表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/81

何でもない

「あ、あれ? ここ......何処ッスか?」


 あれから数時間経って陽が斜めになった頃、大体二時頃だね。


 その頃になって一番先にペトラが目覚めた。


 まあ、それまでする事が無かった訳じゃないよ。


 [世界秘宝庫(セックヴァベック)]の中身を確認したり、[創世終世完解(アカシックレコード)]を[構想具現(イデアリアライズ)]で創った本に付与して読んだりしてたからね。


 世界を視ても、まだあの国(クライヒ王国)が消滅した以外には何も起こってない。


 だから余裕がある訳でも無いけど。


「此処は俺が使ってる部屋だ」

「......アナタは......」

「ネオでいいさ」

「じゃ、じゃあネオさん......でいいッスか? アウラさん達、大丈夫なんスか? 特にイグニスさんは......」

「生きてるからそれでいいの。それより、どうする? 此処に居とくか?」

「こ、此処に居させてもらうッス」

「ま、好きにするといいさ」


 俺はそれっきりペトラから視線を外して手元の本に視線を落とす。


 そこには秒間千文字の速度で文字が表示されている。まあ、俺の速読は見覚(みおぼえ)も同然だから全て読める。


 視界の端でソワソワしてるペトラが居る。


 取り敢えず俺が創ったガラス製の器を出して、中に焼き菓子、主にクッキーを入れる。


 で、俺が使っている和風な丸机の上に置く。


「食べたいなら食べていいから」

「あ、えっと、ありがとうッス......?」


 何故疑問形。


 まあいいや。以外と頑張って創ったんだよ。この皿。


 縁に東洋龍を描いて、中心の方にオーブリエチア、日本ではムラサキナズナと呼ばれる花を描いた薄青色の結晶(クリスタル)製の皿。


 まあ、当然の如く能力の付与はしてないけどね。


 恐る恐るといった感じで手に取って齧るペトラ。


「美味しいッス......」


 それはよう御座いました。お気に召しましたようで、何よりで御座います。


 なんてね。


 まあゆっくりでいいさ。


 そこから五分程、無言の時間が続いた。


「あの、失礼を承知で聞くッスけど。ネオさんって、何者ッスか?」

「......? どういう意味で?」


 いや、意味は分かってるけどさ。


 一応惚けてみた。


「ヴェルデ様から様付けで呼ばれていた事もッスけど。なんで、あんなに強いッスか? もしかして、ヴェルデ様より強かったりするッスか?」


 あ~。コレ答えたらダメな奴じゃないかな?


 まあ、柔らかく微笑んで流せないかな。


 って訳で情報の開示と同時にやってみた。


 髪の位置取り、光の反射、流し目の様な視線。(スキルなしの)演算の上でやってみた。


 結果、答える気は無いと理解してもらえた。


 なんかポカンとした表情のまま固まってるけど無視でいいか。


 隠蔽して本に視線を戻す。


 今本に書いてあるのは[世界秘宝庫(セックヴァベック)]の中身だね。


 相当な量が入ってるからね。


 武器だけで十数ページはあるよ。


「......わたしは......ペトラ?」

「あ、アウラさん。大丈夫ッスか? 痛いところとかないッスか?」


 どうやらアウラも起きたみたい。


 皿を見たら結構クッキー減ってたから補充した。


 俺もちょっとずつ食べてるけどね。


 偶にクッキーを摘まんだ指先に熱を集めて温めてから食べたりもしてみた。美味しい。


 それは良いとして。


「イグニス......大丈夫かしらぁ?」

「大丈夫ってネオさんが言ってたッス」

「ネオ?」

「そっちの人ッス」


 俺を示すペトラ。


 アウラの方は俺を見て思考が一瞬で疑問に埋め尽くされてた。


 そう言えば俺、本気出した事ないな。全力で戦った事はあるけど。


 まあいいや。


「貴方は、一体何者なのよぉ?」

「それはウチも気になったッス」


 俺か? まあ、うん。


「何でもないさ」

「そんなはずないッス!」

「あり得ないわよぉ。あの白髪の姿だってそうじゃない?」

「......君は、人間(ヒューマン)なの? それとも龍なの?」


 あ、ワーテルも口出してきた。


 起きてたのは気付いてたけど。


「ワーテル。起きたのねぇ」

「ワーテルさん」

「僕は何とも無いよ。大丈夫」


 う~ん。本当に女だったらかなり健気な子になるのに。


 残念な事に男の娘なんだよね。


 俺? 俺は無性別なので。男でもあり女でもあるのだよ。どっちでもない人形とも言えるけど。


「それで君は何なの?」

「何でもないよ」

「そんな筈無い。君程の実力者を僕達が知らない事も、ヴェルデ様が君に敬意を払う理由も」


 ............《情報の開示。存在構成(プログラム)の安定化を図ります......成功しました》


「何でもないんだって。俺は何でもないの。お前等が気にすることは何も無いさ」


 視線を外して外を視る。


 右肘を立てて頭を乗せた俺に何か見たのか、それとも何も見えなかったか、今の俺には判らない。解らない。


 あれから何分経ったか。多分十分程しか経ってないと思う。


 隠蔽はしたからもうなんともなってない筈。


「ぅ......ぐぅ......」

「イグニス!」

「イグニスさん!」

「イグニス。大丈夫かしらぁ?」


 イグニス意識を取り戻したみたい。


「俺は......」

「お前は俺に負けたの」

「オマエ......」


 苦痛に顔を歪めてるけど仕方ないでしょ。


「俺は、負けたのか......」

「負けたくなかったの?」

「......別に、お前には関係ないっ」

「......じゃあ、一つ助言。守る事に力を使え。(おの)が身を滅ぼしてまで、等とほざくな。貴様は愛されているのだからな」


 一時的に白神龍王になったが、喋り方はこっちの方が威圧的だと思った。


 まあいいや。


「オマエ......まさか......」

「何時迄もしんみりするのもいいけどね。イグニス。その傷、治す?」

「いや、いい。ぐっ」

「イグニス! まだ起きちゃダメだよ!」

「そうよぉ。まだ安静にしてないとダメよぉ」

「そうッス! 動いたら傷に障るッス!」


 苦痛に顔を歪めながら体を起こしたイグニス。


「取り敢えずその包帯変えてあげるよ」

「どうやってだよ」

「まあまあ」


 俺は何か不満そうなイグニスを無視して[世界秘宝庫(セックヴァベック)]と[万象召喚(フィスプロスクリス)]の並列発動。


 すると、一瞬にしてイグニスの包帯が変わった。


 まあ、空間魔法中級『交換(トレード)』を疑似的に再現したと思ってくれたらいいよ。


「どうやったんだ?」

「気にしないで、さ。ヴェルデ達の所に行こうか」

「あ、ちょっと待ちなよ!」

「ちょっとぉ!」

「え、えっと、えっと、イグニスさん! ネオさん!」


 まあ、無視して部屋を出る。


 その後を慌てて四人が出て来た。当然イグニスは支えられてる。


 さ、今から本格的に動き出そうか! って言っても、今日は俺の案を伝えるだけだけどね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ