
「・・・・・・」
「確かに私は女性が好きだが、いきなりそういった関係になったりはしないよ」
俺は信用できないって目で先生のことを視ていた。
「でも、まあ、瑞樹ちゃんを見ているとなんだが、不思議と一線を越えてしまいそうになるのも事実なんだがな」
そう言って先生は笑った。
そこから先はスムーズに進んでいった。
途中で先生が説明してくれたが、俺の風邪が長引いていると聞いていたらしく、今回しっかり治っているのかの確認をしたらしい。
話の最中に、あれは仮病でしたなんて言いそうになった自分がいたりもしたが、それをすんでのところでこらえた俺は、危うく死にかけたのではないかと最後に思う。
なぜなら、先生が最後に、
「もし、風邪をひいてない状況でああなっていたら、実は意外と危なかったかもしれないんだがな」
「え・・・・・・・・」
「どうした。そんなに焦ったような顔をして。大丈夫だ。もうすぐ終わる」
健康診断が終わる頃には、俺は今日一日分と言わず、一週間分くらいの精神エネルギー的な何かを使い果たした気分だった。
「いや~。瑞樹ちゃんとやれるなんて光栄だよ~」
「先生。特別ですからね」
「じゃあ、私がお腹のここを押したら、しっかりと声を出すんだよ」
俺はこくりと頷く。
「では、いくよ」
そう言って、先生は俺の腹部辺りを押す。
「あっ、んっ、あっ・・・・・」
「大丈夫だ。それでは、次に、胸だ」
そう言って、先生は俺の胸両手で大事なものを触るようにを触る。
「あっ、んっ、あっ、んっ・・・・・・・・・」
「では、ついにだな」
やっと俺も今日、初めてを・・・・・・・・
て、そんなわけなーーーーーーい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺はベッドの上で起き上がった状態になっていた。
俺の頭が覚醒するのに数秒。
その間に先生が俺が起きたことに気が付き、
「おお、やっと起きたか。終わった時、瑞樹ちゃんがとても気持ちよさそうに寝ていたものだから、そのまま寝かせておいたが、もう昼だぞ」
「え・・・・・・・あ・・・・・・・」
時間を確認した俺は、今の時刻を見てすごく寝ていたことに気が付いた。
ただいまの時刻は十二時過ぎ。
もうすぐ、四時限目の授業も半分終わる頃だ。
「時間も時間だ。もう少し、ここにいても構わんぞ」
「先生、私が寝てるときに何かしました?」
「ああ、パンツは見てしまったな」
「ええええ」
「仕方ないだろう。服を着せているときに見えてしまったんだから」
「まあ、それなら・・・・・・」
果たして見えるものなのかという疑問はあったが、寝ていた方が悪いと言われないだけましだと思った俺は特に言及しなかった。
それよりも今すぐに教室に帰るかと考える。
「・・・・・・・」
何気なくあたりを見回したときに、姿見の自分の姿を見ていろいろと直さないと駄目なことになっていた。
結果、俺が教室に帰ったのはお昼休みの時だった。




