龍王と神王
「よし! これで良いな」
「ありがとねぇ。場所を開けてくれてぇ」
「ありがとうッス!」
「そんな事よりさ、誰が一番最初にやる?」
訓練場で訓練していた竜人族達を退かして、訓練場の真ん中に居る俺達。
訓練場の端には今迄訓練していた奴等と、転移組、ヴェルデ達が見学の為に居る。
で、俺の目の前に居る【龍王】達なんだけどさ、誰が一番最初に戦うかで揉めてるんだけど。
「僕先にやりたいんだけど」
「わたしはいつでもいいわよぉ」
「ウチもいつでもいいッス!」
「チッ。仕方ねえ。譲ってやる」
「ありがとね」
全員で掛かってくればいいのに。そんなに弱そうなの? 俺。
「全員でやればいい」
あ、セラも俺と同じ考えな訳ね。
「いやいやいや、待てよ。あの四人って【龍王】なんだろ? いくら凰......じゃねえや、ネオが強くても、【龍王】を四人同時に相手なんて......」
「出来る。それに、あの四人は兄をその場から動かす事すらできない」
過大評価し過ぎじゃない? って言うか、セラの所為で四人がキレたんですけど。
龍だから強さに関するプライドは高いのに。そのプライドを傷つけられたからね。
ほら、無言で構え始めたよ。
俺は五メートル程離れてからヴェルデに声を掛ける。
「ヴェルデ。審判お願い」
「ああ、了解した」
あ、更に怒った。まあいいや。
「では、始めるぞ。よいな」
俺達に確認を取るヴェルデに頷く。
「では、開始!」
ヴェルデのその言葉を合図に、男の娘が一番最初に突っ込んできた。
瞬きの間に俺の目の前に来た男の娘は、右腕に水を纏わせて殴ってきた。
俺はそれを左手で受け止め、右足で蹴り飛ばした。
手加減したからダメージはない筈だけど、足を地面につけたまま元居た位置まで吹き飛ばされた。
「おい、アウラ。ワーテル。援護しろ。ぺトラ、同時に行くぞ」
「わかったわぁ」
「うッス!」
「了解したよ」
男の娘の名前ってワーテルって言うんだ。
そんなことより、ワーテルの攻撃は確認だった訳ね。油断無し。いいね。
「行くぞ!」
その言葉を合図にイグニスとぺトラが飛び出した。その後方では、アウラが風魔法と雷魔法を、ワーテルが水魔法と氷魔法を準備している。
イグニスが白炎を纏いながら突っ込んできた。なんか、炎熱加速って言えばいいのかな?
足元を爆発させ、ぺトラを置き去りにして倍近い速度で突っ込んでくるイグニス。
その勢いを乗せ、更に右腕の肘の部分から炎を噴出させながら、その右腕を俺の顔目掛けて振り抜こうとした。
まあ、俺にその攻撃が効くかどうかは、分かり切った事だよね。
俺はイグニスの拳を掴み、その勢いを殺さずに体を回転させて投げ飛ばす。
驚愕に目を見開いたまま飛んでいったイグニスは、ペトラにぶつかった。
ペトラもイグニスと同じように驚愕したが、咄嗟に踏ん張ってイグニスを受け止めようとする。
が、そんな事出来ずに訓練場の端まで吹き飛び壁にぶつかる。
けどまあ、俺はこの場所から動かないよ? セラが言ってたし。自発的にでも動いたりしないよ。
と、そんな感じで突っ立っていた俺に魔法が飛んで来た。
まず、風魔法上級『風嵐』が俺を包み込む。この魔法は対象を包み込み切り刻む魔法。
次いで水魔法上級『水刃』が無数に飛んできて『風嵐』と一緒に俺を包み込み濡らしていく。
え? 斬られろって? それは無理です。この程度では斬られません。
そして雷魔法上級『雷砲』。見た目自体は中級『雷弾』に似ているけど、威力自体は全くの別物。
それが八つ程飛んできて、俺の体を感電させ焼こうとしてくる。効かないけど。
最後に氷魔法上級『凍衝』。凍てつく衝撃波は触れた対象を氷像へと変える。
俺を覆っていた風も雷も水も関係なしに俺を氷の中に閉じ込めた。
氷の外では二人が未だ警戒してる。
全力で油断なし。
まあ、殆ど俺には無意味だけど。
氷の中で右腕を動かし、左から右へと薙ぐ様に振る。
それだけで氷が粉々に砕け散る。
なんかもうポカンとしてるよ。あの二人。
その時、壁の方まで飛ばされていたイグニス達の方から爆発音の様な音がして、紅い龍翼と龍の尾を生やしたイグニスがまた白炎を纏って突っ込んできた。
「俺が、人間のガキなんかに、負ける訳ねえっ!」
怒ってるね。
膨れ上がる感情に比例する様に炎が激しくなっていく。
一瞬で俺の目の前まで来たイグニスは、前宙する要領でその尻尾を叩きつけて来た。
俺は右腕を上げて受け止める。地面に放射状の罅が入り、クレーターが出来る。
「なっ! テメエ、何しやがったっ!」
「......受け止めただけ」
俺は驚愕そのままに勢いで聞いてくるイグニスに答えながら投げた。
いつの間にかペトラも戻って来てて、三人とも龍翼と龍の尾を生やしていた。
その状態でイグニスを受け止めた三人。因みに、投げた時に炎は消えた。
イグニスも三人の横に並んだ。なんか、すっごいカラフル。
イグニスが紅。ペトラが茶色。アウラが翠。ワーテルが青。
まあいいや。
俺は未だ魔力を煉っていく四人を前にして、隠蔽、偽装していた俺の情報を公開? した。
それだけで動きが止まる四人。ポカンとした表情のまま俺を見て来る。
さっきガキって言われたのがちょっとイラっとしたから、揶揄うだけだよ? 別にお仕置きする訳じゃないよ?
俺の髪が上から下へと艶のある純白に変わっていく。
更に右目が左と同じく黄金へと変化する。
鋭い目で白髪金眼。これが白神龍王の姿。
そして服装も変わる。黒コートだったのが白装束に。金の刺繍が施された純白の装束。
上から下まで白。仕方ないのかな? コレ俺が考えた訳じゃないし。いいよね。
両腕を前に突き出し、顎の様に合わせる。
下側の左腕に嵐が如く風が纏わり付き、上側の右腕に迸る黒雷が纏わり付く。
その二つ。牙の様に合わせた両手の間に集まり、球体になる。
見てれば分かると思うけど、これはブレスだよ。変則的な。
俺は四人に照準を合わせて、解き放った。
俺の指の間から拡散弾の様に放たれる黒色の雷を纏う緑色の弾丸は、四人へ向かい雷と風で包み込んだ。
それが終わった後、俺が風を送り込んで砂塵を吹き飛ばしたら、ボロ雑巾の様になった四人が倒れ伏してた。
回復用の魔力も込めてたから死んでないし血も出てないけど、気絶してる。あ、弾丸が緑だったのもその所為ね。
「勝者、ネオ様」
変な静寂が訪れる訓練場に、そんなヴェルデの声が響いた。




