悪魔王の本音
「はっはっはっはっは、やはりなったか」
弾丸が黒い小さな球体を撃ち抜いたのを見て悪魔王は笑っていた。
「これでソナタは俺と同等の魔力操作ができるようになったはずだ。さあ、これで時は成った。俺とともに行こうではないか」
「それはお断りしたはずですよ。私はあなたとはいきません」
「まだ、そのような・・・・・・。今のソナタは前と同じ生活ができると思うのか? 今のソナタは、気持ちがあらぶって魔力を放出しただけで周囲を壊す力を持つ。そしてもはやソナタは人間ではない。ならば人間の中に混じる必要はなかろう」
「確かに私はもう魔神なのかもしれない。だけど、心まで人間でなくなったつもりはない」
その強い意志のこもった言葉を受け、悪魔王はどこか遠い場所を見つめるようにして、すっと力が抜けるようなそんな言葉を発した。
「心であっても永遠とはいかぬ」
俺は、それを重く受け止めた。
「だからこそ、俺はソナタを残してはいけないのだ。俺には魔導書を受け継いだ魔女を連れ帰る以前に、嫁となる才ある者を無碍にはできぬ。たとえ触れることのできない存在であっても」
「悪魔王、あなたの考えはきっと私には想像もできないことなのでしょう。けれど、私を信じて」
「それはできない。傲慢の彼女は、そう言って残り、同族に殺された。暴食の彼女は人間に。魔人になった嫉妬の彼女は悪魔に食われ堕ち、同じく魔人になった強欲は最後まで魔女としての誇りを捨てず、魔導書だけを返し、その身は魔女狩りで犠牲になった。魔女であった憤怒と怠惰は俺の愛が、悲しみが、苦しみが、憎しみが、虚しさが強すぎるあまり傀儡へと変えてしまった。回収できた魔導書はこれまで五冊。暴食の魔導書は後継者がいないのか、人間によって封印されているのかわからないが反応がなく、どうすることもできていない。だから、俺にとってソナタは最後かもしれない、唯一の存在なのだ。嫁の中でも特別に等しい、希望なのだ。俺は、力づくであってもソナタを連れていく。ソナタが歩もうとする先には絶望が待つと俺が知っているからだ」
悪魔王が言い切ると同時に巨大な魔法陣が空に浮かぶ。
そこから伝わってくる魔力に俺は恐れた。それは、今までのどこ攻撃よりも多大な魔力を秘めていて、俺の全力で防げるかどうかだということが、肌で分かったからだ。
「これちょっとまずくない?」
「マスター、広範囲の防御魔術を多段使用した場合の防御確率1パーセントの予想です。これは悪魔王が邪魔をしてくるのを考慮したものになります。結果、代替案として、最速魔術により魔法陣に干渉、これを破壊することを提案します」
「よし、それで」
俺は魔術を行使する。
これが成功したとしても、この街は裏世界のもので表に居る人には影響はないのかもしれない。桜田と輪花さんと自分だけ守ればきっと守れるのだろう。だけど、見知った街の風景が壊されることを、防げる方法があるの何もしないなんて、そんなの俺らしくないと思った。
ただそう思って俺は魔術を行使する。
刹那、俺の魔術によって空中の魔法陣は粉々に砕かれた。
悪魔王がにやりと笑ったのに『私は』気づかなかった。
悪魔王が俺の魔術を見て拍手をしていた。
「見事だ。その速度の魔術行使を制御を誤らずできる者は他にいないだろう」
「ずいぶんと余裕ね。そんなに私を誉めてもついて行ったりしないよ」
私は鼻で笑うように、ふんと鼻を鳴らした。
「大魔術を行使できるものは、当然見劣りするような魔術をも使える。そんな俺でもソナタの使う魔術には目新しさを覚える。だが、ここは見世物をする場ではない。以下戦闘になれば、俺の経験に勝てる者もそうはおるまい」
「自分の絶対的な優位を示したって私の心は折れないわよ。それに、私はあなたに全力をふるっても構わないという状況に違いはないのよ」
私は、悪魔王がいうことは正しいと分かりつつも強がってみせる。勝てない実力差があったとしても、魔神にまでなったんだ。なんとかしてみせる。私はそう自分を奮い立たせる。
「そろそろか。さて、色欲の魔神よ。俺の魔力とはいったいどこまでで、どこからが他人の魔力なんだろうな」
「そんなの私の魔力とは別物で、それぞれ違う」
「だろうな。なかなかどうして、ソナタの強情さはわかった。だが、何も俺の分解は物質だけではないぞ」
そう言って悪魔王は両手を広げるのだった。
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